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    【誰でもわかる! 低音理論のオハナシ】第7回 – “コード最終篇”

    • Text:Takeshi Yamaguchi

    これまで長らく学んできたコードのお話もこれで最後。今回は前回に続いてテンション・ノートの補足事項を学んでいこう! よく出てくる言葉なので、しっかり理解しておこう。

    “ナチュラル”vs“オルタード”

    今回は“コード最終篇”ということで、“テンション・ノート”を中心に、コードに関する事柄をまとめてみる。ちなみにこれまでも何度か述べてきたことだが、少しでもあやふやな部分があったら、これまでの回を読み返して確実に把握しておこう。

    では早速、次の問題で、前回の内容がしっかりと把握できているかどうか、復習をかねてチェックしてみよう。

    【問題】“ナチュラル・テンション・ノート”と“オルタード・テンション・ノート”には、それぞれどんなものがあるか述べよ。

    言葉だけ聞くと、なんだかいかにも難しそうな印象を受けるかもしれないね。でも、前回説明したとおり、“テンション・ノート”のなかで、変化させない自然なものと、変化させたもの、という区別がわかっていれば難しくはないはずだぞ。ちゃんと覚えているかな?

    【答え】

    “ナチュラル・テンション・ノート”は、9th、11th、13th

    “オルタード・テンション・ノート”は、♭9th、♯9th、♯11th、♭13th

    思い出してくれたかな? まだちょっと自信がないという人は、【譜例1】を見ておさらいしておこう。

    まず、○の音符で表わしたものが、四和音で用いられる基本的なコード・トーンだ。そして、そのオクタープ上の音域に●の音符で表わしたものが“テンション・ノート”。さらにこのなかで、♯や♭がついて変化したものが“オルタード・テンション・ノート”で、変化しないものを“ナチュラル・テンション・ノート”と言うんだったね。ここまでは前回のおさらいで、ここからが本題だぞ。

    テンション・ノート番外篇

    ⚫︎“サスペンデッド・ノート”

    ところで、前回の最後で“補足”を今回述べると書いたが、それが今回の主題である“サスペンデッド・ノート”(sus~ )“アッディッド・ノート”(add~ )というものだ。

    まずは“サスベンデッド・ノート”(sus)だが、これは“掛留音”のことで、前のコードの一部から引き継がれたコード・トーンが、次のコードではコード・トーンではない場合にこのように言われ、その代表的な例が4度(4th)の音、すなわち“sus4”(サス・フォー、サスベンデッド4th)というわけなんだ。文章にするとすいぶんややこしいが、実はこれは非常に多く用いられる音なので、ここでしっかりと覚えておこう。では【譜例2】を見てもらいたい。

    譜例の“G7”のコード・トーンの“7th”にあたる“F”は、次のコード“C”ではコード・トーンには含まれない音だよね。このような場合の“F”のことを“サスペンデッド・ノート”と呼び、特にこの例のようにコードの4度の場合を“sus4”というわけ。

    ちなみに、この“sus4”の音は、次にメジャーの3rd(長3度)に降りることで解決するという流れが最も基本的だ。これまでこの理屈をよく知らなかったとしても、この和音の流れはきっと耳にしたことがあるに違いない。それほど高頻出の音というわけだ。

    ⚫︎“アッディッド・ノート”

    次に“add”(アッディッド)だが、これはディミニッシュ・コードのときにテンション・ノートとして用いられる音を、これまでの一般的なテンション・コードのようには表記せず、“付加音”(add~ )として表わす、というものなんだ。

    例えば【譜例3】のようにコードが“Cdim”の場合、“C”をルートとして見ると9thにあたるテンション・ノート“D”の音を加えたとき、“Cdim(9)”とはせずに“Cdim(addD”と表わす、ということ。なぜディミニッシュのときだけそんな面倒なことをするのかというと、ディミニッシュ・コードというのはすべての構成音が短3度という音程で成り立っているので、そのすべての音がルートとして成立する、という特殊な性質があるからなんだね。

    つまりこの場合、“C”から見れば“D”の音は“9th”だけど、ほかの構成音から見るとそうではなくなるために、度数で表わさずに音名で“この音を付加しますよ”と表記するわけなんだ。ややこしいね。でも、大切なことだから覚えておこう。

    ちなみに“add”にはもうひとつ別の用い方もある。実は一般的にコードを表記する際、右側に数字を記した場合は“その数字に至るまでのコード・トーンや、ナチュラル・テンション・ノートを含める”という暗黙の了解があるんだ。例えば【譜例4】のように、“C13”と記された場合には“C+7th+9th+13th”ということを表わしているわけ(11thは性質が異なるので含めない)。

    同じように“C9”と記された場合には“C7+9th”、となるわけだが、これを“C7(9)”と丁寧に記せばいいんだけど、“C9”という表記も実際には多く見られるんだ。そこで、シンプルにトライアド(三和音)にテンション・ノートを加えたい場合はどうするか、というと、この“add”の出番で、“Cadd9”と記した場合は“7th”を含めずにシンプルに“C+9th”となるわけ。これは先ほどのディミニッシュのときと同じで、“コードCにDの音を加えますよ”と言い表わしていることになるんだね。

    このように、とにかく“add~”が出てきたら、その前のコード・ネームに“~を付加音として加えます”と解釈すればいいんだ。

    さて、次回からはこれまでやってきたことを知っているのと知らないのとではどのような違いがあるのか、という実践篇に移るぞ。それまでにしっかりと復習しておこう! これまでの回を読み返して、確実に把握しておくように!

    今回のまとめ:“sus4”は“△3rd”へ落ち着き、“add”はただ音が付くだけ!

    ◎講師:山口タケシ
    東京都出身。小学生の頃ギターを弾き始め、中学生でバンドを作り、ベースに転向。大学在学中にCBS/SONY(当時)よリバンドでデビューした勢いで、新聞記者か小学校教師という進路を変更、親の反対を押し切り就職活動もせずにプロの世界へ。その後はバンドのライヴ活動と同時にスタジオ・ワークやツアー・サポートなどを始める。卒業後、自己のバンドや、数々のアーティストのツアー、レコーディングヘの参加とともに、『ベース・マガジン』誌への執筆や、入門書、教則CD、教則ビデオ制作といった活動も続けている。