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スーパーマリオワールドのBGMの魅力【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】– 第1回
- バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
- 挿絵:長谷川カオナシ
2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。それを記念して、同バンドのベーシストである長谷川カオナシの連載コラムがスタート! 多彩な趣味を持つ長谷川が、特にハマっているという“レトロゲーム”のベースの世界を案内します。
奥深きレトロゲームBGMの世界
人生で初めて買ったCDはドラクエのサントラでした。
どうもはじめまして、クリープハイプのベーシスト長谷川カオナシと申します。ビデオゲームって良いですよね。
私め、元来の陰の者故、学生の時分は当然スクールカースト下層に属してました。スポーツはできない。コミュ力はない。女子と目を合わせて話すなんてもってのほか。が、家に帰ってゲームの世界に潜ればどうでしょう。私はそこで何人もの魔王を倒してきたし、いくつもの世界を救ってきました。善良な店から高級な壺を盗み出したこともあるし、かわいい女忍者と遊園地デートしたことだってあるぞ!
そんなワンダーランド、ビデオゲームの世界。ここまでプレイヤーを没入させる要素として、“音楽”というものは無視できません。
というわけで、このたび私がベース・マガジンWEB様より賜りしこのページでは、レトロゲームのBGMにフォーカスしていきます。
『スーパーマリオワールド』(1990年/任天堂)
第一回目の今回取り上げるのは、『スーパーマリオワールド』(1990年/任天堂)※1。こちらスーパーファミコンのローンチタイトル※2であり、言わずと知れた名作アクション・ゲームですね。
マリオは平野に始まり、海や空や洞窟などさまざまなステージを冒険します。ですが意外とBGMの数はシンプルで、メインとなる平野ステージは2曲しか使用されていません※3。
潔し!
それだけ“聴き飽きさせない”名曲ということですね。
また画期的な演出として、マリオがヨッシーに乗ると“BGMにパーカッション・トラックが加わる”というのがあります。これまでも“無敵スターを取るとBGMが変わる”というのはあったけど、“楽曲のタイムラインが進行したまま構成楽器が変化する”というのはかなり珍しいです。恐らくパーカッション部隊が画面外で常に待機しているのでしょう。
ベース・ラインにも注目してみましょう。前半のベースは休符を多用することで、うきうきした明るさを演出しています。後半の展開はたたみかけるようなランニング・ベース。このコントラストが楽曲全体に緩急をつけておりカッコいいですね!
前半のセクションは、音符である“ター”と休符である“ウン”が同じ長さで交互に連続します。
意外と難しいのが、この“ウン”の長さ。夢中で演奏していると、“ウン”が短くなりがち。短くなると、なんとなくあどけない演奏になってしまいます。頭のなかでしっかり“ウン”と歌うと良いですね。慣れないうちは“ウン”の際に右手でミュートし、休符は“お休み”でなく“行為”だという意識を持ちましょう。
さて今回は初回ということもあり、隙あらば自分語りをするという私の悪い面も出てしまいましたが、こんな感じで思い出話と音楽の話をほどよくブレンドしながら喫音していきたいと思います。
それではまた来月。
(※1)
^サウンド・コンポーザーは近藤浩治先生。ファミコン時代のマリオ/ゼルダ・シリーズなどから近年の任天堂作品まで、数々の名曲を生み出してきた伝説の御仁。ポール・マッカートニーにサインをねだられたことがあるらしいです。
(※2)
^ゲーム機本体のリリースと同時に発売されるソフト。新しい機器に対するプレイヤーからの期待を一身に受け開発されるため、機器の性能を存分に生かした名作が多い印象。
(※3)
^ほかには海中、洞窟、お化け屋敷、砦ステージにそれぞれ専用BGMがある。
◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2021年11月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。
◎Information
長谷川カオナシ
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クリープハイプ
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