NOTES
最近は、ペダル型プリアンプとかマルチ・エフェクターに入ってるアンプ・シミュレーターとかで基本の音作りをしている人も多いですよね。
ところで、普段、自宅練習用の小さいアンプで音を出していると、スタジオの大きいアンプで出るような低音が出ません。また、ヘッドフォンで練習していると、実際のアンプみたいに“背中や床から感じる低音”っていうのが皆無なので、ローが物足りなく感じるかもしれません。こういう環境で音作りをすると、その物足りなさを補うために、ついついプリアンプなどのローをブーストしすぎてしまいがちなんですね。
これ、小さいアンプやヘッドフォンで演奏してる分には気持ち良くても、実際にその音色でレコーディングしたり、スタジオやライヴハウスのアンプで演奏した場合、ローを出しすぎていることが原因でいろいろ問題が起きがちです。
例えば、前回話した“抜けない音”。みんな気になるポイントですよね。実は、ローをブーストしすぎると“抜けない音”になりがちです。なぜかと言うと、ローを出しすぎると、相対的にミッドやハイが引っ込んで聴こえるからです。実際に聴いてみましょう。
これがプリアンプのEQがフラットの状態です。
そしてプリアンプのローをあえてフルテン(最大)にした状態です。
ローをブーストすると全体の音量も上がって聴こえます。なので、フラットのときと同じくらいの音量になるまでヴォリュームを下げます。すると、こういう風にハイやミッドをカットしたような状態になります。
参考までに、これが前回指摘した”ベース本体のトーンを絞りすぎた”状態です。
まったく同じじゃないけど、どちらもハイやミッドが削れた状態になっていますよね。このように、ローをブーストしすぎると、前回指摘したのと同じような“抜けない音色”になってしまいます。
ライヴで起きがちな問題として、“低音が回る”という問題があります。“低音が回る”っていうのは、特定の音程が壁や床に共鳴・共振したり反射したりして、飽和状態になってボワボワ~ッっとなってしまう現象ですね。どの部屋でもスタジオでもホールでも、特定の周波数で共鳴や共振は起こります。プリアンプやアンプのEQがフラットでも低音が回ることは多々あります。低音というのは、そういう問題が起きやすい音域なので、“ローをかなりブーストした音色”で演奏すると、より問題が起きやすくなるのはわかりますよね。なので、特にライヴではあまりローを出しすぎないほうがいいです。PAのエンジニアさんの意見を聞いて、相談しながら音作りをするべきです。
また、ローをブーストしすぎると、同じ低音域のバス・ドラムの音色とバッティングしちゃってグダグダに、というのもありがちです。バス・ドラムが一番下でその上にベースが位置するのか、その逆にするのか、というのも大事なポイントです。
さらに、曲調やフレーズの種類によっても、ローの出しすぎは良くないです。音色を体積に例えると、ピアノの高音部やヴァイオリンなどの音色や、ローをガッツリ削ったベースの音色は、体積が少なく、軽く聴こえます。ピアノの低音部やベース、特にローをブーストした音色は体積が大きく、重く聴こえます。何かを手に持って動かしたり振り回すとき、体積が小さくて軽いものは素早く動かせるけど、体積が大きく重いものは速く振り回すことができませんよね。音の世界でも、ローをかなりブーストした音は、アップ・テンポの曲や音数の多いプレイには向かないです。
ということで、自分が演奏するジャンル、曲調、プレイ・スタイル、演奏する場所の音響特性に合わせて、ローをついついブーストし過ぎないように気をつけて、音色を作りましょう!
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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライヴや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
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