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BM DISC REVIEW – BASSMAN’S LIBRARY – 2023 April
2023年4月にリリースされたアルバムから、注目作品のディスク・レビューを公開。
『72シーズンズ』メタリカ
“血染めのハンマー”で頭をぶっ叩かれるような超アグレッシブ作
12枚目となる新作アルバム。タイトルが意味する“人生最初の18年間”の名のとおり、メンバーが若かりし頃に影響を受けたNWOBHMのような、骨太なリフ群で構成された楽曲が並ぶ。感じるのは“洗練”より“無骨”。ロバート・トゥルヒーヨの歪みを強くしつつ太さも感じさせるベース・サウンドは、作品の音像に大きな影響を与えている。そしてときにタイトにときにグルーヴィに曲を支え、“ラーズ印”がついた特徴的なフレージングのドラムと織りなすプレイはまさに強固。メタル・シーンで“最強”の名を掲げられるリズム体のひとつだろう。1stアルバム『Kill ‘Em All』(1983年)から40年、ここに来て“血染めのハンマー”で頭をぶっ叩かれるような超アグレッシブな作品を作ってくるとは……嬉しい驚きだ。(辻井恵)
◎作品情報
『72シーズンズ』
メタリカ
ユニバーサル/UICY-16145
発売中 ¥2,860 全12曲
◎参加ミュージシャン
【ロバート・トゥルヒーヨ(b)】ジェイムズ・ヘットフィールド(vo,g)、カーク・ハメット(g)、ラーズ・ウルリッヒ(d)
『Ninth Peel』UNISON SQUARE GARDEN
さまざまなジャンルを融合して独自の魅力を創出した意欲作
洗練感とロック・テイストを絶妙にミックスしたナンバーを軸にしつつ、ホーン・セクションをあしらった華やかな②やファンクが香る③、穏やかなミディアム・チューンの⑤、せつないバラードの⑧など、振り幅の広さを遺憾なく発揮。多彩さと各曲の世界観の深さが相まって、非常に密度の濃い一作に仕上がっている。ベースも充実していて、歌メロをより引き立てるカウンター・メロディやスラップを織り交ぜた④、⑥⑦のしなやかなウォーキング系フレージング、重厚かつファットなトーンなど聴きどころは満載。ベースが強い存在感を発することでバンド外の音が鳴ってもトリオ・バンドらしさが失われないというベースの在り方が光っている。(村上孝之)
◎作品情報
『Ninth Peel』
UNISON SQUARE GARDEN
トイズファクトリー/TFCC-81008(通常盤)
発売中 ¥3,080 全11曲
◎参加ミュージシャン
【田淵智也(b)】斎藤 宏介 (vo,g)、鈴木貴雄 (d)
『贅沢』NEE
躍動する演奏がサウンドの軸を担う2nd作
ボカロPとしても活動する“くぅ”を擁し、2021年にメジャー・デビューしたNEE。その人気のゆえんはロックにとどまらない多元的なサウンドにあるが、アンサンブルが乱雑にならないのは、かほのアグレッシブなプレイが軸となっているため。軽快なドラムとコントラストを生むように、サウンドに重厚感をもたらすベース。ソリッドな音色と随所にちりばめられたメロディアスなフレーズは常に存在感を放っている。一方、⑦ではハイ・ポジションを駆使して繊細なプレイを展開したり、③⑤⑭のようにときにシンプルに演奏したりと、足し引きの妙も感じさせる。あくまで“歌を生かす”というベーシストとしてのスタンスが全篇にわたって表われた一枚。 (神保未来)
◎作品情報
『贅沢』
NEE
Getting Better/VICL-65807(通常盤)
発売中 ¥3,080 全14曲
◎参加ミュージシャン
【かほ(b)】くぅ(vo,g)、夕日(g)、大樹(d)
『The Worm』 HMLTD
ポスト・パンクと技巧的アプローチの衝撃的邂逅
近年のポスト・パンク流行における最重要バンドHMLTDが放つ2ndアルバム。フリー・ジャズ的イントロ、オクターヴ・フレーズを複雑に構築したベース・リフ、そこに絡む2拍目ウラのスネアが鮮烈な変拍子ドラム……先行配信曲の②はアート・ロックと技巧的アプローチが最良の形で邂逅した衝撃作だった。そして明かされたアルバム全貌。聖歌隊やオーケストラなど47人の音楽家を招聘し彼らが描いたのは初期クイーンをも凌駕する “過剰な美学”。トラック数の多い濃厚アレンジのなかでベースは絶妙なバランス感で存在感を放ち、下で堅実に支えながらもリズムを動かす③、音色の変化でドラマを演出する⑤、テクニカルに聴かせる⑧など、多彩な引き出しで聴きどころを作っている。(辻本秀太郎)
◎作品情報
『The Worm』
HMLTD
Lucky Number/ LUCKY161CD
発売中 ¥2,790 全9曲
◎参加ミュージシャン
【ニコ・モーンブラット(b)】ヘンリー・スピカルスキー(vo)、ジェームズ・ドノヴァン/デューク・ピーターマン(g)、アキレアス・サランタリス(d)、セス・エヴァンス(k)