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【THE AXES】L’Arc〜en〜Ciel – 2022年5月21日、22日/東京ドーム
- Photo:Reishi Eguma[C-LOVe CREATORS](Equipments)
- Photo:Takayuki Okada、Toshikazu Oguruma、Hideaki Imamoto、Yuki Kawamoto、Hiroaki Ishikawa(Live)
Live Report
2022年5月22日(日)@東京ドーム
虹は雨が止むときにできる。未来への希望を奏でた30周年。
東京ドームのレフトポールからライトポールにまで到達する巨大LEDビジョンとステージ前面を覆うLEDビジョンに、バンドの初ライヴの日付である“1991.05.30”の文字が映し出されたあと、2022へと数字のカウントアップが始まり、同時に、歴代のアルバムジャケットやミュージックビデオがコラージュされた映像で、バンドの30年の歴史を一気に辿っていく。ライヴのオープニングナンバーは、30周年記念シングル第一弾であった「ミライ」。サビではtetsuyaの大きくウネるフレーズが太く響き、2番のBメロでのグリスのニュアンスが、ドームという環境でも存在感たっぷりに伝わってくる。最後のサビ前にはステージ背後に美しい虹が現われた。“ARE YOU READY?”の文字を映し出したステージ前面のLEDビジョンが上昇して、メンバーの姿があらわになって始まった「READY STEADY GO」は、tetsuyaがネックエンドをガシガシと高速ダウンピッキングする突進力が爽快。続く「New World」も、イントロやアウトロでの疾走感とメロディアスさのバランスを取ったベースプレイや、間奏でのハイポジションのシーケンスフレーズなど、ベースから耳が離せない。
hyde(vo)の“かわいい声が聞けないのは残念だけど、ハミングしたり、体を使って、楽しんでください!”というMCを挟んで、ダンサブルなビートの「SEVENTH HEAVEN」、ken(g)のシャープな16分カッティングのギターとどっしりとしたベースが対比する「Lies and Truth」へと続く。優美なストリングスの響きとkenの伸びやかなリードフレーズに誘われた「瞳の住人」では、幅広い音域を使ったhydeの歌唱を包み込むような独特の太さを持ったベースの“支え方”と“歌わせ方”のバランスにグッと引き込まれた。
艶かしくも重厚な「X X X」から、L’Arc〜en〜Cielの妖艶でダークな世界へ。針葉樹林を思わせる映像と、七色の発光パターンを持つ公式グッズ“バットマラカスライト”が客席を緑に染めた「fate」は、イントロでの横揺れを生む音が途切れないウネりのベースリフが強烈。教会音楽的なオルガンと幽幻なギターが響き、前曲から一転して赤の客席で埋められた「finale」は、後半に行くにしたがってエモーショナルになっていくhydeのヴォーカルを、ベースは支えながらも随所でツインヴォーカルのように歌わせる。ビジョンに稲妻や雨の映像が映し出され、雷鳴のSEが鳴るなかkenがギターソロを奏で、「MY HEART DRAWS A DREAM」のフレーズが弾かれると映像が晴れわたっていく。心が浄化されるようなkenのトーンは、まさに一聴して彼とわかる個性的なもので、その“一聴してわかる個性”はhydeの歌声はもちろん、yukihiro(d)のドラム、tetsuyaのベースプレイにも共通するものだ。しかし、言葉では簡単に表現できるが、実際にそれを鳴らせるかといえば、そうではない。全員が独自の音色を持っているという点で、L’Arc〜en〜Cielは希有な存在のバンドだと言える。
kenのMCのあと、エンジンの音が会場に鳴り響いて「Driver’s High」へ。ここからは前セクションのアーティスティックな側面とは真逆のロックンロールセクションだ。メンバーも、kenはステージ上手の先端まで駆け出し、ステージ下手に向かったtetsuyaとhydeは、後半のサビに入るタイミングで同時にターンを決める。映像ギミックでも盛り上げた「Pretty girl」、破壊的なファズサウンドでのベースソロパフォーマンスを冒頭に配した「STAY AWAY」、イントロのリードベースが痛快に駆け抜ける「HONEY」で、会場に熱く開放的な雰囲気が満ちていく。
その熱気が冷めやらぬなか、ステージ上には揺らめく松明が灯され、燃え盛る茨の映像がスクリーンに映された「いばらの涙」へ。“戦火”を想起させる歌詞を持ち、L’Arc〜en〜Ciel史上でも屈指のドラマチックナンバーであるこの曲で、tetsuyaはボトム感を絶やさずダイナミクスに溢れた演奏で楽曲を高揚させていく。エンディングでその高揚感が最高潮に達すると、黒い旗を手にしたhydeが“1、2、3、Go!”とシャウトして「Shout at the Devil」へ。激しくウネりながら疾走するベースラインで会場にさらなる興奮を巻き起こし、曲終わりではyukihiroがドラムを激しく乱打して、メンバーはステージをあとにした。
ステージのビジョンに、1999年にリリースされたアルバム『ark』のジャケットに描かれていた宇宙船が登場し、優雅に星々の間を巡っていると、アリーナ上空にもリアルな宇宙船が浮遊する。会場をゆったり横断してアリーナ後方へ着陸すると、焚かれたスモークからメンバーが登場し、ステージ後方のサブステージに登った。MCのあと、hydeがおもむろに透明な傘を手にして「Singin’ in the Rain」へ。1998年発表の『HEART』収録の楽曲だが、これまでライヴ披露の機会はほとんどなかったというレア曲に、観客からもマスクのなかで静かな悲鳴が漏れた。全員が椅子に座ってというリラックスした雰囲気のなか、kenはフィンガーピッキングのジャジィな演奏を、tetsuyaはピック弾きでスタッカートや細かなグリスを入れたプレイを披露。楽曲自体はゆったりとしているが、ベースはかなり忙しく細かな表現が目白押しだった。続く「LOST HEAVEN」でもtetsuyaはコーラスをしながら細かな音価調整を聴かせ、hydeがひと言、“平和を願って”とつぶやいた「星空」を経て、ark 号は再び空へと舞い上がった。
“WAVE GAME”という文字が映し出されたビジョンが客席のウェーブを先導し、七色の光が会場を浮き沈みするインターバルを経て、観客間を移動する波がステージに到達すると同時にステージのビジョンに最新曲「FOREVER」の文字が映し出されてスタート。流麗でメロディアスなtetsuya印満載のベースラインが爽やかに光を放つ。続いて、ビジョンに映し出されたバンドロゴが初期のデザインに切り替わると、インディーズ時代の初期楽曲「予感」が披露された。元々は音楽雑誌に付属したオムニバスアルバムへの収録のみで、『DUNE 10th Anniversary Edition』(2004年発表)で正式にアルバム音源収録されたという楽曲であり、ロゴの演出も含めて、古くからのファンにとってはニクい選曲だ。べースアプローチは、太くウネりを持ったものを中心に、エンディングではダウンピッキングによるゴツゴツと直線的な突進力を聴かせた。
「予感」から間髪を入れずに始まった……かに思えた「Blurry Eyes」がイントロの途中で停止する。すると、yukihiroが椅子から立ち上がり何度も頭を下げるという事態に。イントロのフィルインのタイミングがうまく合わなかったということで、完璧主義で知られるyukihiroの貴重な場面に、メンバーも観客も笑顔を投げかけ、会場には温かい空気が流れる。気を取り直して再開された「Blurry Eyes」ではtetsuyaのハズむベースが観客を揺らし、間奏のブレイクではtetsuyaが“やっほー! お元気〜?”と観客に語りかける。“30年も愛されるバンドになれて嬉しいな。ラルクを好きになってくれてありがとう!”という言葉のあと楽曲が再開し、続いてグイグイと前へ押し出してくるベースの推進力が気持ちいい「GOOD LUCK MY WAY」、演奏前にhydeが30年を振り返り、“辛いときに辞めていたら、悲しい記憶だけ、悔しい記憶だけが残るかもしれないけど、乗り越えると、こういう素敵な景色が待ってたんだなと思います。それも皆がいてくれたから、支えてくれたから。連れてきてくれてありがとうございます”と話した「虹」で30周年のアニバーサリーを締めくくった。ボトム感とウネりが絶妙なバランスのAメロ、音価を意識したBメロ、ダイナミックに音の高低差を生かしたサビ、ギターとユニゾンしつつ攻めるDメロと、tetsuyaのベースプレイのうまみが凝縮された「虹」を聴きながら、“虹は雨が止むときにできる”という未来への希望を改めて感じた本公演。全員が去ったステージにひとりで戻ってきたtetsuyaが、再び、“ラルクを好きになってくれてありがとう!”とメッセージして大団円を迎えた。
■2022年5月22日(日)@東京ドーム
セットリスト
01.「ミライ」
02.「READY STEADY GO」
03.「New World」
04.「SEVENTH HEAVEN」
05.「Lies and Truth」
06.「瞳の住人」
07.「X X X」
08.「fate」
09.「finale」
10.「MY HEART DRAWS A DREAM」
11.「Driver’s High」
12.「Pretty girl」
13.「STAY AWAY」
14.「HONEY」
15.「いばらの涙」
16.「Shout at the Devil」
17.「Singin’ in the Rain」
18.「LOST HEAVEN」
19.「星空」
20.「FOREVER」
21.「予感」
22.「Blurry Eyes」
23.「GOOD LUCK MY WAY」
24.「虹」