NOTES
1996年から2020年まで24年間にわたりベース・マガジンの人気連載として掲載されていた、かわいしのぶの「ある日の絵日記」が“リターンズ”としてBass Magazine Webで連載中。今回は2月から3月にかけての絵日記です!
ある日の絵日記 リターンズ
第5回
2月某日、地元商店街で買い物中、Charさんにばったり。宇宙一カッコいいロック・スターに“どこ(店)行ってきたの?”と訊かれ、右手に下げていたドラッグストアのレジ袋と、なかの得用箱入りの使い捨てカイロを見せるベーシスト(私)。うなずくロック・スター。デビュー45周年、おめでとうございます!
3月9~11日、梅津和時(as,cl)、マダムギター長見順(vo,g)、岡地曙裕(d)、私(b)というメンバーで東北ツアーへ。福島、仙台と終えて、 最終日3月11日、石巻。ライヴの前にみんなで日和山へ登り、14時46分、海へ向かって黙祷。暖かい春の日差しと穏やかな海。あの日、テレビの画面越しに見たこの場所は雪が舞っていた。目を瞑り手を合わせ涙が出た。夜、ラ・ストラーダでツアー千秋楽。ライヴが楽しくて笑った。くだらないMCに笑った。赤ちゃんがかわいくて笑った。ホヤがおいしくて酔っ払った。石巻に、東北に、これからもたくさん来られますように。
3月某日、絶好の洗濯日和。“よーし、3回は回すぞう!”と張り切っていたのは私だけで、洗濯機は1回も回りきらないうちに水を溜めたまま止まってしまった。コンセントの抜き差し、電源の長押し、あらゆる手段を試みなんとか動いてくれたものの、ふるふると消え入りそうに点滅するデジタル表示は“私はもうダメです……”と涙ぐみながら訴えかける洗濯機の瞳そのものであった。使い始めて12年。御意。買い替え時期だ、わかっている。だがしかし、我が家の玄関から洗濯機置き場へ通じる廊下の道幅半分は、普段壁として認識しているほどに私の機材が積み上げられており、これらを移動させないことには洗濯機をお通しできないのである。イマジン、移動するときを想像してごらんよ。想像したくないです。というわけで、今日も洗濯機を撫でながら電源オン、なだめ、励まし、動いてくれていることへの感謝の意をきちんと声に出して伝えている。今、一番気をつかって話す相手は洗濯機。我が家のヒエラルキーの頂点は洗濯機。
『ブラックな 持ち主許して 洗濯機 』
【Profile】
かわいしのぶ●1971年生まれ、東京都出身。高校一年でベースを始める。1991年にSuper Junky Monkeyを結成し、1994年、ソニー・レコードよりデビュー。日本とアメリカを行き来しながら活動を続け、1999年に活動休止。2009年からは3人で活動を再開した。かわい個人は現在、大友良英スペシャルビッグバンド、柴田聡子 in FIRE、坂田明、パンチの効いたブルース&オウケストラ、プノンペンモデル、world’s end girlfriend、bikke&近藤達郎など、ベーシストとして幅広い活動を展開している。カレーが大好き。
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