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INTERVIEW − 森本夏子 [bonobos]
- Interview:Tomoya Zama
- Live Photo:Yumi Ikenaga、Hisashi Ogawa
音価へのこだわりから生まれる
レゲエ・ベース独特のグルーヴ感覚
2023年3月をもって、2001年の結成から20年以上にわたる活動に終止符を打つことが発表されているbonobos(ボノボ)。そんな彼らのラストを締めくくるアルバム『.jp』(ドットジェーピー)が11月2日にリリースされた。数度のメンバー・チェンジを経た長い活動において、結成時からのオリジナル・メンバーとして歩み続けてきた森本夏子。作詞曲を担当するヴォーカル&ギターの蔡忠浩によって緻密に計算され作り上げられた楽曲群が森本自らの経験に裏づけられたグルーヴ感でプレイされている今作には、これまでの集大成とも言える圧巻のベース・プレイが随所に盛り込まれている。本作を“ずっと挑戦を続けてきて迎えた、最高の作品”と語る森本に、約5年という期間をかけて一枚にまとめ上げられた今作の制作背景、そしてこれまでの活動やラスト・ライヴに向けた思いを聞いた。
最後まで挑戦し続けてできた
最高のアルバムだと思う。
━━2023年春をもっての解散が発表されていますが、この話がバンド内で決まったのはいつ頃だったのでしょうか?
解散の話し合いが設けられたのは2021年の末ですね。年末くらいから話を始めて、1月に解散を決めました。
━━2022年4月の発表から1年間という活動期間にはどういう意味があるのでしょうか?
まず、6月と7月で全国ツアーが決まっていたんで、それは絶対やりきるという思いがあった。そのうえで、“活動休止”じゃなく“解散”を選んでいるからには心残りを残したくないということで、“やりたいことをみんな言っていこう“ってなったんです。ビルボードには絶対に出たい、アルバムも出したい、最後は日比谷の野外音楽堂で締めくくりたいとか、みんなでアイディア出していくうちにこれは1年かかるなっていうのと、2023年3月に日比谷野外音楽堂でのライヴが決まったから、その月を最後にしようって決めたんです。
━━今現在(インタビューは11月18日に実施)、ツアーとビルボート公演を終えましたが、どのような感覚がありますか?
カウントダウンが始まっているなっていう感覚があります。アルバムのリリースも終わって、ビルボード公演がそのアルバムのリリース公演的な立ち位置だったので、今過去最高の状態というか、制作意欲的にもピークを迎えたっていう感じもありますね。これでやっと新しい音源が完成したなっていう。
━━2001年から20年以上の長い年月をbonobosとして活動してきましたが、振り返ってみていかがでしょうか?
ビルボードのときも感じていたんですけど、制作活動とかライヴ活動とか、これまで音楽活動が本当に理想的な環境のなかでできていたなと思いました。それが良かったというか恵まれたなって思っていて、助けてくれる人にも都度都度出会えて、すごく幸せな活動を20年間保っていたなと思っていますね。例えば経済的に活動を続けられないとか、外的な理由で辞めざるを得ない状況になることもなく、認めてくれる人には認めてもらえていたから続けられて、ライヴに来てくれていた人たちもbonobosのことをわかって受け入れてくれているから20年間活動できたんだなって感じていますね。
━━3人編成の時期があったり、現在の5人編成に変わったり、バンドとして大変な時期もあったのではないでしょうか?
メンバーが変わるたびに大変だったんですけど、3人時代も3人だからこそやれることとかもあって、その3人のときにサポートしてくれていたメンバーが本メンバーになってくれたりとか、その都度やりきってこれたなっていう感じです。
━━今回発表された『.jp』はフル・アルバムとしては6年ぶりですね。このアルバムが完成したときの感覚はどのようなものでしたか?
解散を発表しているバンドが出す音源ではないよねとは思いました(笑)。でもそれも理想というか、J-POPの王道っていうものではないんですけど、挑戦し続けて終われるので最高なアルバムができたなって。
━━制作はどのような流れで行なっていったのでしょうか?
まず『23区』、『FOLK CITY FOLK ep』の流れを汲むアルバムにしたいというのがありました。詞曲は蔡(忠浩/vo,g)くんが打ち込みのデモを作るところから始まって、バンドとして録る前にかなり作り込まれた、そのまま出してもカッコいいっていうレベルのデモを渡されるんです。蔡くんの頭のなかでもう完成されている音楽というか。そこからメンバーおのおのが自宅でデモと向き合って、フィジカルな楽器に落とし込むっていう作業になりますね。そしてレコーディング前にみんなでスタジオに入ります。パソコン上で打ち込んでいるので、フィジカル的に無謀な部分もあったり、“ここはこうしたほうがカッコいいんじゃないか”みたいなやりとりがスタジオであるんですけど、基本は個人個人が蔡くんのデモとひたすら向き合って、フィジカルに落とし込んで、なおかつそれを打ち込み以上にカッコよくするにはどうすればいいのかを模索していく感じです。
━━そうして最終的に自分から出てきたニュアンスや細かいところを相談しつつ仕上げていくと。
そうですね。特に蔡くんはドラムには一番厳しくて、梅(梅本浩亘/d)とはすごいニュアンスのやり取りをしていますね。ギターやキーボードともウワモノのヴォイシングとかのやり取りをたくさんしているんですけど、私は長年やっているってのもあって、雰囲気とかグルーヴとかに関しては任せてもらえていますね。っていうかあんまりやりとりしないし、もうそれでいいって感じで、相談は一番少ない気がしますね。長年やっているからなのか、言われなくてもわかる部分が多いのかわからないですけど。