GEAR
UP
おうち練習をアップデート! 小型コンボ/ヘッドフォン・アンプの最新事情 feat. 井澤 惇(LITE)
- #Ampeg
- #BIGHEAD PRO
- #BOSS
- #DUAL CUBE BASS LX
- #FENDER
- #KATANA-110 BASS
- #LITE
- #Mighty Bass 50BT
- #MIGHTY PLUG PRO
- #MUSTANG MICRO
- #NANOBASS X4C
- #NUX
- #Phil Jones Bass
- #POSITIVE GRID
- #RB-108 - ROCKET BASS
- #SPARK
- #WAZA-AIR BASS
- #ヘッドフォン・アンプ
- #井澤惇
- #小型コンボ
- Text:Makoto Kawabe
- Photo:Chika Suzuki
Total Impression
「どの機種も多機能でありながら用途が明確に提示されている」
小型コンボ/ヘッドフォン・アンプの最新事情は井澤の目にどう映ったのだろうか。
音量的にも音質的にも“破綻しにくい”と感じた。
これまで小型コンボ・アンプに対しては、自宅練習用のアイテムとオーディエンスを想定したベース・アンプの中間にあるアイテムだと認識していて、最近は自宅練習にもDTM環境のほうが手軽で便利だし、セッションなどに頑張って持ち出しても音がすぐ破綻してしまうし……という感じで、正直なところ小型アンプの存在意義をあまり見出せていませんでした。ただ、低音って近くで聴くと音程感なく聴こえてしまうし、“距離を取って離れて聴く”ためにもスピーカーを鳴らすことは重要という認識はありました。現在は自宅に制作用のDTM環境を構築していて、日頃のベース練習もそこで行なっており、モニター用のパワード・スピーカーから音を鳴らして演奏と音色を確認しています。
今回久々に最新機種を試奏して強く感じたのは音量的にも音質的にも“破綻しにくい”ということですね。僕が若い頃の小型コンボはすぐに音が割れてしまうものも多かったですが、今は多くの機種が小型サイズでもしっかりとベースらしい音色を出せて、音量もそこそこ出ることが驚きでした。それと、どの機種も多機能でありながら用途が明確に提示されているのが印象的です。演者としてはただ機能をゴリ押ししてくる機材よりも、演者に寄り添い“用途の提案” までしてくれる機種には好感を持ちますよね。今回は小型アンプとヘッドフォン・アンプという別の方向性を持ったカテゴリーを試奏しましたが、どちらを選ぶべきかはやっぱりその人の目的と使用環境によるでしょう。楽屋などで練習したいとか、 家族が寝静まったあとにこっそり練習したいとかならヘッドフォン・アンプ一択でしょうし……。ユーザーとしてはミスマッチを起こさないためにも目的意識をはっきりさせてから機種を選ぶのがいいでしょう。
例えばスタジオで聴き慣れたアンペグ・サウンドを追求したい人には、自宅でもアンペグらしさ全開の音色が堪能できるRB-108はお薦めです。たくさんのエフェクトで幅広い音色キャラクターを楽しめるDUAL CUBE BASS LXやKATANA-110 BASS は、とにかくモニタリングがしやすいですね。アプリとの連携で音を作り込めるのも楽しいし、触りながら新たな刺激を得られそうです。SPARK は音の解像度が素晴らしい。 アプリのUIもワクワクするもので、 制作でも活躍しそうです。これがそのままアンプ・ヘッドとしても使えたらおもしろそう。PJB の製品はどれも高音質で、すでに完成している音像を余すことなく再現することに長けたアイテムだと思います。NANOBASS X4Cはリビングにおいても違和感のないルックスが好き。BIGHEAD PRO は、レコーディング時などにも音質を向上させたいときにプリアンプとして使えるし、エフェクト非搭載ながら音自体が心地よいので弾くのが楽しくなります。アプリのインターフェイスが優れたMighty BASS 50BTとMighty Plug Proは、彩り豊かな音色と手軽さでクリエイティビティを刺激してくれるので、制作に最適なアイテムだと思いました。またオールインワンで完結し、つなぐだけで気軽に音が出る MUSTANG MICRO も用途が明確ですよね。思い立ったときにすぐに弾ける手軽さはありがたいですし、ちゃんとフェンダーらしい音がするのも魅力的です。
3Dの音を聴く経験を積むことは重要。
耳元で鳴るヘッドフォンは物理的に音が近いアイテムですけど、今回試奏したヘッドフォン・アンプはどれも意図的に適度な距離感を持たせている印象があっておもしろいなと思いました。ベースが間近で鳴らないので音程感を聴き取りやすいし耳の保護にも配慮されているのかもしれませんね。バンドマンやベーシストって、リハスタでもステージでも各パートに囲まれて演奏していて、いわば3Dの立体の音を聴いているわけじゃないですか。それに対してデジタルで構築するDTM環境やヘッドフォンの音像はステレオ再生であっても2Dにならざるを得ない面があるわけで、バンド演奏の音像とは明らかな違いがあるわけですよね。今回試奏したWAZA-AIR BASSは3D環境を再現するヘッドフォン・アンプでしたけど、改めてスピーカーを鳴らして3Dの音を聴く環境というのは重要だと気がつきました。アンサンブルのバランス感を養う意味でも日頃から3Dの音を聴くこと、3Dの音を聴く経験を積むことが必要であり、その役割を担えるのが自宅の小型ベース・アンプなのかもしれないと思いました。
【Profile】
いざわ・じゅん●1984年3月23日生まれ、 東京都出身。2003年に4人組インスト・ロック・バンド、 LITEを結成。シャープな演奏によるプログレッシブかつエモーショナルな楽曲が国内にとどまらず話題を呼び、 アメリカやヨーロッパ、アジアでもリリースやツアーを行なう。2022年には DÉ DÉ MOUSEとの新プロジェクト、Fake Creatorsが始動し、 11月にはフル・アルバム『Figure』を発表した。井澤はLITE 以外にもさまざまなセッションやサポートでも活躍。JunIzawaでのソロ名義初のEP 『A New Base EP』を2022年11月にリリースした。
◎Infomation
井澤惇:Twitter Instagram YouTube
LITE:HP Twitter Instagram YouTube
【お知らせ】
現在発売中のベース・マガジン2月号【WINTER】でも、本記事を掲載中!
同号ではメイン特集として1970年代のクロスオーバー・シーンを70ページにわたるヴォリュームで再検証した“革新された低音解釈 70年代クロスオーバー”を展開。そのほか、フェンダー・アメリカン・ヴィンテージII特集、来日公演が来月に迫ったレッド・ホット・チリ・ペッパーズの最新作『Return of the Dream Canteen』でのフリーの奏法分析など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!