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    ゴダイゴのスティーヴ・フォックスが、ミキシング/マスタリングでアマチュア・ミュージシャンを支援

     1970年代後半から1980年代前半にかけて「ガンダーラ」や「モンキー・マジック」「ビューティフル・ネーム」「銀河鉄道999」といったヒット曲で日本の音楽界に大きな影響を与えたロック・バンド、ゴダイゴ。そのベーシストであり、音響エンジニアリングも担当していたスティーヴ・フォックスが、アマチュア・ミュージシャンへの支援として、自身の音響技術と経験を提供するという試みを開始した。

     スティーヴは伝道師になるために1980年にゴダイゴを脱退するも、1999年の再結成からバンドに復帰。現在は牧師の仕事を務めながら、神戸にある自宅スタジオで地元を中心としたミュージシャンたちの音源のミキシングやマスタリングも手がけている。今回の支援は、そういった活動をより幅広いアマチュア・ミュージシャンたちに利用しやすい形で提供するというもので、意欲のあるミュージシャンを応援し、音楽業界全体を盛り上げたいという。

     このたびの活動について、スティーヴにオンライン・インタビューを行なった。

    必要に迫られたエンジニアリングの技術

    ━━今回、このような活動を始めた理由は?

     今の時代は、YouTubeやストリーミング・サービスを始め、アマチュアのミュージシャンでもどんどん作品を発表して、それが評価されるというチャンスがありますよね。ただ、今は新型コロナ・ウイルスでミュージシャンはみんな苦しんでいて、作品を作って何かをしようとしても、お金があまりなくてできないということもあるんじゃないかなと。そういう人たちの力になれたらと思いました。僕は神戸に住んでいるけれども、わざわざここに来なくても、インターネットを通してお互いにやり取りができますし、コストもかなり安くできますからね。ミックスやマスタリングはある程度の経験がないとうまくいかないもので、細かい帯域の調整がわかるまで何年もやらないと、“聴こえてこない”んだよね。いいスピーカーを使えないから聴こえないということもあるかもしれない。世界中のプロに対抗するには、やっぱりわかっている人にやってもらわないと、あの世界に入りにくいんじゃないかなと思うんですよ。

    ━━スティーヴさんはゴダイゴでデビューした1970年代当時から、バンドのエンジニアリングもしていたとか?

     そう。僕とミッキー(吉野)はアメリカで音を聴いてきて、その音がずっと頭のなかにイメージとしてあったんです。でも僕らがバンドを作ってレコーディングを始めた頃、どんなエンジニアに頼んでも、その音にはならなかった。歌謡曲や演歌のほうにはうまいエンジニアもいたけれど、ロック・バンドを録音するエンジニアは片手で数えるくらいしかいなかったしね。僕も若い頃は気が荒っぽかったから(笑)、何人もエンジニアをクビにしましたよ。

    ━━それで自身でやってみようと?

     どうにかしなきゃいけないなと思ってね。最初は卓のところでエンジニアの隣に座って、彼が何をしているのかをずっと見ていたんです。そうすると、あのつまみを動かすと音がこう変わって、あのフェーダーはヴォリュームなんだなとかいうのがわかってくる。“このつまみを触ってもいいですか?”と言いながら手を出して、そのうちに“ちょっと席を代わってもらってもいいですか?”って(笑)。

    ━━エンジニアさんもびっくりしたでしょう(笑)。

     僕らの音楽が良かったからか、エンジニアの人も僕らを尊敬してくれていたし、僕の耳がすごくいいということも言ってくれていたんです。だから必ず、“スティーヴさん、どう思う?”って聞いてくれて、僕が“ここをこうしてみたらどうかな”って答えると、“なるほど!”って感心してくれたり。そういうことを積み重ねるうちに、エンジニアも僕に任せるようになっていったんですよ。

    ━━当時、そんなことをするミュージシャンはいなかったのでは?

     そうですね、草分けみたいなものですよ。僕自身、そういう音響系が好きだったというのもあるね。僕が音響系が好きだってことに気づいたプロデューサーのジョニー野村さんが、ゴダイゴの最初の音源のマルチテープを僕に渡して、“スタジオを借りているから、ちょっと練習してきなさい”と言ってくれたのもいいステップになりました。2日間マルチを回して、いろんな音を作りましたね。

    1970年代にミキサー卓の前で撮影された写真

    ━━実戦でいろんな技術を身につけたんですね。

     そのうち、ライヴ・サウンドまで任されることになりました。会場に入ってPAがセットされたところで呼ばれて、各ホールの音を1時間くらいかけてチューニングすることから始めてね。そこからバンドの音合わせで各楽器の調整をして、ベースの番になると卓のところにベースを持ってきて、そのまま卓にシールドを差し込んで(笑)。エンジニアと相談しながら、1、2曲は卓のところでバンドと合わせて弾いて、これでOKだとなったら僕もステージに上がって歌も入れながら音合わせ。だから本番前になると本当にすごく疲れているんですよ(笑)。

    ━━そんな苦労があったとは(笑)。

     疲れたときにはニンニクのエキスをカプセルに入れて飲むんだけど、一気に10錠くらい飲んでね(笑)。そのうち、メンバーも僕がそういうのを飲んで元気をつけているのに勘づいて、みんな飲むようになった。当時のゴダイゴのコンサートは、なぜかステージからニンニクの匂いがするっていうのが噂になっていたね(笑)。でも楽しかった。いい音を出せたからね。

    ━━そこからどんどんエンジニアリングにも積極的に取り組んでいったということですね。

     完璧にオタクになってしまって(笑)。ドゥービー・ブラザーズやイーグルスが日本に来たときに、彼らがどういうマイクやスピーカーを、どうやって使っているかを双眼鏡でチェックしたりもしていたね。そうやっていろいろと研究したし、現場で試しました。当時の日本のコンサートで一般的に使われていたスピーカーだと高域が強くて、大きな音にすると耳が痛かったから、カタログを見て別のメーカーのものを頼んで使ってみたりね。ゴダイゴのコンサートは音は大きいけど、耳は痛くなく、高域も中域もすごくクリアで音圧がすごいっていう評判にもなりましたよ。

    ━━そうやって重ねた経験を、今回はいろんなミュージシャンたちに還元しようということですね。ミックスをお願いするときに、ベース用のトラックとしてはダイレクトのライン音や、自分なりにプラグインなどで加工した音を送ればいいですか?

     そうですね。プラグインに関してもかなりの種類を揃えてますから、ダイレクト音を送ってもらい、どういう音にしたいかのリファレンスになる曲を教えてもらえたら、そういう雰囲気で音作りをすることができますよ。アンプを使うといい雰囲気が出るなと思ったら、こちらでアンプ・シミュレーターのプラグインを入れた音を混ぜたりもする。そして、僕がミックスしたものを送り返しますから、それに対してどこを変えてほしいかをリストアップしてもらい、また僕が調整をする。それを3回、4回と納得するまで行ないます。ここで大事なことは遠慮をしないということですね(笑)。もしかしたら、僕が作ったミックスに対して、“ここを直してほしい”と言いにくいと感じるかもしれないけれど、そんなことは気にしないで。これは必要なプロセスだし、何度もやり取りすることはいいことなんだってわかってほしいですね。例えば、気に入らなければ、“このベースの音はヒドイよ”って言ってもいい。そんなことで僕は傷つかない(笑)。かえって、そうやっていろいろ言ってくれたほうが僕はやりやすい。

    ━━特にジャンルの縛りもない?

     リファレンスさえもらえたら、ジャンルはなんでも大丈夫。そもそも僕はハードロックのミュージシャンだし、かなりヘヴィ・メタルな音楽をやっている友人の音源を手がけたこともあります。フォーク系の音も好きだし、ジャズ・フュージョンの作品もやりました。あと、神戸はけっこうレゲエのミュージシャンが多いみたいでレゲエもやりましたし、オーケストラでも大丈夫ですよ(笑)。すでに何人かのアマチュア・ミュージシャンの作品をお手伝いしましたけど、すごく喜んでくれてね。ぜひ気楽に声をかけてもらいたいですね。

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     ミックス、マスタリングの依頼や、料金に関する問い合わせは、スティーヴのFacebook(メッセンジャー)からコンタクトしてほしい。なお、日本語で問題なく対応してくれる。

     また、2021年にはゴダイゴでのライヴも予定されているそうで、今年5月に亡くなったギタリスト浅野孝已への追悼も込めた内容を考えているとのことだ。

    ◎Information

    スティーヴ・フォックス Facebook
    https://www.facebook.com/kobesteve

    ゴダイゴ Official HP
    http://godiego.co.jp/godiego/