プランのご案内
  • PLAYER

    UP

    INTERVIEW − 白玉雅己

    • Interview:Kengo Nakamura

    さまざまなイメージを映し出す
    ベース・インスト・アルバム

    ポルノグラフィティのオリジナル・ベーシストであった白玉雅己が、楽曲ごとに自身のなかにあるさまざまなイメージを具現化したベース・インストゥルメンタル・アルバム第三弾『Lovely People』を発表した。前作『Joy』から1年を待たずのリリースということで、白玉の創作意欲の高まりを感じさせる本作では、前作や前々作ともまた違ったアプローチのアレンジが施され、さまざまな奏法を駆使して紡がれるベース・メロディを引き立てている。ベーシスト/コンポーザーとして、現在の制作スタイルが自身に合っていると語る白玉に、本作について聞いた。

    自分の素直な気持ちに沿って
    いろんな要素が出ればいい。

    ━━ベース・インストによる3枚目のアルバム『Lovely People』は、前作『Joy』から約10ヵ月でのリリースとなりました。かなり制作ペースが早いですね?

     昨年7月の『Joy』のリリース・ライヴが終わってすぐ、8月から曲を作り始めました。12月くらいにはアルバムとしてまとまってきたのでリリースすることにしたんですけど、もともとは特に早く出そうというつもりもなかったんです。でも、すごく自然にアルバムができたのでリリースすることにしたんです。やっぱり僕はベーシストであり、同時にコンポーザーでもあるので、今のスタイルが自分に合っているのかもしれないですね。

    ━━アンサンブルの音数を抑えて“いかにベースを聴かせるか”に集中した1st、ピアノ・トリオを念頭に置いて肉づけした2ndと、これまでは明確にアレンジの方向性を決めていた印象ですが、今作はどう考えていましたか?

     今作は、去年ライヴをやった影響もあって、ライヴでより楽しめたらいいなと思って作り始めました。前作よりもベースが中心になるようなアルバムになったと思います。あと、前作のソフトウェア音源を使用したピアノ・トリオというシンプルな編成とは雰囲気を変えてみようと思ったこともあって、今回はギターやパーカッションを生で入れました。

    ━━ベースについては、基本的にはメロディのベースとバッキングのベースの2本を入れていますが、「美しき旅路」や「月夜」はギターのフィンガー・スタイルのようなベース1本で弾いていますか?

     そうですね。無理のない程度にベース・ラインを入れながら、同時にメロディを弾いたりしています。それほどテクニカルなことはしていないんですけど、ベース・インストを始めるにあたって、ベース1本での表現をどうにかできないかなと思って取り組み始めたんです。チェット・アトキンスのような、ギターのフィンガー・スタイルの弾き方を参考にして、それに近いことができればいいなと。ベースだからギターほど細かいことはできなかったりするんですけどね。

    ━━「月夜」のベース・ソロの部分では、細かいトレモロ的な装飾音符を入れて弾いているのがスパイスになっています。

     ソロは2フィンガーで細かいフレーズも弾いています。親指でのルート音は入れていません。ギターのフィンガー・スタイルのような3フィンガーは、ビリー・シーンみたいなロックの3フィンガーとは違いますけど、ひとりでベース・ラインを入れながらメロディが弾けるので、ベース1本でも形になるのがいいですよね。

    ━━「美しき旅路」のイントロでは、ベースのハーモニクスを使ったプレイが幻想的に響いています。この曲はダルシマーのきらびやかな音色も入っていて、そこからのインスパイアもあったり?

     これも雰囲気を変えて、ちょっと不思議な感じにしたいなというところでした。ベースのハーモニクスってキレイな印象があるし、ちょっと試してみたらうまい具合に曲にハマったので採用したんです。この曲はダルシマーの音色を始め、ちょっと民族音楽的というか東洋的な雰囲気で作りたいなと思ったんですね。シェイカーやマラカスのラテン系パーカッションも入れてみると、けっこういい感じにハマって雰囲気が出せましたね。

    ━━いただいた資料によると、今作では自作のパーカッションも使ったそうですね?

     使ったのは「恐れることなかれ」ですね。木の板でカホンを作ってみて、両手の指先で打面の上を交互に円を描くように指を滑らせて、“サー”っという音を録音したんです。ドラムのブラシ奏法に似た感じですね。最初は素手で音を出していたんですけど、指先がだんだん熱くなってきて、指紋がなくなると嫌だなぁと思って途中からは軍手をつけてやりました(笑)。でも、軍手をつけることによって、より狙っていた音が録れたんですよ。それをイコライザーで調整して薄く入れています。

    ━━自作したというのもおもしろいですね。

     木の温もりのある楽器っていいなと思って、いろんなパーカッションを試していたんです。ボンゴカホンとかは買ってみたんですけど、もうちょっとサイズの大きいやつが欲しくなって、ちょっと作ってみて、おもしろい効果が出るといいなって。あとはペット・ボトルのキャップをネットに入れて、マイクの前で右手と左手でキャッチボールしながら音を出したりして、「月夜」のスネアの位置に“チャッ、チャッ”という音を重ねています。

    ━━「恐れることなかれ」はドラム・ループとベースのリフから発展させた曲ということですが、ドラムは16分のハネ感があるのに対して、ベースのリフは8分のどっしりした感じになっています。どういうイメージだったんですか?

     この曲は、“社会に良い影響を与える仕事を、腹を決めて、明るく淡々としている人”をイメージしながら作ったんです。恐れず前進していく感じというか。

    ━━となると、ベースも細かくハネるというよりは、どっしりと構えた、地に足のついた感じになった?

     まさにそういう感じですね。そこから連想したんだと思います。ベースの力強さというところのイメージ。

    ━━「恐れることなかれ」のエンディングのベース・ソロは2フィンガーで、ジャズ/フュージョン的なフレージングが聴けます。

     僕自身、あんまりジャンル感とかは考えないようにしていますけど、ジャズは好きなんです。ただ、自分がやるスタイルとはちょっと違うかなというか、ジャズ系の王道のフレーズはあんまり自分からは出てこないので、あんまり難しいことは考えずに、僕が気持ちいいと思うものを曲に合わせて、カッコいいと思うことをやったという感じです。ロックっぽさとかジャズっぽさっていうのも表現のひとつだと思っていて。人間っていろんな感情があるので、けっこうイケイケなときもあれば、そうでもないときもあるし、ジャンルで考えずに自分の素直な気持ちに沿っていろんな要素が出ればいいのかなという感じですね。だから、音楽に関してはボーダーレスに触れている気はします。とはいえ、レゲエの雰囲気とかは自分にはやっぱりないので、そういったプレイはあんまり出てこないですけど(笑)。

    ━━ジャズやフュージョンではどんなものが好きなんですか?

     代表的なところですけど、マーカス・ミラーはもちろん好きです。ベース的に自分のスタイルとは違いますけどね。あとはボブ・ジェームス(k)とかも好きだし、プレイヤーで好きだなと思うのは、ヴィブラフォン奏者のミルト・ジャクソンですね。「Positive Guys」でヴィブラフォンを入れているのも、ミルト・ジャクソンが好きなので自然と入れている感じなんです。

    ▼ 続きは次ページへ ▼