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【連載:ダークグラスな事情】Vol.2 イガラシ(ヒトリエ)

  • Photo(Gear):Hiroki Obara

モダンなサウンドと豊富な機能を持ち合わせた製品群で、現代のベース・ギア・シーンの中核を担うダークグラスエレクトロニクス。『ダークグラスな事情』は、プロ・ベーシストが愛用するダークグラス製品の魅力を自らの言葉で語る連載企画だ。第2回目となる今回は、攻撃的かつ繊細なベース・プレイを武器に、ヒトリエのほか、多くのアーティストのサポート・ワークも手がけるイガラシが登場。“救世主的な存在”とも語る、サウンドの鍵を握る2機種のペダルを紹介してくれた。

使用モデル
Microtubes B7K (プリアンプ/オーバードライブ)
ALPHA · OMEGA(プリアンプ/オーバードライブ)

僕の音はもはや“B7Kの音”と言っても過言ではないかも。

イガラシのエフェクト・ボード内の先頭に配置されるMicrotubes B7K。
すべての場面においてかけっぱなしで使用されるサウンドの根幹となる一台だ。
LOWとLO MIDSがブーストされているのが特徴で、ミニ・スイッチはそれぞれ、ATTACK:BOOST、GRUNT:FATを選択している。

 ダークグラスに出会うまで、僕はペダル型プリアンプというものを一切使ってきませんでした。素のナチュラルな音が基本で、そこに歪みか飛び道具をかけるかという具合だったんです。もちろん王道とされる機種を試したこともあったけど、当時の自分にはあまりハマらなかった。でもそれだと演奏環境によって出音が左右されることが多く、ラインとアンプで音に差が出てしまったりする。だからラインともアンプとも整合性の取れる、サウンドの軸として使用できるプリアンプを探していたんです。そんななか、“めちゃくちゃ流行ってるプリアンプがある”ということで出会ったのが、Microtubes B7K。試してみたらもう衝撃でした。すぐにレコーディングで使ってみたんですけど、そのまま全曲で踏みっぱなしで録音しちゃいました。僕がダークグラスに屈した瞬間でしたね(笑)。

 Microtubes B7Kは音にエッジが生まれ、フレーズ感やリズム感が出しやすい。音粒の立体感が損なわれないところがドンピシャでした。これこそ僕が探し求めていたプリアンプで、バンド・アンサンブルとの相性もバッチリでしたね。入手して以降、基準の音として常にB7Kが存在しています。竿や奏法を問わずずっとオンの状態で使っているので、僕の音はもはや“B7Kの音”と言っても過言ではないかもしれない。『DEEPER』(2016年)以降、ベースはほぼ全部B7Kがかかった状態で録音していますし。

 セッティングに関しては、ダークグラスはEQの設定帯域が少々腰高ということもあり、LOWとLO MIDSをちょっとブーストさせています。AttackスイッチはBOOST、GRUNTスイッチはFATを選択していて、これは自分のベースとの相性を鑑みた結果ですね。ヒトリエ以外にサポート現場で演奏するときにも使っていますけど、歌モノでも使いやすいですよ。ピッキングの強弱に合わせて適度に歪み感が変化する点も気に入っています。

これを踏むときは“マジで行きたいとき”(笑)。

主にディストーションとして使用するというイガラシのALPHA · OMEGA。
BLENDをフル、DRIVEをブースト気味に設定することで過激な歪みを演出する。ミニ・スイッチはGROWL/BITEともに常時オンの状態で使用している。

 そしてディストーションっぽく、歪みの要素を足したいときに踏むのがALPHA · OMEGA。2017年に入手するまでは、時期によって使う歪みをコロコロ変えていたりと、僕のなかで歪みが定まっていなかったんです。でもこれはすんなり僕のサウンドにハマったし、歪みの成分が自分のプレイにうまくマッチしたんですよね。速いテンポで細かいフレーズを弾いても音粒に歪みがしっかりと引っかかってくれるし、激烈に歪ませられる点も良いですね。

 見てわかるとおり、ALPHA · OMEGAのセッティングは過剰です(笑)。イメージとしては、一番“ジャリジャリ”する感じを目指しました。BLENDはフルテンにしているけど、これはALPHA・OMEGAのブレンドで混ぜるのではなく、外部のブレンダーでドライ音と混ぜて使っているから。EQに関しては、DRIVEを上げてもピッキングのジャリッとしたニュアンスを残すためにTREBLEをブーストしています。“@”と“Ω”の2種の歪みの回路のうち、最初はΩの寄りに設定していたんだけど、いろいろ試した結果、アンサンブルではセンターの位置が一番抜けたんです。どちらかに振り切るよりも、センターの位置が欲しい歪みの感じが得られたんですよね。

 これを踏むときは“マジで行きたいとき”(笑)。だから低域をブーストして迫力を出してくれるGROWLスイッチ、ハイ・ミッドをブーストしてプレゼンス感やギラつき感を表現するBITEスイッチは両方オンにしていて、これによって過激な歪みを演出しています。例えば「ゲノゲノゲ」の曲中にあるちょっとしたベース・ソロとか、そういう目立たせたい部分で使うことが多いですね。

『ゲノゲノゲ』Music Video

 ちなみにヒトリエ以外のサポート現場では、MICROTUBES 900(ヘッド・アンプ)も使っているんです。ダークグラスって、どこかラウドなイメージもあるので、最初は“そういうアンプなのかな?”って思っていたんですけど、帯域に変なクセもなくめちゃくちゃ素直なアンプなんですよ。基本的にクリーン・チャンネルのみの使用ですが、とても使いやすくて気に入っています。

サポート現場にて使用されるMICROTUBES 900(写真:本人提供)。
用途に合わせ、各ツマミには2〜3色のシールが貼られている。

 ダークグラスはスタイリッシュな見た目もそうだし、メーカー側のプロモーションも含め、とてもアイコニックなメーカーだと思います。色がはっきりしているからこそ、みんな一度試してみようって気持ちになるんだと思う。もちろんプレイヤーごとにハマる/ハマらないはあると思うけど、自分にはジャストでハマったし、プリアンプ難民だった僕にとっては救世主的な存在なんです。どんな竿でも効果を発揮してくれる汎用性の高さも素晴らしいですね。この先もずっと変わらず尖り続けていてほしいです。

Specifications

Microtubes B7K

●コントロール:ブレンド、レベル、ドライブ、ロー、ロー・ミッド、ハイ・ミッド、トレブル、アタック・スイッチ、グラント・スイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ、バイパス・スイッチ
●入出力端子:インプット、アウトプット、パラレル・アウトプット、ダイレクト・アウトプット
●電源:DC9Vアダプター
●外形寸法:106(W)×45(D)×120(H)mm
●重量:350g

【価格】オープンプライス(本記事での紹介モデルは廃盤/現行モデルはMicrotubes B7K V2)

お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

Specifications

ALPHA・OMEGA

●コントロール:ブレンド、レベル、ドライブ、モッド、ベース、ミッド、トレブル、グロウル・スイッチ、バイト・スイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ、バイパス・スイッチ
●入出力端子:インプット、アウトプット、パラレル・アウトプット、ダイレクト・アウトプット
●電源:DC9Vアダプター
●外形寸法:106(W)×45(D)×120(H)mm
●重量:350g

【価格】オープンプライス

お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

Specifications

MICROTUBES 900

●出力:900W(4Ω)
●入出力端子:インプット、フットスイッチ・イン、DIアウト、パワーアンプ・イン、パワーアンプ・アウト、スピーカー・アウト
●コントロール:ゲイン、ベース、ロー・ミッド、ロー・ミッド・スイッチ、ハイ・ミッド、ハイ・ミッド・スイッチ、トレブル、ミュート・スイッチ、パッシヴ/アクティヴ・スイッチ、マイクロチューブス・エンジンON/OFFスイッチ、ドライブ、モード・スイッチ、トーン、レベル、ブレンド、マスター、グラウンド/リフト・スイッチ、ポスト/プリ・スイッチ、4Ω/2Ωスイッチ
●外形寸法:267(W)×255(D)×70(H)mm
●質量:2.9kg
【価格】オープンプライス(本記事での紹介モデルは廃盤/現行モデルはMicrotubes 900 V2)

お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

◎Profile
6月17日生まれ。高校時代に吹奏楽部でコントラバスを始め、大学入学後にエレキ・ベースを手にする。2011年にサウンド・クリエイターとして活動していたwowaka(vo,g)を中心に、イガラシ、ゆーまお(d)で前身バンドを結成。2012年にシノダ(g)が加入して“ヒトリエ”として活動を開始し、2014年にメジャー・デビューを果たす。2019年にwowakaが急逝し、シノダがヴォーカル・ギターを担当する3ピース形態となる。2021年2月に3人体制初となるアルバム『REAMP』を発表。2024年6月5日には、デビュー曲の再レコーディング・バージョンを収録した両A面シングル「オン・ザ・フロントライン / センスレス・ワンダー[ReREC]」をリリースしている。イガラシはヒトリエのほかに[忘れらんねえよ]などのサポート活動も行なう。ピザが好き。

◎Information
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