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    【Live Report】 PEDRO – 2021年12月22日(水)/横浜アリーナ

    • Report:Kengo Nakamura
    • Photo:Sotobayashi Kenta

    PEDRO
    BASSIST:アユニ・D
    ●2021年12月22日(水)●横浜アリーナ

    急スピードで駆け抜けた“本物のベーシスト”への道

     今年9月、横浜アリーナ公演の発表とともに、同公演での無期限活動休止を発表したPEDRO。その後、全国13都市14会場を回る“SAYONARA BABY PLANET TOUR”を開催し、11月には3rdアルバム『後日改めて伺います』を発表した彼女が、いよいよ、運命の横浜アリーナ単独公演「さすらひ」を迎えた。

     ライヴはストレートでポジティブな「感傷謳歌」でスタート、大振りなダウン・ピッキングでグングン進んでいく。イントロで火柱が上がった「夏」ではギター・ストロークのようなオルタネイト・ピッキングでグルーヴを先導し、“猫背を伸ばしてみないと見えない世界がある。私はいろんな世界を見てみたい”とMCした「猫背矯正中」は間奏での超速いダウン・ピッキングでテンションを高めていく。

     とんでもないスピード感で突き進んだ「GALILEO」の直後には、指弾きで重く引きずるようなリフを奏でるミディアム曲「Dickins」。この落差はなんとも刺激的だった。そして、オーディエンスとともに“カンパイ!”した「乾杯」では、早くも客席に銀テープが舞う。田渕ひさ子(g)のドライブ感あふれるソロを突進力のあるルート弾きで支えながら、アユニは余裕すら感じさせる笑顔を見せ、バンドを楽しんでいるのが伝わってくる。ギターの裏打ちが軽快な「浪漫」では重厚な低音をピック弾きのゴリっとした感触で表現し、ステージ後方に映し出されたグラフィックも美しかったスロー曲「生活革命」はどっしりとしたボトムが切ない歌を引き立てた。

     “楽しかった時間は夢だったのかな、幻だったのかなって思っちゃうけど、全部私のなかの本物なんだと思います”と感傷的なMCのあと、一転してベースの16分の激歪み連打から「pistol in my hand」そして「SKYFISH GIRL」のサイケデリックなサウンドへと進む。イントロにダンサブルなノリがある「自律神経出張中」では腰で乗るように体を動かしながらベースを弾き、「無問題」のエンディングでは全身を使ってベースをかき鳴らす、アユニ。その弾き姿がなんともカッコいい。思い起こせば、ベースを始めて間もない3年前の1stライヴの時点で、彼女の弾き姿はカッコよかった。それは練習などで身につくものではない、天性のものだったのだろう。そこに今は、数多くのライヴを重ねた自信が加わり、“本物のベーシスト”になったのだ。そんな彼女は、キラー・チューン「NIGHT NIGHT」で、速いダウン・ピッキングとオルタネイトを明確に使い分けて楽曲に起伏を作り、クライマックスかと思うほどの盛り上がりを作った。

    • PEDRO – 2021年12月22日(水)/横浜アリーナ

     “眠れない夜の、消えてしまいたくなった夜の、お守りです”とMCした「安眠」から、ライヴは後半戦となる3rdアルバム『後日改めて伺います』の世界へ。「安眠」のウラを強調したビートはギターがアルペジオなこともあり、まさにベースがグルーヴを作っていく。

     切なく疾走した「ぶきっちょ」、演奏中に毛利匠太(d)や田渕を愛おしそうに見つめるその視線がバンドマンのそれだった「いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください」。4つ打ちのバスドラに重厚な4分音符を重ねた「死ぬ時も笑ってたいのよ」は、弦を殴りつけるようなピッキングでキメを奏でていたのがなんともクール。ダウン・ピッキングの勢いで突破する「おバカね」、エンディングでオクターヴを上がってハイ・ポジションのプレイでテンションを上げた「万々歳」、ひたすらに重厚なロー感で聴かせた「魔法」を経て、“うまく息ができなくて、涙が止まらなくなって、生活するのをやめちゃおうかなって思ったときもあったけど、また朝を迎えられてよかった”と素直な心情を吐露したMCへ。“ありがとうの気持ちでいっぱいです”の言葉から奏でられた「人」は、優しく気持ちが浄化されるような歌が心に響く。

     エモーショナルに疾走する「吸って、吐いて」、イントロでハイポジのメロディックなラインを奏でた「雪の街」。エンディングでは田渕の美しいノイズ・ソロを太すぎるボトムで支え、ギターのフィードバック・ノイズが鳴り止まないなかステージを降りたアユニ。ライヴ中、何度も活動休止について触れ、涙を堪えながら、強くて優しい視線を客席に投げ続けた彼女が、3rdアルバムのタイトルどおり、また再びベースを手にステージに戻ってくるのを待ちたいと思う。

    ■2021年12月22日(水)@横浜アリーナ
    セットリスト
    01.「感傷謳歌」
    02.「夏」
    03.「猫背矯正中」
    04.「GALILEO」
    05.「Dickins」
    06.「乾杯」
    07.「浪漫」
    08.「生活革命」
    09.「pistol in my hand」
    10.「SKYFISH GIRL」
    11.「自律神経出張中」
    12.「無問題」
    13.「NIGHT NIGHT」
    14.「安眠」
    15.「ぶきっちょ」
    16.「いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください」
    17.「死ぬ時も笑ってたいのよ」
    18.「おバカね」
    19.「万々歳」
    20.「魔法」
    21.「人」
    22.「吸って、吐いて」
    23.「雪の街」

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