NOTES
華やかな舞台で活躍するプロ・ベーシストたちに、普段は覗くことのできないプライベートな一面を自らの言葉で綴ってもらう本連載。今回は、3人組メロディック・ハードコア・バンド、TOTALFATよりベース&ヴォーカリストのShunが登場!
ポジティブなメッセージを発信し続け、日本中のパンク・キッズたちを熱狂させるShunのライフワークは、愛娘とともに昆虫を通して“生命の神秘”を学ぶという、何とも心温まるものだった。
100体以上のアゲハチョウを
娘たちと一緒に育ててきました。
ついにこの企画が俺にも回ってきたか……と思いつつ、実はテンションが上がっています。どうもTOTALFATのShunです(笑)。さて、俺のライフワークとしてひとつ紹介するならそれは“昆虫”じゃないかなと思い、いざ執筆!
我が家には6歳と4歳の娘がいまして、その娘たちとハマりにハマっているのが昆虫採集と昆虫研究。特に、毎年4月〜10月にオンシーズンのアゲハチョウの飼育と繁殖が我が家の楽しみとして大きな盛り上がりを見せているのです。
暖かい季節になるとベランダにあるみかんの木にアゲハが卵を産みに飛来し、卵を確認したら虫カゴに保護して、孵化~幼虫~蛹~羽化までを家のなかで毎日観察し写真や動画を撮り、生態を研究。
羽化に成功した成体をベランダから空に放つというのを繰り返し、これまでに100体以上のアゲハチョウを娘たちと一緒に卵から育ててきました。


好奇心だけを原動力にわからないことだらけでスタートした飼育も、多摩動物公園の昆虫館に電話したり、昆虫系YouTuberさんにDMで質問したりして“生き物の不思議”に親子で立ち向かって答えを探し、解決できたり成功できたりするとものすごい達成感と貴重な体験で一緒に成長できるんですよね。
大人になると“なぜ?”や“どうやって?”ということに対して目を背けてもなんとなく苦労せずにやっていけることが多いし、面倒なことを後回しにして効率良くタスクをこなすのが当たり前にもなってきたけど、いざ“命”と向き合うとそういうわけにもいかず、娘たちから容赦なく投げかけられる“なぜ?”、“どうして?”が今は自分にとっての大きな勉強の原動力になっています。
アゲハの卵、幼虫、蛹、羽化の瞬間を目の前数センチのところで何度も観察したり動画を撮って何度も見返してみると、その生態の仕組みや身体のデザインに溜息が出るほど感動する瞬間がいくつもあります。
何億年単位で積み重ねてきた進化の結果がここにあり、その生命の連鎖の最前線が今まさに目の前で芽を出しているんだなと思うとものすごくロマンを感じるし、昆虫という小さなサイズの世界に対し、自分の理解と興味の解像度がどんどん上がっていくのを日々感じています。

これって音楽やアート、ことに演奏の緻密さにも通じるところがあって、目の前の演奏や自分のプレイをどこまで解像度高く感じ取るれるか? という価値観も昆虫を見る日々のなかで気付かせてもらいました!
ちなみに今は、秋にGETしたオオカマキリの卵(越冬して来春に孵化予定だったもの)が暖房の暖かさで11月末に孵化してしまい、大量のカマキリを飼育中です(笑)。成虫に育つように頑張りまーす!(※カマキリの卵からは一気に200匹ぐらい赤ちゃんが生まれます)
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【Profile】
しゅん●2000年にメロディック・ハードコア・バンド、TOTALFATを結成。Shunはベース&ヴォーカリストのほか、作詞作曲も手がけている。屈指のライヴ力を武器に、国内のシーンを牽引する存在でもある。2019年10月には15年活動をともにしたKuboty(g)が脱退するも、立ち止まることなく3ピース体制にて活動をスタート。脱退ライヴの翌日に3ピース体制での配信シングルをリリースし、4日後には新体制でのライヴを敢行した。2024年7月には通算13枚目となるアルバム『PURE 40』をリリースしている。
◎Information
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