PLAYER
自分のエゴとかではなくて、シンプルに曲に合った、
THE BACK HORNに合ったベースが弾けたかなって思います。
――「夢路」は今作では唯一、岡峰さんが作詞作曲を担当していますが、この曲にはどういった思いが込められているのでしょうか?
この曲は飼っていた猫が死んでしまう1ヵ月前くらいから作り出した曲で、だんだん弱っていく姿を見て、“この子のことを曲にしたいな”って思ったんです。猫って6/8拍子とか3連みたいな優雅なリズムが合うと思ったし、雄猫だったので男の子の勇壮さもイメージしたフレーズ構成になっています。制作途中で死んでしまったので、その思いも歌詞に込めています。ベース・プレイに関しては、間奏以外は全部シンプルなルートなんですけど、間奏のソロ・パートはどの楽器が合致するか考えた結果、ベースがハマると思ったのでベース・ソロを入れることにしました。
――そのベース・ソロはけっこうな長尺ですよね。どのようなフレーズ感をイメージしましたか?
これは悩みなく一気に5分10分で作ったフレーズなんです。ちょっとクラシカルな要素を含んだコード進行なので、よくクラシック音楽とかで使われる音選びにしています。チェロとかの練習曲っていうイメージもあって、どんどん上昇していくクラシカルなフレーズ展開になっていますね。“天国の世界からも見渡せるような雰囲気”をハイ・フレットにいくに連れて表現した思惑もあるんですけど、どうです? 言われたらなるほどってなりませんか?
――それはすごく伝わってきます。楽曲全体としてそういった特別な思いがあったというのを知ったからこそ、意味深な展開などすごく納得できました。
そういう意味では自分の思いと気持ちをしっかり込められた曲。テーマとして愛する猫のことを書きましたけど、やっぱり動物の死はいつか絶対くるし、そこからつながってくるいろいろな感情があるので、そういうところからも素直に表現できた曲かなと思っています。肩肘張って“この子の気持ちは”とかではなくて、思いのほかフラットに書くことができた曲ですね。
――ここまで今作でのプレイについて聞いてきましたが、各曲で岡峰さんの魅力が全面に溢れた作品になっていますよね。改めて今作でのベース・プレイを振り返ってみていかがですか?
自分のエゴとかではなくて、シンプルに曲に合った、THE BACK HORNに合ったベースが弾けたかなって思います。最後12曲目の「JOY」は山田が持ってきた曲なんですけど、山田は最初“ベースの雰囲気がわからない”って言っていたんです。でも自分はデモを一回聴いたときに全部見えて、音源どおりのイメージが最初から描けていました。この曲だけはフェンダーの66年製のジャズ・ベースを親指ミュートで弾いていて、奥行きとかニュアンスを出すことができたと思うし、それがドンズバで曲にハマった。そういう意味でもこの曲で締められたことに納得できたし、変化してきた自分のベースを今作でちゃんと表現できたと思います。コロナ禍で苦悩しつつ、希望を追い求めようっていう自分たちの精神性も提示できたので、全部が納得いった形に集約できたと感じています。
――「JOY」はフェンダー・ジャズ・ベースとのことですが、それ以外はムーン製のものがメインですか?
そうですね。「JOY」以外は全曲ムーンで録っています。曲によってアクティヴのJBタイプを使ったり、シグネイチャー・モデル(GM OKAMINE)を使ったりと楽曲のキャラクターに応じて使用ベースも変えつつ録音していきました。
――さて、ツアーの中断や療養といった出来事がありつつも、止まることなく精力的に走り続けるTHE BACK HORNですが、ズバリその原動力とはなんでしょう?
実際は自分たちでもすごく悩むし、ずっと紆余曲折してると思うんです。全部が正しい進み方とは思わないし、違うルートもあったんじゃないかと思うけど、結果としては自分たちが納得して出した結論に進めているので、そういう意味ではブレずにやってこれたと思います。コロナ禍みたいな、自分たちではどうしようもできない抗えない波もあるけど、「希望を鳴らせ」が完成したとき、聴いてくれるみんなの背中を押すと同時に自分たちのケツも叩かれたというか、“ちゃんと希望に向かって進めよ”って自分たちの曲に言われたようにも感じるので、そうやって意思を再確認できた部分もあります。『アントロギア』は希望に向かって選んでいく意思を示せたアルバムだし、それが僕たちの在り方なのかなと改めて思います。
――岡峰さん個人としては先ほどのYouTubeなど新たな動きも見えますが、今後ベーシストとしてどういったプレイヤー像を描いていますか?
YouTubeで生配信をやっていると、画面を通して来るコメントと対話しつつ弾き方を教えてあげたりして、いろんなものが場所を選ばなくったなって思うんですよ。実際自分は故郷の広島にいることも今は多くて、このアルバムも全部ベース・トラックは広島の自宅で録っているので、そういう意味でも可能性を感じるし、まだまだベースでできること、伝えられることもあるので、もっとベースの裾野を広げられたらなって思います。ベースって派手なこともシンプルなこともできる楽器だと思うので、そこに可能性を感じてベースを手にとってくれる人が増えればいいですね。ベースが楽しいって思う人がひとりでも増えてくれたら嬉しいです。
2022年4月19日発売のベース・マガジン2022年5月号にも岡峰のインタビューを掲載! “リード・ベース”に関してのフレーズ・メイクや心構えなど、BM Webとは異なる内容でお届けします。
◎Profile
おかみね・こうしゅう●1979年10月14日、広島県出身。サポートを経て2002年より、1998年に結成された4人組ロック・バンド、THE BACK HORNに加入。アグレッシブなサウンドから繊細なプレイまで、多彩なアプローチを使い分ける。バンドはこれまでに三度の日本武道館公演を成功させている。2022年4月13日には待望の13thアルバム『アントロギア』を発表し、5月4日からは本作を提げた全国ツアー“THE BACK HORN「KYO-MEI ワンマンツアー」〜アントロギア〜”を開催する。また岡峰は、音楽界屈指の歴史(日本史)識者としても知られる。
【THE BACK HORN「KYO-MEI ワンマンツアー」〜アントロギア〜】
5/4(水・祝)神奈川県 KT Zepp Yokohama Open 16:00 / Start 17:00
5/15(日)大阪府 Zepp Namba Open 16:00 / Start 17:00
5/20(金)愛知県 Zepp Nagoya Open 18:00 / Start 19:00
5/22(日)福岡県 Zepp Fukuoka Open 16:00 / Start 17:00
6/03(金)北海道 Zepp Sapporo Open 18:00 / Start 19:00
6/05(日)宮城県 仙台 GIGS Open 16:00 / Start 17:00
6/10(金)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO) Open 18:00 / Start 19:00
6/18(土)福島県 郡山 HIP SHOT JAPAN Open 17:30 / Start 18:00
6/25(土)岩手県 盛岡 Change WAVE Open 17:30 / Start 18:00
7/8(金)香川県 高松 MONSTER Open 18:30 / Start 19:00
7/10(日)高知県 高知 X-pt. Open 16:30 / Start 17:00
7/16(土)京都府 京都磔磔 Open 17:30 / Start 18:00
7/18(月・祝)広島県 広島 CLUB QUATTRO Open 16:15/ Start 17:00
7/23(土)茨城県 水戸 LIGHT HOUSE Open 17:30 / Start 18:00
7/30(土)石川県 金沢 EIGHT HALL Open 17:30 / Start 18:00
■チケット:全公演¥6,000(税込・D 代別)
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◎Information
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岡峰光舟
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