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【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第11回 – ベーシストが知っておくべきコードの知識
- Text:Makoto Kawabe
ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。第11回目のテーマは“ベーシストが知っておくべきコードの知識”です。
今回はコードについての知識を深めましょう。ギターや鍵盤楽器の場合はリズムに合わせて指定されたコードを弾けば伴奏ができるわけですが、ベースの場合はコードの知識を使うことでどんな演奏ができるのでしょう?
まずは、“そもそもコードとは?”というところから解説していきます。前回に引き続き、セッションやオリジナル楽曲を演奏をするうえでは欠かせない知識ですよ。
コードとは何か?
ベースはひとつの音(単音)を鳴らすのが演奏の基本である“単音楽器”ですが、弦は4本以上あるので、同時にふたつ以上の音を鳴らすこともできますね。このように単音楽器でふたつ以上の音を鳴らすことを“重音(ダブル・ストップ)奏法”と言います。また、ふたつ以上の音を積み重ねて鳴らすと“和音”になり、例えばC音/E音/G音の順に積み重なる和音と、F音/A音/C音の順に積み重なる和音は、音の高さは異なるものの響き方は同類であり、各音のインターバル(各音の間隔、音程)も同じになっています。
このようにインターバルが同じ和音を記号化したものが“コード・ネーム”です。コード・ネームは和音の土台となる音を“ルート(根音)”として、ルートの音名とコードの種類が併記されます。また、コードを構成する各音を“コード・トーン(コード構成音)”と言います。
※:“コード”とは本来、和音全般を意味する言葉ですが、音楽を演奏したり学んだりするなかでは“コード”がコード・ネームを意味する場面が多いかと思います。以降の本文中でも“コード”は“コード・ネーム”を意味するものとして表記し、コード(和音)と単音を区別するために、単音には例えば“C音”などと音名に“音”をつけて表記することとします。
ベースにコードは必要か?
先述のようにベースは単音楽器ですから“コードそのものを演奏する”ことは稀であり、やや特殊な演奏スタイルとなります。ただ、それでもベーシストはコードを意識して演奏する必要があります。
それはなぜか? 動きのあるベース・ラインを作るときに最初に意識すべきなのが、コード・トーンだからです。同一時間軸上に縦に積み重ねる(つまり同時に音を鳴らす)“コード”に対して、ベースはベース・ライン上にコード・トーンをちりばめることで横の時間軸のなかでコードを感じさせる楽器だと言うこともできるでしょう。
予備知識:各音のインターバル
コードを学ぶ前に押さえておかなければいけないのがインターバルの知識です。ポピュラー音楽で扱う各音の音の高さは1オクターヴ(※)を12等分した十二平均律で定義していて、隣り合う音のインターバルを“半音”、ひとつおき(半音ふたつ分)のインターバルを“全音”と表記します。また、各音のインターバルは下図のように度数(ディグリー)でも表記されます。
※:1オクターヴは、周波数比2:1で同じ音名となるインターバル。
二度/三度/六度/七度は長短(メジャー/マイナー)の区別がある長短音程、一度/四度/五度/八度は完全(パーフェクト)音程とされ長短の区別はありません。また長短音程、完全音程のさらに前後の音程については増減(オーギュメンテッド/ディミニッシュド)をつけて表記されます。例えば増五度と短六度は同じ音程ですが、コードを形成するうえでは役割や意味が異なるため区別して表記されます。
上記一覧に表記していない増減音程はポピュラー音楽ではあまり用いられません。
また、(音程としての)“メジャー”は英数字では大文字のM/△/Maj、“マイナー”は小文字のm/-/minなどと省略表記されます。会話や表記の上では“M、長、メジャー”や“P、完全”も省略されることが多々あり、前後の文脈から正しい音程を判断する必要があります。当連載では以降の音程を英数字で省略表記することとします。
三和音のメジャー/マイナー・コード
コードのうち、いちばん基礎的で真っ先に覚えるべきなのが、3つの音を重ねてできる三和音(トライアド)のメジャー/マイナー・トライアドです。メジャー・トライアドはRoot/M3rd/P5th、マイナー・トライアドはRoot/m3rd/P5thで構成され、下記のように表記されます。それぞれの違いはメジャー/マイナーの3rdだけですね。言葉の印象どおり、メジャー・トライアドは明るい響き、マイナー・トライアドは暗い響き、という認識で良いかと思います。メジャー/マイナー・トライアドは単にメジャー/マイナー・コードと表記されることもあります。
四和音の主要コード
メジャー/マイナー・トライアドに七度の音を重ねてできる四和音のうち、登場頻度が高いのはメジャー・セブンス・コード、マイナー・セブンス・コード、セブンス・コードの3つです。それぞれのコード構成音と表記方法は下図のとおりです。
マイナー・セブンス・コードはマイナー・トライアドと響きの印象はあまり変わりませんが、メジャー・セブンス・コードはメジャー・トライアドの明るさに加えて都会的でオシャレな響きという印象です。また、セブンス・コードはM3rdが含まれているとはいえ、メジャー系のコードとは趣が異なります。セブンス・コードについては、ここでは詳しい言及は避けますが、とりあえずはメジャーでもマイナーでもない特別な機能を持った“第3のコード”だと思っておくと、今後のコード理論の理解がスムーズになるでしょう(キーワードはドミナント・コードとブルース・コードです)。
コードを意識したベース・ラインのヒント
先述のように、ベースはコードを意識することで動きのあるベース・ラインを構築できますが、闇雲にコード・トーンをちりばめるだけでは良いフレーズは作れません。その手法はまた別の機会に詳しく解説できればと思いますが、いくつかヒントを書いておきます。
・基本的にはルート
ルート弾きからの脱却を目指すとしても、アンサンブル全体のハーモニーはベースがコードのルートを示すことで成り立つので、やはり意識すべきはルートです。ルートは低い音域でこそ真価を発揮しますが、状況に応じてオクターヴ上を混ぜたり、スライドやグリスなどの装飾を施すだけでも動きのあるベース・ラインが構築できるでしょう。
・5thの利用は安パイ
ルートに加えて使いやすいのが5thです。5thの1オクターヴ下(ルートから四度下)も問題なく使えます。ただし、後述のdim/augコードや♭5th/♯5thと表記されるコードではP5thは使わないようにしましょう。
・3rdは全体のハーモニーを意識しつつ
3rdはコードの響きの明暗を分ける重要な音であり、3rdを使うことでベース・ラインにも色が付きますが、主旋(メロディ)が3rdにいることも多く、主旋との調和を意識することが重要です。あえて3rdを弾かないことで全体のハーモニーが際立つこともあります。
・7thは要注意
7thは音程的にルートの半音、もしくは全音下なので、低音域で7thを多用するとアンサンブル全体が濁ることもあります。ベース・ラインでは経過音的(流れのなかで一瞬使う音)に用いたり、スラップ・フレーズのプルでアプローチしたりするのが常套句です。
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