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『スーパーマリオカート』長期休暇だしブレイクに注目しよう【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第26回

  • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
  • 挿絵:長谷川カオナシ

毎回、レトロゲームの音楽の魅力を、独自の視点で伝えるこのコーナー。今回は、レースゲームの金字塔と言える超名作、『スーパーマリオカート』の音楽をピックアップ。ゲーム内の音楽の”押し引き”に注目して解説しています。

あえて“引くこと”によって、曲の大事な部分を強調!

お世話になっております。

奇数月は喫音堂の月……なのですが、

更新が若干遅くなってしまって申し訳ございません。

投稿頻度を隔月にしたところで結局作業に取り掛かるのが

遅くなってしまうのは私の悪い癖でございます。

“お休み”は日常にもありますが、演奏中にもしばしばそんな機会が登場することがあります。

今回は、楽曲内に於ける“お休み”の上手な使い方に注目してみましょう!

『マリオカート』(1992年/任天堂)(※1)

SFC国内最高売上ソフトです

任天堂で新しいゲームハードが出るたびに、必ずといって良いほど

リリースされる人気シリーズ。

マリオのレースゲームの第一作です。

ゲームを盛り上げるステージBGMはそれぞれ必聴なのですが、

今回は海辺のステージ、「ノコノコビーチ」のBGMを喫音していこうと思います。

レースのスピード感を演出するに当たり

躍動感のある曲の多い本作ですが、

この「ノコノコビーチ」は落ち着いた印象を受けます。

ベース・ラインはボサノバ調。

リゾートのような雰囲気があって良いですね。

楽曲中、伴奏部隊には“ブレイク”と呼ばれる、

所謂“お休み”箇所がいくつかあります。

一度目はメインメロディのリピート(繰り返し)前。

二度目はBメロ的な進行の節目。

最後は曲の最後の部分。

計三回、これらのブレイク箇所ではベースを含む伴奏はお休みとなり、

その間はメロディだけになります。

なぜこのようなアプローチをするのでしょうか?

“メロディ残しのブレイク”というのは、言わば“ヴォーカルにピンスポットを当てた”状態。

こうすることにより、作曲者が注目させたい箇所を

より印象的に聴かせることができます。

「ノコノコビーチ」でのブレイクの箇所に注目してみましょう。

一度目のブレイクの2小節目は「ミファソレードソ」という、曲の冒頭と同じメロディ。

二度目のブレイクは「ソラシファーミド」というメロディ。

最初のメロディと音程は違いますが、リズムと音の流れ方は同じ。

同じような形のふたつのメロディに対して

“ブレイク”という共通の背景を用意することにより、

その相似関係が際立ってきます。

メロディ以外は“お休み”をしているようですが、

実は曲の大事な部分を強調するのに一役買っている。

見習いたい“引き算”ですね!

さて今回は“ブレイク”に関して触れて来ました。

長期休暇の多い夏も上手にブレイクしていきたいものですね。

それではまた再来月までご機嫌よう。

(※1)
^ スーパーファミコンソフトでは国内最高売上げを記録しました。
作曲は岡素世先生、サウンドプログラミングは阪東太郎先生。
全曲収録のサウンドトラックは残念ながら発売されていないようです。

◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

◎Information
長谷川カオナシ
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クリープハイプ
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