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AYAが語る坂本慎太郎『ヤッホー』 その謎に包まれたグルーヴ論とキャリアの軌跡に迫る【後篇】
- 取材:辻本秀太郎(ベース・マガジンWEB)
- 人物写真:Carl Lindeberg
- 機材写真:八島崇
本記事ではAYAのインタビュー後篇をお送りする。
インタビューの前篇はこちらから。
2小節や4小節のフレーズのなかに1曲ぶんのメッセージというか、宇宙が入ってる感じがするんですよね。
——リハスタでは、バンドのグルーヴを作っていったイメージでしょうか?
グルーヴをどうやって出すか、ということを延々やっていた感じですね。今もやってるという気はしますけど、今回のアルバムで、ようやくほんのちょっとした手応えみたいなものはあった気がします。
——どういう試行錯誤をしていたのでしょう?
ベースの音作りをずっとやっていました。ピックアップも、これで3個目で。ドラムとベースって、同時に音を作っていく必要があるじゃないですか。棲み分けというか。例えば、キックの張り具合とベースのピックアップや弦を、同時に考えていきたい。そこがグルーヴに影響するので、時間がかかっていました。もちろん、この曲のこのグルーヴはどうやって、どういうタイム感でやっていくか、みたいなのは常にあるんですけど、そこを正確に提示するには音色が大きく関わってくる。
——そういったリズム体のディレクションをするのは坂本さんなんですか?
そうですね。坂本さんには全部見えていて、それを私たちがどう解釈するか、というところから入っていく感じです。坂本さんが言うのは、“ちょっとサラッといき過ぎちゃってますね”とか、“ちょっと引っ張りすぎですね”とか、こちらの自発性を促すような、音楽的に探ることを楽しめるような言い方で。それを受けて直しながら、また確認してもらって、という感じです。
——フレーズはデモにどれくらい忠実に演奏するんでしょう?
ベース・ラインを変えることはないです。菅沼さんも、デモをかなり忠実に再現しています。レコーディングでは、シンバルを抜いたりもしていて、あまり演奏者の感情が露わにならないような演奏になっている印象です。手癖に行かないで、その手前で緊張感をキープさせるような感じというか。ちょっとやりにくいくらいの感じ。その感じ自体が、グルーヴになっているような気がします。
——坂本さんがスタジオでよく言うこと、などはありますか?
“ドラムとベースはひとつでいて”って、リズムの一体感のことはよく言われます。当たり前のことかもしれないんですが、改めて意識してやろうとすると、とても難しい。まず自分の位置をもっと正確に伝える必要があることに気づくし、音楽の聴こえ方も変わりました。
——リズムの一体感を出すために意識していることは?
ベースとドラムが、うまく棲み分けられるように音作りしていくと、音の存在する位置も変わってくる。ちょっと前なのか、うしろなのか、ジャストなのかをしっかり提示しようとすることで、グルーヴし始める、坂本さん独特の隙間ができてくる。その隙間で受け手が自由に思考できるのが、坂本さんの音楽の魅力のひとつだとも思うので。
——新作『ヤッホー』では、デモが来たのはいつ頃でしたか?
2024年の年末のリハーサルで、10曲入ったCD-Rを渡されて。そこから4ヵ月くらいスタジオでリハーサルをして、レコーディングしました。

zelone records
ZEL-029
——「おじいさんへ」は、メインのベース・リフの半音の動きがすごく印象的です。
あの曲は、坂本さんがギターで“こんな感じで”って運指を見せてくれて。確かにそういう風に弾くと、あの感じになるんですよね。あそこはスライドで弾いてるんですけど、スライドの仕方にもフレーズによってそれぞれ独特な特徴があります。
——印象的なフレーズが多いのは、そこを厳密に再現しているからなのですね。
坂本さんの曲って、2小節や4小節のフレーズのなかに1曲ぶんのメッセージというか、宇宙が入ってる感じがするんですよね。だから、1曲ぶんの集中力でそれを作りたいし、それをキープしたまま運んでいくような感覚。ある意味すごくヒップホップ的だと思います。で、そのベースとドラムにギターが乗って、さらに歌が入ると、ぐっとドライブしていく。あの歌唱法で歌が乗ることで、グルーヴしていくんです。
——AYAさんの右手の奏法についても教えてもらえますか?
坂本さんのデモは、親指でベースを弾いていて。だから親指で弾いたほうが近づくんですけど、私は親指で弾くのが得意じゃないので、そのフレーズを一回親指で弾いてノリの感じを確認してから、2フィンガーで弾いています。
——「脳をまもろう」はギロのリズムが印象的ですが、パーカッションなどの録音のタイミングは?
ベーシックのあとです。いつも基本的に、ベースとドラムを最初に録ります。ギターと歌もガイドとして一緒に演奏していて。歌はその時点では歌詞が決まっていないこともあります。歌詞は、ある日突然乗ってくるので。いきなり来ると、本当に倒れそうになります(笑)。完全に腑に落ちるんですが、腑に落ち過ぎて、何かに撃たれたような感じになるというか。毎回それくらいの衝撃がありますね。
——仮歌はどんな感じなんですか? 日本語っぽいのか、英語っぽいのか。
どっちでもないですかね(笑)。でも、歌のグルーヴとドライブ感はその時点で仕上がっていて、それを崩さない歌詞が、あとからやってくるんです。
——「ゴーストタウン」のベースは、ボトムで支えるようなアプローチですね。
すごく難しかったですね。音符の長さ、音が入るところ、切れるところをすべて気をつけたい。音符と休符を同じ意識で弾くような感じでした。楽曲ごとの音色は、ミュート用のスポンジの量と、マイクプリ(アルテック製1567A)で調整しています。
——「時の向こうで」も、ベースの音価をすごく丁寧にコントロールされている曲という印象です。
音符の長さが仕上がるまでは、坂本さんに確認することもあります。“ここはもうちょっと短いですか?”みたいなやりとりをしながら、私の確認で明らかになってくる部分もあると思います。リズムにおける音の長さの提示は、ベースの役割だから。
——「麻痺」はリフ中心の曲ですが、こういったフレーズを繰り返すプレイで意識していることはありますか?
“ドライブさせるか、させないか”の塩梅ですね。ほかの曲もそうですけど、同じようにキープしていくとはいえ、“ここで一度突っ込んで、次でまた戻す”みたいなコントロールはあります。歌のドライブ感に乗りながら、それをあと押ししたり、ちょっと早めに入って歌を待ったり。曲の構造はヒップホップ的だけど、そういうやりとりは、毎回のループのなかで起きていますよね。
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Profile
AYA(あや)◎90年代にHOUSESIDEのベース兼ヴォーカリストとして活動後、2001年にOOIOOへ加入。OOIOOは1995年にボアダムスのYoshimiOを中心に結成された演奏集団で、1997年にポリスターよりメジャー・デビュー。これまでに8枚のオリジナル・アルバムほかを発表している。元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎バンドのメンバーとして、ライヴをはじめ『ナマで踊ろう』(2014年)、『できれば愛を』(2016年)、『物語のように』(2022年)、『ヤッホー』(2026年)のレコーディングに参加。ほかにも滞空時間、SURFERS OF ROMANTICAなどで活動。
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Information
『坂本慎太郎 LIVE 2026 “Yoo-hoo” ツアー』の開催が決定!
初の仙台公演を含む、神奈川、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄の全国7都市で開催! 坂本慎太郎BANDのメンバーは、坂本慎太郎 (g,vo)、AYA(b,cho)、菅沼雄太(d,cho)、西内徹(sax, fl)。詳細はこちらから。
OOIOOがライトニング・ボルトとのスプリットLPを4/24にリリース!
AYAがベーシストを務めるOOIOOが、米ノイズ・ロック・デュオ“ライトニング・ボルト”との初のスプリット作品『The Horizon Spirals / The Horizon Viral』を、米Thrill Jockeyより2026年4月24日にリリースする。詳細はこちらから。
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