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INTERVIEW – 高松浩史[Petit Brabancon]
- Interview:Koji Kano
- Photo:Yuki Kawamoto
“挑戦”の背景にある、新境地の低音
京(DIR EN GREY/vo)、yukihiro(L’Arc〜en〜Ciel/d)を中心に、2021年末に本格始動した5人組バンド、Petit Brabancon。豪華メンバーとともに解禁されたカテゴライズ不能なヘヴィ・サウンドでロック・シーンに衝撃を与えた彼らが、ついに1stアルバム『Fetish』を発表する。ベーシストの高松浩史は目の醒めるような極太のドライブ・ベースを披露し、“新しい高松浩史”の提示とともに、バンドの根幹を確かに支える。THE NOVEMBERSや浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍する高松は、自身のキャリア初となった“ヘヴィロック”にどう向き合ったのか。“挑戦だった”と語るその胸中と、制作の裏側について聞いた。
確かに、今作はほぼ歪んでいますね(笑)。
――Petit Brabanconは昨年末に始動を発表し、ロック・シーンに大きな衝撃を与えました。異色なメンバー構成とも言えますが、高松さんはどういった経緯でバンドに参加することになったのですか?
発表されたのは昨年末になりますけど、実は3年くらい前から水面下では動き出していたんです。僕が参加した経緯としては、yukihiro(d)さんが僕を推薦してくれたみたいで、お声をかけていただきました。
――最初にオファーが来たとき、どんな心境でした?
“本当に?”みたいな感じで驚きでしたね。“やります”と返事をしてから、4曲くらいデモ音源が送られてきたんですけど、とにかくヘヴィなサウンド感が印象的でした。
――今作『Fetish』を聴くと、ハードコアやメタルをルーツに、特定のジャンルにくくれない世界観だと感じます。バンドとしてはどういったサウンド感をイメージしているのでしょうか?
そこまで細かい話はお聞きしていないのですが、今作のレコーディングは長いスパンで行なっていったので、少しずつ曲が増えていった感じなんです。“現状こういう曲が多いから、次はこういう曲を足してみよう”みたいな。だからこそ作品のなかにいろいろなタイプの曲があるんだと思います。ただ、軸には“ヘヴィ感”というものが明確に存在していますね。
――高松さんはTHE NOVEMBERSや浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSといったバンドにも参加していますが、こういったハードなメタリック・サウンドのバンドをやることに新鮮さを感じている人も多いと思います。
僕自身も新鮮さを感じていました。例えば初めて5弦ベースをメインで弾いたりとか。ここまでチューニングが低いバンドは今までやってこなかったので、そういう意味ではひとつの挑戦でもありました。
――ちなみにPetit Brabanconでのチューニングは?
メインはローB弦を一音下げしたAですね。曲によってはGまで下がるものもあります。そのほかの弦はレギュラー・チューニングです。
――ではPetit Brabanconをやるうえで、ベーシストとして意識の変化などはありましたか?
もともとベースって、アンサンブルのなかで居場所がない楽器だと思っているんです。上の帯域はギターとかシンバルがあって、下にはバス・ドラムとかタムがありますから。だからアンサンブルにおいて、ベースはどうしても居場所が限られてくる楽器だと思うんですけど、Petit Brabanconでは特にそのあたりがシビアなんですよ。
――“シビア”というと?
よりしっかりと居場所を探さないといけないというか。分厚くて壁っぽい音圧が出ているギターが2本あって、ドラムもしっかり鳴っているなかだと、どうしてもベースの居場所をより緻密に考える必要がありますから。
――なるほど。今作を聴いた印象として、正直、ベースの存在感に圧倒されたんです。まず一曲目の「Don’t forget」の強烈なドライブ・ベースで目が醒めました。全篇を通してベースは過激に歪んでいますが、昨今のトレンドとはまた違った、個性的な歪みの質感ですよね。
確かに、今作はほぼ歪んでいますね(笑)。さっきも言ったように、曲ごとにレコーディングの時期がバラバラで、1〜2年かけて行なっていったので、僕の音作りもトライ&エラーを繰り返していった部分があるんです。例えば「Don’t forget」だとクリーンと歪みをパラで分けています。アンブレラカンパニーのFusion Blenderはふたつのエフェクターを並列でブレンドできるので、こういったときすごく有効ですね。
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