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【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第19回 – ポジション移動とシフティング
- Text:Makoto Kawabe
ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。今回は“ポジション移動とシフティング”について学びましょう!
はじめに
前回に引き続きフィンガリングの基礎テクニックについてです。といっても今回はフィンガリングそのものではなく“ポジション移動”についてです。
フィンガリングだけでは届かないフレットを押さえる際にどのように移動するか? また、どのように考えて移動するか? ポジション移動の具体的な実践方法はもちろん、その方法論も知っておくと、さまざまな楽曲で役立てることができるはずですよ。
ポジション移動
例えば下記の譜例のように休符を挟まずに大きな跳躍があるフレーズを押弦する方法は、指を大きく開いて(ストレッチして)届かせるか、素早くポジションを移動するかの2択です。
(開放弦や異弦同音を使って工夫すれば困難なフィンガリングを回避できるのでは? という考えもあるかと思いますが、質感を揃えたいとか、前後のフレーズの成り行きでやむを得ずとか、こういったシチュエーションは往々にしてあるかと思いますので、開放弦や異弦同音は考えずに進めます……)。
指を大きく開いてフィンガリングするなら、頑張って各指を目的のフレットに届かせるしかありませんが、手の小さい人はどうしても不利ですよね。
テンポやフレーズ、手の大きさや習熟度によって個人差はあるところですが、やはり基本的には4指3フレット、4指4フレットのフィンガリングで届かない範囲のフレーズは、無理に指を伸ばそうとせず的確なポジション移動で対応したほうが無難だと筆者は考えます。
ミスの可能性が減り演奏が安定しやすいだけでなく、フィンガリングとポジション移動を明確に区別したほうが音名や各音のインターバルを把握しやすいというメリットもあるからです。
休符を挟まないフレーズのなかでポジション移動するなら、移動時に指先を弦から離さないのは当然ですし、音が途切れないように素早く正確に移動することが不可欠です。つまり押弦したままポジション移動するのが原則です。
押弦は弦の真上から垂直に力を加えるのが基本なので、押弦したままポジション移動するのは不可能に思えるかもしれませんが、力の加え方や向き(ベクトル)を変えれば可能です。
押弦を掌の握力ではなくヒジごとネック後方へ引く力で行なうイメージで親指側の力を弱めると、肩を支点として腕を弦長方向に動かすことで押弦したままポジション移動することができるはずです(あくまで肩自体は動かさない)。
とはいえ実際にポジション移動する際は親指はネックから離さず、ネックの真裏の中心軸上に“親指移動用のレールが敷かれている”とイメージしてレールに沿って動かすとポジション移動後のフォームも安定すると思います。
またポジション移動する際は、移動先の各指の位置をデジタルに一発で決める(移動してからじわじわと微調整しない)ようにし、目視する場合は移動する前から移動先のポジションを見るようにすると位置が決まりやすいです。
ポジション移動の過程で止まってしまうとか、一発でポジションが決まらないという人は、押弦の移動の力を加減してみてください。
ちなみにヒジごとネック後方へ引く力で押弦すると親指をネックから離しても問題ないはずですが、この状態で楽器が不安定になる人はフィンガリングする手でネックを支えていることが問題なので、ピッキング側の腕や体の使い方、楽器の構え方を見直してみてください。
シフティングについて
上の譜例のフレーズを4指3フレットでフィンガリングするならば、1小節目は3弦1フレットを人差指、3弦5フレットを(ポジション移動したうえで)小指で押弦することになると思いますが、この際、人差指と小指の間隔はほとんど変えずに1〜3フレットのポジションから3〜5フレットのポジションへと移動するのが良いでしょう。
このようなポジション移動は親指の位置を変更する動作とも言えますね。コントラバスではこのような概念でポジション移動することを“シフティング”と言い、フレットのないコントラバスにおいて、正確な音程を得るためにも欠かせない概念です。
フレットのついたエレキ・ベースでは必要のない概念と感じるかもしれませんが、シフティングの概念を取り入れればブラインドでも(指板を見なくても)ポジションを把握しやすく、ミスの少ない演奏ができるのでオススメです。
譜例には筆者推奨のフィンガリングとポジションを表記していますが、1小節目と2小節目の3弦5フレットのフィンガリングが異なるのは、そのあとのフレーズやフィンガリングの効率を重視しているためです。
フィンガリングやポジションの決定は、前後のコード進行や曲調から導かれるスケール(アベイラブル・スケールと言いますが、広い意味では自分が弾きたいフレーズですね)などを加味して柔軟に対応すると良いでしょう。
最後に
音色や音程、リズムや音価を正確に表現することは楽器演奏の超“キホンのキ”であり、正確なフィンガリングやスムーズなポジション移動の重要性を再認識してもらえたかと思います。
地味なテクニックですが、しっかりと身につけることで基礎的な演奏力がグッと向上するでしょう。