NOTES
“約3分”でベース上達にまつわるさまざまなトピックを解説するYouTube動画連動の連載『石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜』。第165回は“ベース・ライン作り”について、必ずやるべき具体的な第一歩を解説していきます。
音楽理論を学べば作れる?
ベース・ライン作るのって、楽しいですよね~! でも、特に始めたての頃は、インスピレーションも湧かず、かといって頭を使って構築することもできず、どう作ればいいかわからないことも多いでしょう。
音楽理論を学べば作れるでしょうか? もちろん理論はある程度学んだほうがいいです。僕もビギナーの頃、リットーミュージックの音楽理論の入門書で勉強し始めました。ただ、“理論を学んだら良いベース・ラインを作れる”というわけではないんです。
良いベース・ラインを作れるようになるには?
結論から言います。耳コピーしまくってください。
英語の勉強に例えると、文法を勉強しただけでは“生きた英語”は話せないですよね? 英語で自分を表現したいなら、実際にネイティヴが使うフレーズやイディオム、単語をたくさん身につけるのが、まず基本です。
音楽も同じ、ベース・ライン作りも同じです。
良く使われる基本的なフレーズをたくさん身につけてください。そのフレーズを理論で分析して理解すると、それが“フレーズ作りの材料”になります。これを文脈に応じて再構築すれば、自分なりのフレーズが作れます。料理を作るのと同じで、フレーズを作るには材料が必要なんです。材料を集めるには、“耳コピー”が最適なんですね。
耳コピーはメリットだらけ
耳コピーには、ボキャブラリーを増やす以外にも利点がたくさんあります。
耳が鍛えられます。指板のことがわかってきます。見落としがちなディテールに気づくようになります。音楽そのものへの理解が深まります。
つまり、耳コピーすればするほど音楽家として成長します。だから絶対やってください。
「耳コピーをすると誰かに似てしまう」「自分らしさがなくなる」と心配する人もいますが、たとえ完コピしたところで、そう簡単にそっくりにはならないので心配無用です。それに、自分らしさは放っておいても必ず演奏に出ます。だから、気にせずに幅広く耳コピーを続けてください。
“材料集めとしての耳コピー”の第一歩
まず、“ベース・ラインを作ろうとしている曲”のグルーヴを特定します。ジャンル、あるいは曲調と言っても良いです。スウィング・フィールなのか、ロックンロールなのか、R&Bなのか、ファンクなのか、パンクなのか、レゲエなのか。わからない場合は、作曲した本人がイメージしている参考曲があるかどうか、確認しましょう。
次に、“ベース・ラインを作ろうとしている曲とグルーヴ/ジャンル/曲調/テンポが似た参考曲”を、自分が知っている曲のなかから何曲か探してください。楽器編成も近いほうがいいです。キーは違って大丈夫です。もし見つからない場合は、同じジャンルの曲をいろいろ開拓して探しましょう。
特定の曲のベース・ラインを作ろうとしていなくても、材料を集めておけばいつか役立ちます。耳コピー初心者は、なるべくハードルが低めの曲を選びます。テンポが速すぎず、ベースがシンプルで聴き取りやすい曲が良いです。
で、その曲を耳コピーします。
そして、譜面に書き起こしてください。ここ、大事です。

耳コピーすることを英語では transcribe と言います。書き写す、書き起こすという意味です。フレーズを採った後に分析するには、譜面に起こしていろいろ書き込むのが効率良いです。ベース・ラインを作れるようになりたいなら“譜面に書き起こす”ところまでが耳コピだと思ってください。
「譜面なんて書けない」という人も、いい機会だから取り組み始めてください。手を動かして書いているうちにだんだん読み書きできるようになっていきます。
フレーズを耳コピーして譜面に起こすのは、はっきり言って手間です。それを乗り越えるだけのパッションが湧く曲を選んでください。本当に好きな曲なら、耳を使って、手を動かして、感覚を研ぎ澄まして、頭を使って、その曲のエッセンスを搾り取るつもりで耳コピーしてください。
耳コピーしたフレーズを材料にして自分なりのフレーズを作る方法は、次回以降に見ていきましょう。
石村順でした!
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石村順
◎Profile
いしむら・じゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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