NOTES
ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。第4回目のテーマは、“ベースの演奏フォーム”。ベースの構え方やフレットの押さえ方、ネックの持ち方の基本を学んでいきましょう。
楽器はどのように弾こうと自由なので“弾き方の正解”はありませんが、“楽に弾けるフォーム”や“基礎演奏力が身に付きやすい弾き方”はあります。この機会にぜひ自分の演奏フォームを見直してみませんか? なお、このページでは右利き用(左手で弦を押さえ、右手で弦を弾く)のベースを前提に書いていますので、左利き用を愛用している人は左右を読み替えてくださいね。
ベースの持ち方、構え方
プロの演奏シーンやベースを持った写真では楽器と身体が正面を向いているように見えるかもしれませんが、実際に楽器と身体を完全に同じ向きに構えて演奏しようとするとほとんどの場合ネックは近すぎ、ピッキング位置は遠くなってしまいます。演奏時には楽器と身体の向きは真上から見て30度~60度くらいの角度を付けたほうが弾きやすいでしょう。
座奏時の楽器の位置はボディの形状に合わせるのがベストとは限りません。あくまで12フレットが身体の中心に来るように楽器の位置を調整するとバランスが良いと思います。筆者の場合はプレシジョン・ベースやジャズ・ベースではボディの高音弦側のホーンを太ももに乗せるイメージです。この際、右足を少しだけ上げてボディを自分側に傾け、太もも、胸、右腕の3点で楽器を安定させています。
座奏、立奏、どちらの場合も左手はあくまで弦を押さえることだけに使うのが理想です。左手ではネックを支えず、なるべく右手と身体全体で楽器の向きや角度を安定させられるとスムーズな演奏がしやすくなるはずです。
弦の押さえ方
“弦を押さえる”ことの目的は“弦とフレットを密着させ、弦の音程を変える”ことにあるわけですが、基本原則は以下の3つです。
①(指板面から見て)弦の真上から押さえる
②フレットのすぐ脇を押さえる
③指の腹で押さえる
順番に解説すると、①については弦を押し上げたり引き下げたりすると正しいピッチ(音程)よりも高くなってしまいます。弦長方向に余計な力(弦を伸ばしたり縮めたりするような力)が掛かると弦の張力に影響しピッチが不安定になります。
②については、各フレットの中間点で押さえると弦を押し込みすぎてピッチが上ずってしまう原因になるほか、フレットのすぐ脇を押さえるのが最も無駄な力を使わずに済み、弦もビビり(弦とフレットがわずかに接触して音が正しく伸びずにひび割れたような音が混ざる現象)にくいはずです。
③については諸説あるかもしれませんが、ベースの場合は指先を立てると音が細くピッチも不安定になりやすいと筆者は考えます。
左手のフォーム
弦の押さえ方については前述の3原則さえ守られていればどのようなフォームでもかまわないと筆者は思いますが(笑)、基本的には①握り込みフォーム、②4指3フレットのフォーム、③4指4フレットのフォームの3種類のフォームがあります(いずれも正式名称は不明ですがだいたいこれで通じます)。
① 握り込みフォーム
その名のとおりネックを握るように弦を押さえるフォームです。一番楽な姿勢で弦を押さえられ、余弦のミュート(弾いていない弦が鳴らないようにする)もできてしまう効率の良いフォームですが、弦やフレットが頻繁に移動するフレーズには不向きです。コード・チェンジが少ないルート弾きに適した、ロック向きのフォームと言えるでしょう。
②4指3フレットのフォーム
人差指、中指、小指によって3フレット分を押さえるフォームで、コントラバスのフォームを応用したものです。薬指を小指のサポートに使うことでフレットの間隔が広い7フレット以下のロー・ポジションでも無理なく弦を押さえられます。後述の4指4フレットのフォームよりもフレットやポジションの移動(シフティング)の頻度が1フレット分多くなりますが、ミスタッチが減りスケールを把握しやすいなど多くのメリットがあります(理由はまた別の機会に解説します)。
③4指4フレットのフォーム
人差指、中指、薬指、小指のそれぞれを各フレットに割り当てるフォームです。フレット間隔の狭い7フレット以上のポジションに適したフォームで、速いパッセージのフレーズにも必須ですね。指をバラバラに動かして各指で押さえるのではなく、押さえる指を増やしたり減らしたりするイメージが理想です。
弦移動
押さえる弦が変わる場合、特に4指3フレット、4指4フレットのフォームの場合は、左手全体のフォームを上下させるのではなく、ネック裏の親指を軸にして肘を身体の前後に動かすことで指先を移動させるのがスムーズです。具体的には低音弦側(動画では5弦)を押さえているときは肘を前に出して手首を押し込んでいる状態、1弦を押さえているときは肘をうしろに引き手首が手前に引き上げられ手のひらが見える状態(1弦を押さえている指先は見えなくてOK)になると思います。この際、親指の位置はネック真裏の中心線上にあるのが理想ですが、左右の位置(人差指~小指の裏)は人それぞれ楽な位置で良いと思います。
左手のフォームに関してはもっとたくさんのノウハウがあるのですが、とてもここには書ききれないので今回はこれで終わりにします。変に力を入れすぎず、楽な姿勢をキープすることが重要ですよ。これは筆者のモットーでもありますが、“美しい音色は美しいフォームから”です(笑)。まずは鏡を見ながら試行錯誤してみてください。