うねりのせいで余計にカオスに聴こえる。
そういうことができるのも、ベースの特権。

──以前から、今回のようなプロセスで曲作りをしていたんですか？

　そうです。そこは変わらずで、加えて私が関与する部分が増えたっていう感じですね。デモ段階でのドラムの打ち込みも本当に最近、自粛期間中に練習してやれるようになって。細かいところまで自宅で突き詰められるようになってきましたね。

──いわゆる、バンド・メンバーが顔を突き合わせてジャムって曲作りっていう感じじゃないんですね。

　特に今回は、そういった作り方はしていないですね。メンバーそれぞれが“こういう雰囲気の曲がほしい”っていう希望をKANAMIに伝えて。その要望を踏まえてKANAMIが作るっていうパターンが多かったですね。そのなかで、今は作曲にも少しずつ取り組んだり。とにかく、2020年はデモを作りまくっていたので、本当に常に制作しているような感じでした。

──総じて、BAND-MAIDの楽曲アレンジは、2Aになると、フレーズやリズムで遊ぶことが多いですよね。しかも年々複雑化してます（笑）。

　確かに2Aで遊ぶパターンは多いですね（笑）。「H-G-K」も2Aでスラップしているんですけど、あとから弾こうと思うと、かなり難しい（笑）。

──もはや、すべての楽器が混沌としていますね（笑）。

　SAIKI（vo）が歌えるかどうか心配したんですけど、“何でも大丈夫！”みたいな感じでした（笑）。先ほど話題に出た「BLACK HOLE」みたいな曲もあるわけで、もともとカオスな楽曲が多いから、ヴォーカリスト的にも大丈夫なんだと思います（笑）。

──この演奏の上で歌っているヴォーカリストってすごいと思います。

　「BLACK HOLE」はすごいかもしれませんね。でも、実はこの曲、イントロのベースはシンプルにしたんですけど、シンプルにすることで、逆にカオスに聴こえちゃうようなフレーズになってしまって。シンプルで同じことずっとしているんですが、うねりを加えるために、スライドを多めに入れたんです。

──なるほど。スライドを取り入れることでうねりを加えているんですね。

　そうです。3音を繰り返してるだけなのに、指板の移動距離が長いから、開放弦から始まって1フレットから12フレットあたりまでのうねりが長い。そのうねりのせいで余計にカオスに聴こえる。そういうことができるのも、ベースの特権かもしれませんね。

──その“うねり”についてなのですが、MISAさんの場合、スライドやグリスといった技だけでなく、フレーズの構築やベース・ラインのアレンジから“うねり”を作り出している印象があります。勢いだけに頼らないというか。そのあたりは意識していますか？

　それはあるかもしれません。ここでうねったら気持ちいいだろうとかっていうことは常に意識はしていますからね。それを録音して聴いてみて、ちょっと違うなって思ったらもう一回録音したり、常にいろいろと試しています。

──そういった作り方の良い点が、今作に色濃く表われていますね。こんな時代でも、創作活動を止めずに続けていたことが功を奏している気がします。

　そうですよね。大変な時代だけど、この作品ができたことは大きいと思います。

──そして、いい意味で自らハードルを作って超えていく。

　今までもそうだったんですけど、今作もかなりレベルが高くなったなって、自分でも思います。ただ、最近はベース・ラインを動かさないことも意識していて。先ほどの話にもありましたが、ベース・ラインが動きすぎると軽く聴こえたりもするので、だから動かないでどっしりすることも意識しました。あと、今後は“ギター・ロック”みたいな曲も作りたいなって思って。

──ギター・リフとゴリゴリにユニゾンしたり、とか。

　そうですね。今作だと「Manners」はそんな感じですよね。今作については、本当に今の自分のなかでやり切った感じはあります。