NOTES
生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史による、以前本誌にて掲載していた当連載がBM Webにて復活! マニアックなものからビギナー向けのお勉強企画まで、豊富な機材知識を持つ高松がエフェクターを語り尽くします。第5回は、自身のベース・サウンドの根幹となる、高松がプロデュースを務めたあの国産ペダルの魅力を語ってくれた!
1995fx Stomache ache
Bass Magazine Webをご覧の皆さま、ごきげんいかがでしょうか。高松浩史です。
12月。2023年もあと僅かとなりました。
今年はThe Novembersの新譜をリリース(12月6日に発売となりました!)できたり、Petit Brabanconの新譜も出た(6月14日!)し、サポートさせていただいているLillies and Remainsの新譜(7月12日!)も出ました!
そして、ベース・マガジンで再びコラムを書かせていただいたりと、実りの多い年でした。
機材的なお話をすると、正直、新しい機材はそこまで試せていません。新しく何かを求めるというよりは、気に入っている機材の再確認、そして新しい使い方を模索することが多かったです。
今回ご紹介する1995fxのStomache acheもそんな機材のひとつです。
このペダルは、過激なロー・ブースターが欲しくて1995fxさんに製作をお願いをしたのがきっかけで誕生しました。最初の試作機は、僕が想定していた過激でエフェクティブなものではなく、素直でプリアンプ的な要素が強くありました。でもその質感がとても良かったので、トグル・スイッチで低音域の周波数を変更できるようにしてもらい、結果、ロー・ブーストとプリアンプの二役を一台で担えるようなペダルとなりました。その後パーツの差し替えなど、細かく実験をして、僕の好みバッチリに仕上げていただきました。
完成後はプリアンプ用、ロー・ブースター用の、計二台を使用していましたが、最近は歪みに対する考え方が変わってきて、うち一台はそれまでロー・ゲイン・オーバードライブを入れていた枠で使用しています。
僕は基本的な音色として、“クリーン・トーン”、“ほんの少し歪ませた音”、“ハイ・ゲイン・ディストーション”の3種類の音を使用していました。特に“ほんの少し歪ませた音”に対しては、一番使用頻度が高い音色のため、試行錯誤を繰り返してきました。ロー・ゲイン・オーバードライブをかけて、いわゆるアンプっぽい歪みを作るイメージですね。
ただ最近、ふとしたときに、そもそも“なぜ歪ませたいのか”と考えるようになりました。いろいろと考えた結果、“ハイ・ミッドの引っかかりをなくして、音色としての弾きやすさが欲しいから”、そして“アンサンブルで少し馴染ませたいから”という答えにたどり着きました。表現は難しいのですが……。
次に、“だとしたら、オーバードライブで歪ませるのではなく、イコライジングで解決できないか”と考えました。そこで“Stomache acheで作り込んでみたらどうだろう”という考えに至った次第です。
結果としてはとても良い感じになってきています!
そんなこともあって、先月からのThe Novembersのツアーでは、“クリーン・トーン”、“Stomache acheでの音”、“しっかり歪ませたオーバードライブ”、“ハイ・ゲイン・ディストーション”という4種類のトーンを基本にしています。歪みはあくまでエフェクティブなもの、という考え方ですね。
以上、僕の音作りに欠かせないものとなってしまった、1995fxのStomache acheのお話でした。ここまで書いてきて、このペダルの汎用性の高さに驚いています……。
このペダル、“saturation”というコントロールも付いていて、少し歪ませることもできるのです。なので、コントロールはシンプルですが、いろいろな役割をこなせてしまいます。
皆様にもぜひこのペダルを試してみてほしいです。自信を持ってオススメできますので! それでは、今回はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました!
◎Profile
たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からThe Novembersとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。
◎Information
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