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    INTERVIEW – 菅野岳大 [paionia]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto

    “細野晴臣さんのベースには意味のないフレーズがない”
    と感じた。

    ──今回ベース・マガジンに初登場ということで、ルーツの話についても聞きたいと思うのですが、影響を受けたベーシストを挙げるとすると?

     ウィーザーがすごく好きで、最初にベースを弾いていたマット・シャープの佇まいがカッコいいと思ってました。僕のベースのカラーリングも彼と同じやつにしているんです。体格が違うから似合わなかったですけどね(笑)。あとは、いろんな音楽を聴きながら“この曲ベースがいいなぁ”って思ったやつとか、ベースに限らなくてもいいと思ったフレーズをよくベースでコピーしていたんですけど、そのなかではっぴいえんどを弾いたときに“細野晴臣さんのベースには意味のないフレーズがない”と感じたのは覚えてます。そこでグルーヴっていうものを初めて意識するようになったのは大きかったですかね。

    ──菅野さんのプレイ・スタイルを語るうえで“親指弾き奏法”は大事なポイントだと思うのですが、そこにはやはり細野さんの影響があったんですか?

     最初は細野さんの真似っこ感覚でやってたんですけど、やっぱり親指で弾くと“丸っこいけど芯のある音”が出るんですよね。思い込みかもしれないけど、親指で弾くと存在感が違う。paioniaはギターが大きい音で歪んでいて、はっぴいえんどとは違うけど、それでも“なんか合うな”と思ってずっと弾いています。あと親指弾きはピック弾きでいうダウン・ピッキングのニュアンスに近いと思っていて、BOØWYっぽいグルーヴのイメージというか、そういう安定感も出せるんですよね。

    ──今作に収録されている「手動」のスタジオ・ライヴ映像を観たときに、曲の前半は親指弾きで、終盤は2フィンガーに切り替わっていたと思うんですが、あそこにはどういう判断があったんですか?

     あれは指が疲れてきたからですね(笑)。

    「手動」(Favorite Room Sessions)

    ──親指弾きで弾き続けるのって大変ですよね。

     休ませて〜って感じですかね。できれば全部親指で弾きたいんですけど、最後8分でピッキングが速くなるっていうのもありますよね。

    ──ちなみに、親指弾きの際にパーム・ミュートをすることもありますか?

     ミュートはやったことないと思いますね。やったほうがいいですかね?

    ──paioniaには合いそうな気もしますよね。現代において親指弾きがメインの奏法だというベーシストは貴重だと思うので、菅野さんにはこれからも親指弾き界を引っ張っていってもらいたいです。

     そうですよね、もっと極めようと思います(笑)。

    ──さて、今作でも使用したというジャズ・ベースについても聞きたいと思います。いつから使っているベースなんですか?

     20歳頃に中古で買って、そこからずっと使っていますね。さっきも話しましたけど、色はウィーザーの人と同じっていうので選んで。今回も全曲この1本で弾いてます。

    ──相当信頼している1本だと。

     これは前に人から言われて“そうかも”って思ったんですけど、“どう弾いたらアンプが歪むかとかをなんとなくわかってんだろうね”って言われたことがあって。実際、このベースは体の一部になっているというか、そういう使い馴染みがあるので、いろんなニュアンスを出せる感覚があるんです。僕は強いアタックで弾いたときにピークがジリってなるような歪みがけっこう好きなんですけど、そういう音がこれだと出せる。“歪ませた音”より“歪んじゃってる音”のほうが好きなんですよね。

    ──今作で、エフェクターを使用した曲はありますか?

     ファズを「人の瀬」のアウトロで踏んでます。でも、あんまり派手にはかかってないかな。あとは「夜に悲しくなる僕ら」の前奏でコーラス・エフェクターも使ってますね。

    「人の瀬」(Music Video)
    レコーディング、ライヴともにメインで使用しているフェンダー・ジャズ・ベース。製造年は不明とのことだが、カムタムショップ製でレリック加工が施されている。マッチング・ヘッド仕様が採用されている点も購入のキメ手になったとのこと。
    「人の瀬」で使用されたZ.VEX製FUZZ FACTORY。
    「夜に悲しくなる僕ら」で使用されたBOSS製CEB-3。
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