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    “テトリス”と“トランス”の相関関係、神秘のテトリスハイ【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第20回

    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
    • 挿絵:長谷川カオナシ

    2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。今回は、言わずと知れた世界的パズルゲームを紹介していきます。

    “テトリスハイ”と“トランス”の共通項

    お世話になっております。

    レトロゲーム喫音堂第20回。

    毎月、基本的に最終木曜日が更新日となっておりますが、今月11日は“ベースの日”とのことですので、やや早い投稿とさせて頂きました。

    11月11日。1が4つ、1が4つねえ……。

    あ、テトリスか!

    そんなわけで今日はテトリスをやっていきましょう。

    『テトリス』(1988年/BPS)(※1)

    テトリス。“ドクターマリオ”や“ぷよぷよ”等といった、あらゆる落ちものパズルゲーム達の元祖であり、歴史あるタイトルです。

    落下してくるI、O、L、S、Tといった形のブロック“テトリミノ”を

    回転、移動させて組み合わせる。

    横一列隙間なく埋めるとその列のテトリミノは消滅する。

    多列同時消しは高得点。

    テトリミノの落下速度は時間経過に伴って高速化する。

    といったシンプルなルールです。

    テトリスに関して、私が昔から気にしている言葉として“テトリスハイ”というものがあります。

    それは以下のような状態のことを指すそうです。

    ・熟練プレイヤーはテトリスのゲーム中、思考が自動化される。

    ・テトリミノの落下速度がいかに高速化したとて半永久的にゲームを続けられる。

    ・その状態のプレイヤーはある種の催眠状態であり、伴って快感も引き起こされている

    昔は“ゲーム脳”と言われてたそうです。

    プロフェッショナルがプロフェッショナルたるパフォーマンスをしている間の脳の状態。

    神秘の世界です。

    私はこの“テトリスハイ”の話を聞くといつも思い出す言葉があるのです。

    それは“トランス”。

    所謂“音楽ジャンル”としても馴染みの深いトランスですが、ここで触れたいのは状態としてのトランスのことです。

    通常とは異なった境地の意識状態であり、

    ・まるで魂が抜けたようになったり、別人の魂が入ったかのようになる。

    ・五感が研ぎ澄まされたり、平時を超越した感覚になる。

    ・ある種の催眠状態のようでもあり、快感も引き起こされている

    等といったことが表れ得るそうです。

    ジャンル名としても存在するように、このトランスは音楽とも密接な関係にあります。

    一定のテンポで短い旋律を繰り返し繰り返し聴くことによって、

    また大衆と一体となって身体を動かし続けることによって、

    聴覚や触覚でインプットされる“反復”は脳になんらかの作用を起こし、“トランス”状態が引き起こされるのです。(※2)

    熟練テトリスプレイヤーが浸る状態“テトリスハイ”。

    音楽リスナーやプレイヤー、ダンサーが浸る状態“トランス”。

    異なる反復行動によって引き起こされる2つの状態はどこか似ている感じがします。

    ここでは深堀りはしませんが、セロトニンやエンドルフィン等の脳内物質が大きく関わっていそうですね。

    テトリスの場合は、長時間のゲームプレイ中に同じ曲を反復して聴くことも関係しそうです。

    さて、テトリスといえば多くの方が思い出すであろうメロディ。

    “コロブチカ”や“コロベイニキ”と呼ばれるロシア民謡が元だそうです。

    今回動画の方ではそちらのベースを弾いてみます。

    「テトリスハイ」の反復行動とかけて、何周にも渡って弾きました。(※3)

    更に”ベースの日”ということで、逆に“ベースを弾かない周”も設けました。

    この連載と絡めて投稿している動画に対して一番多いコメントが、“演奏動画のベースの音量を上げてほしい”というものです。

    いや確かに今振り返ると初期などはベースの音量も小さかったと思いますが、“聴こえてはいるけど認識されていない”というケースもあると思うのです。

    ではここはひとつ、ベース音を抜いて聴こえ方の違いを検証してみよう、という試みです。

    私がエレキ・ベースを弾く際のモットーは“気体である”ということ。

    気体は可視化されないけれど確かに存在し、空間に対して常になんらかの影響を与えています。

    11月11日ベースの日、そういった気体の揺らぎのようなものを楽しんで頂けたら幸いです。

    それではまた来月までご機嫌よう。

    (※1)
    ^ おお元は1984年にソ連の科学者アレクセイ・パジトノフが考案した コンピューターゲーム。派生作品は多岐にわたり、 伴って開発元、発売元もたくさんあります。 そのルーツのせいか、BGMはカチューシャ、トロイカ等ロシア民謡であることが多いです。

    (※2)
    ^ 深堀りはしないけれど、世界各国での踊りを伴うお祭りは トランス状態と密接な関係があるのだとか。 日本でも盆踊りや阿波踊り等のループ動作、太鼓の音にトランス要素が見られます。

    (※3)
    ^ 周ごとにフレーズを変えているので厳密な「反復行動」ではありませんけど。

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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