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【第130回】練習モードと本番モード、真逆の精神状態を使い分けよう 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
練習モードと本番モードを使い分けましょう!
練習をするときの精神的なモード(つまり、音楽に向き合う内面の姿勢)を練習モードと呼ぶとします。この練習モードの精神状態のままライヴ本番に臨んでいるケースを、ときどき見かけます。僕自身も、楽器を始めた頃はよくそうしていたし、今もまったくないとは言い切れません。これは良くないです。ライヴ本番などで演奏するときは、本番モードに切り替える必要があります。ライヴだけじゃなくレコーディングでもそうだし、場合によってはリハーサルも本番モードで臨んだほうが良いときがあります。
練習モードとは
練習モードとは何かというと、観察・分析するモードです。そして、コントロール・修正するモードでもあります。文字通り、練習するときはこのモードで取り組むのが効果的です。
練習モードでは、もし演奏していて間違えたら、素通りしてそのままにしません。演奏できない部分・間違えた部分にフォーカスして、どうなっているか観察したり、できない原因を分析したり、できるようになるまで身体の動きを理性でコントロールしたり修正したりします。
つまり別の言い方をすると、練習モードとは、目標を設定してそこへ到達するように努力するモードです。“上手くやる”ことを目指すモードともいえます。過去を反省して未来を志向するモードと呼んでもいいでしょう。
本番モードとは
それに対して、本番モードとは、音楽を経験するモードです。そして、ありのままを受け入れるモードでもあります。
本番モードでは、間違えても気にしません。部分的なことにとらわれないで、音楽全体、ライヴ全体の流れや雰囲気にフォーカスして、その場で起きていることを受け入れて楽しむモードです。
つまり別の言い方をすると、本番モードとは、遊ぶモードです。練習モードが“上手くやる”ことを目指すモードだとすると、本番モードは“ただ楽しむ”モードです。練習モードが過去を反省し未来を志向するモードだとすると、本番モードは今この瞬間に集中するモードだと言えます。
もちろん、ライヴで間違えても問題ないと言っているのではなく、それは本番後にまた練習モードで取り組めばいいことであって、ライヴ中に気にすることではない、という意味です。ライヴ本番中に努力したり上手くやろうとしても、それで良いパフォーマンスが生まれるわけでもないし、むしろ自分の集中力やエネルギーが“目標とのズレ”や“失敗したこと”に向いてしまって、良いパフォーマンスからは遠ざかってしまうのではないかと思います。
だから、いったんステージに上がったら本番モードに切り替える必要があります。とはいえ、慣れていないと、そう簡単に精神状態を切り替えることはできないですよね。週に何日も本番があるような人だったら本番モードを実践する機会もたくさんありますが、多くの人にとって本番の機会はそんなに多くないと思います。だから日ごろの練習の中で、本番モードで演奏する時間を作っておくと良いです。練習モードで音楽に向き合う時間も大事ですが、それとは別に本番モードで音楽を楽しむ時間を意識的に作りましょう。 ではどうやったら本番モードに切り替えられるか。これはまた別のテーマで、人によっていろいろ違いがあると思います。自分はどうやったら本番モードになれるか、これはほかの人の経験談などを参考にしつつも、自分で探っていくしかありません。そのためにも、日々の練習の中で本番モードの時間を作っておきましょう。石村順でした!
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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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