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    爪が当たっていませんか? 指弾きの再確認【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第34回

    • Text:Makoto Kawabe

    この連載では、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。今回のテーマは、“爪が当たっていませんか? 指弾きの再確認”です!

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    はじめに

    指弾きは一番スタンダードなピッキング方法であり、いかにもベースらしい、太く柔らかい音色が特徴ですよね。

    でも、“なんか自分が弾くと硬い音になるんだよなぁ?”って人、意外に多いんじゃないかと思うんです。

    もしかして爪が弦に当たっているのでは?

    これ、気がついたら早めに治さないと厄介ですよー。

    アマチュア・ベーシストの半数以上は爪が当たっている!?

    指弾きの基礎やコツについては当連載の第5回でお伝えした通りですし、そのなかでも“爪が当たっている”弾き方をNG例として紹介しているのですが、今回なぜまた取り上げたのか。

    それは、筆者がベース講師として接するベーシストさんのうち、あまりにも多くの方が(体感では7割以上)指弾きで爪が当たるという問題に直面するからです。

    特に独学でやってきた方に多い傾向があり、自分では気が付いていない方が本当に多いです。なので、この機会にぜひ自分の指弾きが正しい音色で弾けているのか再検証していただきたく、今回はこの問題にだけフォーカスした次第です。

    そもそも、“爪が当たる”のはなぜNGなのか?

    指弾きの際に爪が当たることで一番大きな問題となるのは指弾きらしい音色にならないことです。

    “爪”が当たるという点ではピック弾きに近い音色をイメージするかもしれませんし、それはそれで良いのではないかと思うかもしれません。しかし実際には指(皮膚の部分)で弾いたあとに爪が当たるためにピッキング・ハーモニクスに近い状態になり、低次倍音の少ない音、つまり低音域が弱く、軽い音色になる傾向が非常に多いです。

    この状態でコンプレッサーをかけると、爪が当たったアタックでコンプレッションがかかってしまい、より低音域が弱く軽い音になりがち(つまり逆効果)です。また往々にして、ピッキングの強弱が安定しないので歪み系エフェクターなども安定してかからず、意図した効果が得られないことが多いです。

    筆者が弾いた音源でその音色を確認してみてください。

    通常の指弾き

    通常の指弾きです。指弾きらしい太く柔らかい音色が確認できますね。

    NGな指弾き①

    爪が当たった指弾きです。耳障りなアタック音が目立っており、音程感も悪く聴こえます。

    爪が当たる方の多くは筆者が弾くよりも弱めのピッキングになるので意図しない音量のばらつきも目立ちがちです。

    NGな指弾き②

    これは番外編ですが、指を弦に叩きつけるような弾き方です。アグレッシブで激しい音色で、どちらかというと指弾きというよりもスラップ奏法の音色効果に近い弾き方です。

    基本的に、強めのピッキングのため音量レベルが安定する傾向にあり、特に歪ませると効果的な弾き方ですが、低音の量感は乏しいのが難点です。この弾き方を良しとするのであれば、爪が当たる問題はあまり気にならないかもしれません。

    なぜ爪が当たるのか?

    爪が当たる原因はシンプルに“爪が伸びているから”という場合も多いですが、それだけではないのです。

    爪を短く整えていても、爪が大きい方や、指先の指の厚みが薄い方、比較的弱めにピッキングする方などは爪が当たりやすく、フォーム修正にも時間がかかる傾向があるように感じます。

    指弾きで爪が当たる現象をもう少し深く検証してみましょう。

    そもそも指弾きは、指先で弦を横方向(弦長と垂直)に引っ張ることで弦をハジく奏法ですが、ただ横方向に引っ張るだけでは弦が指先から離れないので弾けませんよね。

    弦を横方向に引っ張りつつ、弦の張力による反発力を生かして弦を(指の表面で滑らせながら)指先の端部へと移動させ、最終的に弦を解放することで弦がハジかれるわけで、この“弦をハジく”最終局面で弦が爪と接触すると懸案の“爪が当たる現象”が生じるのです。

    図1
    図2

    このことから、指弾きの最終局面で弦から見て爪が見えないように隠せればいいことがわかります。

    ただし、ピッキングの初期段階で弦に触れる指先が先端過ぎ(浅すぎ)たり、弦に横方向の力を加えてから弦が解放されるまでの動き(特に指の表面を移動する弦の動き)がスムーズでなかったりすると、爪が当たりやすい傾向があります。

    特に指の第一、第二関節を屈折させて弦を引っかけるような、巻き上げるようなピッキング・フォームは爪が当たりやすいです。

    このようなフォームは弦の初動がボディと垂直方向になりやすく、これだとマグネティック・ピックアップとエレキ・ベースの構造上の特性からそもそも音色が軽くなってしまう傾向があるため、指弾きの基本フォームとしてもあまり推奨されません。

    巻き上げるようなピッキング・フォーム
    (ピッキング前)
    巻き上げるようなピッキング・フォーム
    (ピッキング後)

    爪が当たらないようにピッキング・フォーム矯正しよう

    指弾きで“爪が弦に当たっている”ことが発覚した方は、一刻も早くピッキング・フォームを修正してこの問題を解消しましょう。

    “親指弾き”で指弾きの音色を確かめる

    まずは爪が当たっていない指弾きの音色を自分の耳で確かめましょう。

    これには親指の腹側で弦を押し出すように弾く親指弾きが最適です。親指弾きは弦に当たる指先の面積が広く、ネック側で弾くことが多いため、通常の指弾きよりも音色が太い傾向がありますが、親指弾きで爪が当たる人はまずいないと思います。

    親指弾きでネック側からブリッジ側まで色々な場所で弦をハジいてみて、爪が当たっていない指弾きの音色ニュアンスを確認してください。

    親指弾き(ピッキング前)
    親指弾き(ピッキング後)

    “爪が当たらないニュアンス”を確かめる

    次に、指板上で3弦をピッキングすることで“爪が当たらないニュアンス”を確かめてください。

    具体的には、2弦と3弦の間の指板の最終フレットに右手の指先の腹部分(人差指か中指)を触れさせ、指先をフレットや指板から離すことなく真横に移動させ3弦をとらえます(写真1)。

    すると弦は指先の表面を滑って徐々にフレットに近づき最終的にフレットに接触するはず(写真2)ですので、そのまま指を移動しきって3弦を振動させます(写真3)。

    指先の腹はフレットや指板に触れたまま”ということを強く意識することで爪が当たらないニュアンスを確認できるのではないかと思います。

    写真1
    写真2
    写真3
    “爪が当たらないニュアンス”を確かめる
    写真1→2→3

    2フィンガー・ピッキングは弦と弦が垂直に交わるイメージを持っている方が多いと思いますが、基本的には手首を少しネック側に寝かせて指先が弦に触れる面積を多くしつつ、指の腹の中心ではなく指の腹と側面の中間付近で弦をとらえたほうが太い音色になりますし、爪が弦に当たる確率も下がると思います。

    また、指弾きの際に稼働させる関節をなるべく弦から遠くする、つまり第一、第二関節はほとんど使わず、指の付け根や手首の関節を動かすことでピッキングするほうが爪が当たりにくくなるはずです。

    指の付け根や手首の関節を使ったピッキング
    指の付け根や手首の関節を使おう
    指の腹と側面の中間付近で弦をとらえよう

    フォームを矯正すると日常生活ではあまり動かさない関節を使うことになって最初は多少の痛みが出ることもあるかもしれません。

    とはいえ過度に無理なフォームは筋や関節を痛める原因になりますし、そもそもあまりカッコよくないので鏡などで自分のフォームを視覚的に確認しつつ、より良い指弾きの音色が出せるように試行錯誤してみてください。

    まとめ

    指弾きで爪が当たる問題、本当に厄介なんですが真剣に解消したければ、まずは現状が望ましくない音色だということを自覚すること、そしてフォームを修正するという強い意志が不可欠です。

    なかなか紙面や言葉だけでは伝えづらいところですので、指弾きを正確に指導できる方によるレッスンやアドバイスも検討してみてください。

    ◎講師:河辺真 
    かわべ・まこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。
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