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    INTERVIEW – 村井研次郎[cali≠gari]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto
    • Live Photo:Mikako Ishiguro

    オクターヴ上じゃなくて
    7度とか3度をプルするとcali≠gariっぽくなる。

    ──「鐘鳴器」のベースからは、フレーズ的にも音像的にもシンセ・ベースっぽい印象を受けましたが、これもエレキ・ベースなんですよね?

     これもやっぱり、口で歌ってるからそういうフレーズになっちゃうんですよね(笑)。でも音に関しては、多分ですけどシンベの上に生ベースを乗せていると思います。シンベで打ち込んだものもエンジニアさんに渡しているので、それが残っているんでしょう。ここはエレキ・ベースがアルペジオでFのメジャー・セブンを弾いていて、シンベはそのオクターヴ下にいる。それでオクターバーがかかったように聴こえるんですね。

    ──あと、この曲はアルバムで唯一3拍子のノリの曲ですよね。

     大好きですねこういうのは。やっぱりパソコンで曲を作っていると、変拍子とか奇数のものを作っちゃいます。3、5、7のリズムがすごい好きなんです。演奏する人が、それぞれ違うリズムの捉え方をするのが楽しいですよね。

    ──確かにこの曲の途中、ドラムは4でリズムを捉えているように聴こえる部分がありました。

     そうですね。それぞれの解釈が奇数のリズムだと違ってくるので、“ギターはどう入れてくるだろう?”とか、こういう曲は仕上がりにワクワクさせられるんですよ。

    ──アルバムの冒頭を飾る「一つのメルヘン」ですが、1曲目からベース・ソロが炸裂していてインパクト大でした。ラテンのエッセンスを感じるリズムも新鮮です。

     ベース・ソロは、両手タッピングで始まるやつですね。これ、スゴそうに聴こえるんですけど、実はスゴいことはしてなくて、覚えたての高校生がやるようなプレイなんです(笑)。これもテクニックを使いたいというよりは、鼻歌でこんなソロを思いついて、曲調的にタッピングが合うなと思ったという感じですね。タッピングとフラメンコって雰囲気が合うんですよ。

    「一つのメルヘン」(LIVE)

    ──村井さんは和音を弾くことも多いですが、「一つのメルヘン」ではそれがすごくキレイに響いているのも印象的です。この曲はギターのバッキングが歪んだエレキではなくアコギですが、ベースのコード弾きとアコギの相性の良さを感じました。

     確かに、バッキングがアコギだとベースはいろいろ入れられますよね。僕はコード弾きをたくさん使うので、合っているのかもしれない。ちなみにベース・マガジン的な話でいうと、ルートのあとに、オクターヴ上じゃなくて7度とか3度をプルするとcali≠gariっぽくなると思いますよ。それと僕のスラップは和音弾きの形に近いみたいで、いろんな場面で“あれはスラップなの? 和音奏法なの?”って聞かれますが、正直奏法というのは全然意識していないです。

    ──「ハイ!」はスラップが印象的な曲ですが、ここでもそういう弾き方をしているんですか?

     これも和音奏法とスラップの合いの子という感じで、爪弾いてるんです。これが果たしてスラップなのかは微妙なところですが(笑)。コード弾きの右手を強くハジくのが、僕の場合はスラップということになるんでしょう。スラップのときも和音奏法のときも右手の形は同じなので。

    ──「100年の終わりかけ」は今作のなかでは比較的シンプルなベース・ラインですが、どのように発想したのでしょう?

     アコースティック・ベースで弾いた曲ですね。これは作曲者の石井秀仁(vo)いわくデヴィッド・ボウイのオマージュとのことで。でもいかんせん僕はボウイをそこまで深く通っていないので、“ボウイはわかるけど、ボウイのベースってどんなのだ?”って意図を理解するのにちょっと時間がかかり。それでなかなかフレーズが出てこなかったんだけど、こういうときはあまり深く考えずにやると大概うまくいくと思っているので、彼が作ってきた打ち込みをそこそこ忠実に再現する方向にしましたね。結果的にいい形でまとまったんじゃないかと思います。

    ──今回ほかに、ベース・ラインを考えるうえで苦労した曲はありますか?

     「四畳半漂流記」ですかね。これはCメジャー・コードの表現が難しかったです。今の若い子とかはローCとかでやるんでしょうけど、3弦3フレットのCって、ベーシストにとってちょっと不利じゃないですか? 結果的にはドロップDにしましたけど、4弦をEにするかドロップDにするか、フレーズを作るにあたって迷いましたね。鼻歌ベース・ラインが再現しにくいキーっていうのがあるというか、歌えるベース・ラインがどのキーでも弾けるわけじゃないんですよね。

    ──最後に、ベーシストとしての今後の展望について教えてください。

     最近はコロナ禍でパソコンにいろいろなソフトを入れ始めていて、自宅でのベースの音作りを頑張ろうかなと思っています。エンジニアさん任せじゃなくて、シミュレーターとかを研究しようかなっていう気になってきていて。明日も新しいDIを買いに行くんですよ(笑)。あとは、これまで作詞はあんまりやったことなかったんですけど、今作では作詞も作曲もやったので、これをきっかけにできることが増えたんです。バンドとしてもライヴがなかなか難しい状況はあるけれど、これからどんどんリリースをしていこうという話になっているので、バンバン曲を作っていこうと決めています。やりたいことはどんどん増えていきますね。

    ◎Profile
    むらい・けんじろう●1974年6月15日生まれ、神奈川県横浜市出身。中学2年からベースを始める。2002年にcali≠gariのベーシストとしてメジャー・デビュー。2003年にはSEX MACHINEGUNSに加入、2006年に脱退し、バンド・メイトであったPanther(g)、Joe(d)とともにthe CYCLEを結成する。2007年からはCOALTAR OF THE DEEPERSにサポート参加。そのほかさまざまなサポート、セッションも行なう。2018年11月にはソロ・アルバム『UNDERMINED』を発表した。

    ◎Information
    cali≠gari
    Official HP Twitter

    村井研次郎
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