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BM DISC REVIEW – BASSMAN’S LIBRARY – 2022 OCTOBER
『HELLO』ROTTENGRAFFTY
多彩さが世界観を深める好例と言える上質なアルバム
狂騒的な①やダークな歌なかとキャッチーなサビの対比を生かした③、心に染みるバラードの④、ハードネスと耽美感を融合させた⑦⑨など、ROTTENGRAFFTYの豊かな発想力が遺憾なく発揮された一作。多彩な曲調と1曲1曲の鮮やかさを両立させた手腕は実に見事で、ジャンルを超えて幅広い層のリスナーにアピールする好盤に仕上がっている。ベースはカウンター・リフを配した①や16ノリのグルーヴで楽曲の疾走感を増幅させている②⑦、キレの良さが心地いい⑥、ドライブ感に溢れた⑧など、楽曲に寄り添ったプレイやサウンド・メイクを披露。主張するタイプではないのに強い存在感を発するという職人的なベースの魅力を堪能できる。(村上孝之)
◎作品情報
『HELLO』
ROTTENGRAFFTY
Getting Better/VICL-65721(通常盤)
発売中 ¥3,300 全9曲
◎参加ミュージシャン
【侑威地(b)】NOBUYA/N∀OKI(vo)、KAZUOMI(g,prog)、HIROSHI(d)
『from JAPAN 3』Tempalay
ベースのリアレンジが象徴する、Tempalayの現在地
サイケデリックな音像のなかで、メンバーが持つそれぞれのクリエイティビティが独自のサウンドを生み出すTempalay。本作は彼らのインディ時代の楽曲を現在の解釈でアップデートしたアルバム。サポートとして参加する高木祥太(BREIMEN)のベースは、細かい休符を駆使したファンキーなノリと、サビのウネるプレイが混じり合う②、ベースを2本使い、なめらかなグリスと和音でより怪しげな雰囲気を醸し出している③、ボトムで蠢くドープなラインから一転、間奏のハイ・ポジションでのフレーズと、ギターとユニゾンしたシンセ・サウンドに度肝を抜かれる⑨など、ベースシスト興奮必至のフレーズが随所に盛り込まれている。(座間友哉)
◎作品情報
『from JAPAN 3』
Tempalay
ワーナー/WPCL-13429(通常版)
発売中 ¥3,080 全10曲
◎参加ミュージシャン
【高木祥太(b)】小原綾斗(vo,g)、藤本夏樹(d)、AAAMYYY(cho,syn)、吉田雄介/宮坂遼太郎(per)、真砂陽地/松井秀太郎(tp)、他
『33』DIMENSION
自在に表情を変える、フュージョン・ベースの“教科書”
2022年にデビュー30周年を迎えたJフュージョンを代表する彼らの新作には、須藤満と二家本亮介という百戦錬磨のベーシストが参加し、インストゥルメンタルの最高峰とも言える圧巻のアンサンブルが凝縮されている。シンコペする拍の合間に切り込む歯切れいいスラップが爽快な①、音価を巧みに操り4分のドラムと絡み合う⑥といった須藤のプレイ。しっとりとメロディアスにフレーズを聴かせる③、予測不能なキメの連続のなか、唐突に16分の3連、ウォーキングを入れ込む⑦といった二家本のプレイなど、思わず低音の足取りを追いかけてしまう。フュージョンというジャンルにおけるベースのおもしろさを再認識できるベーシスト必聴盤だ。(加納幸児)
◎作品情報
『33』
DIMENSION
ZAIN/ZACL-9132
発売中 ¥3,300 全10曲
◎参加ミュージシャン
【須藤満/二家本亮介(b)】勝田一樹(sax)、増崎孝司(g)、則竹裕之/川口千里/山本真央樹/坂東慧(d)、友田ジュン(k,prog)、他
『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
“あの頃のレッチリ”のその先へ
約16年ぶりのジョン復帰作となった前作に続き2022年2作目となった今作は、再び全18曲収録という大作だ。ジョンの“弾かない”ギターに応じるかのようにフリーのプレイが逆に饒舌になっている点はレッチリ黄金時代のアンサンブルを彷彿させる。しかしながら、ヴァン・ヘイレンに捧げられた④での哀愁ただようベースの和音アプローチやオールドスクールなファンク曲⑥での余裕たっぷりのタメなど、円熟した色気を放つ大人なプレイに今作ではそこかしこで出会えるのが嬉しい。 “あの頃のレッチリ”をやることにフォーカスしていた前作に対し、鍵盤やリズム・マシンの大胆な導入など、新しいバンド像へ踏み出す意志を感じる作品。(辻本秀太郎)
◎作品情報
『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
ワーナー/WPCR-18552
発売中 ¥2,860 全18曲
◎参加ミュージシャン
【フリー(b)】アンソニー・キーディス(vo)、ジョン・フルシアンテ(g)、チャド・スミス(d)
『Quality Over Opinion』ルイス・コール
時代やジャンルを超越した最高傑作
ゆるキャラ超絶ユニットノウワーのマルチ・インストゥルメンタリスト、ルイス・コールの4年ぶり4作目のスタジオ・アルバム。いくつかの曲は自身のYouTubeチャンネルでMVとして発表されていたが、それらがアルバムにまとめられると、彼の頭のなかにある壮大な宇宙観が浮き彫りになってくる。美しいストリングス・アレンジの曲からアコギの弾き語り、70年代や90年代のファンクを思わせるものまで、さまざまなスタイルの曲が楽しめる。サム・ゲンデルやカート・ローゼンウィンケルなどのゲストの起用も的を射ている。とはいえ、ベーシストとしては何と言っても⑤や⑨、⑭、⑮などで聴かれる、センス抜群のベース・ラインに注目したい。(坂本 信)
◎作品情報
『Quality Over Opinion』
ルイス・コール
ビート/BRC710
発売中 ¥2,420 全21曲
◎参加ミュージシャン
【ルイス・コール(b,g,syn,d,k,vo)】クリス・フィッシュマン(p)サム・デンゲル(sax)、カート・ローゼンウィンケル(g)、他