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【第76回】メロディックに弾く極意① えっ、ベースでアレ、弾けないの? 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
今回は“もっとメロディックに弾きたい”っていう人のためのお話です。
僕は、“ベースはリズム・セクションの一員でありつつ、メロディ楽器でもある”と思っています。
歌モノだったら歌のメロディが、インストだったら楽器が弾くメインのメロディ(=比較的高い音域でのメロディ、主旋律、主メロ)があって、それに対してベースは低い音域でのメロディ、主メロに対する裏メロ(対旋律)だと感じながら演奏していることが多いです。明らかにメロディックなフレーズだけじゃなく、シンプルなベースのリフだってメロディだと思うし、経過音で次のルートへつなぐ動きとかもメロディだなあ、と。
僕の場合は“メロディックに弾きたい”欲求はあるけど、“ソロを弾きたい”欲求はほぼなくて、主メロを下から支えつつ、主メロに合いの手とかツッコミを入れたりして“会話している感じで曲を紡いでいく”のが大好きですね。メロディックに弾きたいという人のなかにはベース・ソロをたくさん弾きたい人もいるし、そのへんはホント人それぞれだと思います。
ということで、リフやベース・ラインでも、フィルインでも、もっとメロディックに弾くにはどうしたらいいか? っていうことを、何回かに分けてシリーズで紹介していこうと思います。今回は“何を練習すればいいか?”について話します。
メロディックに弾くために何を練習すればいいか?
まずひとつ目。これは“メロディックに弾きたい”と本気で思っている人なら、すでに絶対にやっていることだとは思いますが、万が一やっていない人がいるかもしれないので念のため。
①メロディックなベース・ラインをコピーして練習・研究する
そのまんまというか当たり前すぎですが、これは避けて通れないでしょう。ただ、音をコピって弾けるようになって終わり、ではなくて、“研究”しましょう。音づかいがどうなっているか。音価がどうなっているか。休符がどうなっているか。アーティキュレーションがどうなっているか。自分のプレイに応用するには、こういうことを手を抜かずに研究して、理解しつつ演奏するのが大事です。
次は、メロディックなベース・ラインの研究をしている人でもやっていないかもしれないこと。
②曲のメロディを練習・研究する
メロディックに弾きたいなら、曲のメロディを練習するのが一番です。歌モノでもインストでも。
たとえば歌モノのバンドをやっているとします。オリジナル曲でもカバー曲でもいいですが、自分が弾く曲のメロディをベースで弾けますか? あっ、弾けないわ……って人、結構いるんじゃないかな、と思います。
メロディックに弾きたいと言いつつ、自分が弾く曲のメロディは弾けない。どう思いますか? まずいですよね。矛盾している。もし、弾けないどころか口ずさめないとなると、さらにまずいです。曲のメロディを知らないのにメロディックに弾きたい、と。
ということで、まずは、人に聴かせられるレベルじゃなくて全然いいので、曲のメロディを実際に歌いましょう。それからそれをベースで弾く練習をする。これ、めちゃくちゃいい練習になるし、楽しいです。
あと、普段弾く曲以外に、好きなメロディとか、名曲とされている曲のメロディとかを題材にするのもいいです。自分が好きだと感じるメロディには価値があるし、多くの人が好きだと感じるメロディ(名曲)にもたぶん価値があるかな、と。慣れないうちは、童謡とか、昔のアニメ・ソングとか、自分がよく知っていて、かつ複雑じゃないメロディから始めるといいです。
それから、これもやっている人は少ないのでは? と思うんですが、
③ほかの楽器のフレーズを練習・研究する
例えば、ギターのフィルインやオブリ、鍵盤のフレーズ、管楽器の合いの手、ストリングスのフレーズなど、アドリブの演奏であれ、かっちりアレンジされたものであれ、主メロに対する裏メロ的なフレーズを練習します。あとあと自分でフレーズを作るときの参考にもなるし、これまた楽しいです。
ということで、今回紹介したなかから自分で題材をいくつか見つけて練習・研究してください。次回は、その題材をもっとメロディックに弾けるようにするための取り組み方を紹介します。石村順でした!
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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