NOTES
1996年から2020年まで24年間にわたりベース・マガジンの人気連載として掲載されていた、かわいしのぶの「ある日の絵日記」が“リターンズ”としてBass Magazine Webで連載中。今回は夏の終わりの絵日記です!
ある日の絵日記 リターンズ
第11回
8月1日、南アルプスでの山歩きを楽しんで、帰りにいつもの温泉に立ち寄った。ここの施設は水風呂が屋外に置かれていて気持ちいいのだが、同行した友人ふたりは“水風呂の良さがいまひとつわからない”とのこと。ならば、水風呂推ッシャーの私にお任せあれと、半ば強引に水風呂案内人を申し出た。“はい、では、息を吐きながら、力を抜いて、ゆっくりと身体を沈めて……ふうう……”と先導する私、続く友。日も暮れて、ほの暗い露天の水風呂に、無表情のまま超低速で沈んでは浮かび上がるを繰り返す三人の女たち。夏が来れば思い出す、かもしれない、この光景。
8月29日、山手通り18時。信号待ちで車を止めていると、ボンネットにバシッと何かが当たる音がして、黒い多角形のナゾ物体が、ペタシ、ペタシ、ブバババババッ、とフロント・ガラスをマッハで這い上がっていった。“何? 何? 何? 何?” 予想だにせぬ一瞬の出来事に情報処理が追いつかず、ぷしゅーと煙を吐き出しながら私の脳みそが叩き出した答えは“今のは黒いメンダコです”だった。たしかに黒いメンダコ以外に考えられなかった。信号が青に変わりアクセルを踏み込む。“黒いメンダコ……ここをのぼっていったから、今車の屋根の上にいるのか……。は!”、風に飛ばされまいと必死に車の屋根に吸い付くメンダコの姿が頭をよぎり、慌ててスピードを落とす。そのまま低速で家まで帰り屋根の上を確認したがメンダコの姿はなかった。悪いことをした。
9月10日、高円寺JIROKICHIにて、3年ぶりとなる自分企画“KURAGE TRAVOLTA 2022”開催。出演:かわいしのぶ(b,vo,司会進行)、葛岡みち(p)、イトケン(d)、小川美潮(vo)、大友良英(g)、坂田明(s,vo)。野坂昭如氏の「マリリン・モンロー・ノー・リターン」は今まで何度もライヴで歌ってきた曲だけれど、この夜はこの豪華メンバー総動員で歌って鳴らしての大団円。MCで、坂田明さんに“野坂昭如さんとお会いしたことはありますか?”とお尋ねしたところ、“野坂さんとは昔、巌流島で何かやったな!”とのこと。“坂田さんと! 野坂さんが! 巌流島に!”という史実だけでステージ客席一同総悶絶。何もかもが楽しかったこの日のライヴ、メンバーの皆さま、ジロキチの皆さま、会場で、配信で、ご覧いただいた皆々様、心からありがとうございました!
『気がつけば 20年目の トラボルタ』
【Profile】
かわいしのぶ●1971年生まれ、東京都出身。高校一年でベースを始める。1991年にSuper Junky Monkeyを結成し、1994年、ソニー・レコードよりデビュー。日本とアメリカを行き来しながら活動を続け、1999年に活動休止。2009年からは3人で活動を再開した。かわい個人は現在、大友良英スペシャルビッグバンド、柴田聡子 in FIRE、坂田明、パンチの効いたブルース&オウケストラ、プノンペンモデル、world’s end girlfriend、bikke&近藤達郎など、ベーシストとして幅広い活動を展開している。カレーが大好き。
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