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INTERVIEW − 森本夏子 [bonobos]
- Interview:Tomoya Zama
- Live Photo:Yumi Ikenaga、Hisashi Ogawa
レゲエっぽいラインでも、音価を意識して弾いているかどうかで、
音もグルーヴも変わってくる。
━━「永久彗星短歌水」はインパクトがある1曲目ですね。そのなかで音価を短くコントロールしたパーカッシブなベース・ラインは存在感があります。
音符の長さは全部意識して弾いていて、音価や和音をちゃんと計算して弾いています。今はライヴを重ねてきて、“あそこをこうしたほうが良かった”っていうところがもうすでに出てきてしまっているんですけど(笑)、レコーディング当時は一音一音しっかり考えて弾きました。ほかの曲に比べたら音価は短めですね。
━━2番のAメロは一気に下に潜り込んで、パーカッシブというよりはボトムで蠢くようなプレイですね。
そうですね。ここはけっこう任せてもらった部分だったと思います。5弦ベースなので、上と下でうまく使い分けたらカッコよくなると思ったんです。
━━「YES」はグルーヴィなベース・ラインですが、特に休符の使い方が印象的で、まさに休符を弾いている感じが伝わってきました。そこは大事にしている部分なのでしょうか?
まさにそうですね。その休符の作り方も音を切るスピードがとても大事だったりするので、そこは意識していますね。もともと、音の出し方についてはシンセ・ベースを目指して弾いているんですけど、とにかく休符を生かすために、音の余韻を出さずに音の切れるスピードを速く、まっすぐ切る意識で作っていますね。
━━1:34くらいで音価が短いパーカッシブな刻みからウォーキングっぽいなめらかなラインに変わっていきますが、ここはジャジィな感じを意識した部分でしたか?
デモの時点からそういう雰囲気が感じ取れたんです。思えば、蔡くんはもっとジャズ寄りのベースを求めていたと思うんですよね。でも、私はどう弾いてもレゲエ感が出てしまうので。デモ自体はもっと重心が上のジャズ・ベーシスト的なイメージで作っていると思うんですけど、蔡くんはもう私のキャラを諦めてくれているっていうか(笑)。イメージとしてはもっと重心が上なんだろうなと思いつつも、任せてもらえているんだなって。
━━この曲は9分を超えるかなり長い曲ですが、そういう曲だと構成感や、演奏はまた違った意識の持ち方があるのでしょうか?
長い曲であっても、自分自身がリスナーであるときはなんの苦もなく聴いているから、あんまり意識の差はないかもしれないですね。それよりも一音一音しっかり弾いていくという意識のほうを大事にしていますね。
━━「電波塔」では、先ほど言っていたレゲエっぽいベース・ラインで楽曲をリードしていますね。この曲はどのように制作していきましたか?
これもかなり完成されたデモの状態で渡されましたね。私が演奏してグルーヴとか細かく変わったところはありますけど。あと、デモの時点ではドラムがもっとシンプルだったと思うんですけど、それはもうスタジオで変わっていった感じですね。でも、ベースはほぼあの感じで入っていて、音価だけ私が調節してグルーヴ感を意識して作りました。
━━この楽曲は特に、森本さんならではのプレイが存分に発揮されていると感じました。
ポップスのベースの音とは違って、レゲエの音は一音を減衰させないイメージなんですよ。多分この曲みたいなベース・ラインを普通に弾いていても、ああいうグルーヴにはならないと思うんです。一音一音を伸ばしきって、音の入り方や切り方を速く、とにかく弾き切る意識を持ちました。シンセ・ベースのように減衰を許さない弾き方ですね。これを意識しているかどうかっていうのは音にも表われるし、グルーヴも変わってくるので、ただただレゲエのラインっぽいのを弾いていても、こういう感じにはならないんじゃないかなって思います。
━━「KEDAMONO」はリズムの組み立てがおもしろくて、例えば0:55のバンド全体のキメでは16小節ごとにベース・アプローチが変わっていて、1回し目はホーンと合わせた長めの音価で、2回し目はそれぞれの音を切って、3回し目はバス・ドラムから半拍うしろにズラしたプレイになっていますね。
ここは蔡くんの意図で、全員やっていることが違うんですよね。こういうフレーズってすごい全体で合わせやすいというか合わせがちなんですけど、それはあえてハズそうということでみんなズラしているんです。そもそもズラすこと自体は蔡くんのデモの時点であったんですけど、どうズラしていくかはスタジオで自分たちの感覚で組み立てていったんですよ。今、ライヴだとさらにズラしているんですけどね(笑)。音源ではピアノとドラムは合わせていたけど、もうライヴではみんなバラバラにしていて、よりふくよかなカッコよさが出ていると思います。
━━歌が終わってからのインスト・セクションもたっぷり取っていますが、ここはどのように構築していったんでしょうか?
そこはデモの時点で蔡くんがグルーヴとかも計算し尽くしていて、微妙にベースとドラムをズラして永遠に聴きたくなるようなループを作っているんです。きっと本人はもっと長くしたいだろうし、ほっといたらもっと長くなりそうだけど、私自身はアウトロはそこまで長くなくてもいいと思っていたので、そういう長さに関するやりとりはあったと思います。“もう少し短いほうがいいんじゃない?”、“でも、ずっと聴けるんだからもう少し”みたいな。でも、ライヴの構成やセットリストは私が決めることが多くて、私の“こういう流れでやりたいんでアウトロはこうしたい、こういう入り方をしたい”っていう意見が反映されやすいので、ライヴではアウトロがもっと短くなっていたりもしますね。