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<特別対談>二家本亮介 × ACAね(ずっと真夜中でいいのに。)「即興に見えても、実は練習をしてきたうえで臨んでくれる」【WEB版インタビュー】
- Interview:Daisuke Ito
- Photo:Yosuke Torii
現在発売中のベース・マガジン8月号では、巻頭特集『NEO-GENERATION:テクニカル新時代の到来』の筆頭人物として二家本亮介をピックアップ。
企画内では、録音/ライヴともに二家本がサポートを務めるずっと真夜中でいいのに。より、ACAねとのスペシャル対談記事を載しているが、ベース・マガジンWEBでは本誌に入りきらなかったアウトテイクの対談インタビューをお届けする。
その他本誌では、ずっと真夜中でいいのに。の各楽曲からベース名演をピックアップし、譜例+二家本本人による解説コメントとともに紹介しているほか、2万字に迫る二家本のロング・インタビュー、使用機材の紹介、関係者インタビューなど、多角的な切り口で二家本のベース哲学に迫っている。ぜひチェックしていただきたい。

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ずとまよのライヴにとって緊張感は大事だから
━━ ACAね
——ずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)の楽曲で聴ける二家本さんのベース・ラインは、とにかく自由に弾いている印象なんです。そのあたりの塩梅ってどうしているんですか?
ACAね ずとまよは一回デモで作ったものを、レコーディングでどう科学反応させて、そして最終的にどう落とし込んでいくかを大事にしています。だから最初に決め切らないというか、それよりもみんながどう演奏するかによって変わっていったりもするので。でも、ニカさんの演奏も“さすがにこれは……”っていうときは、こちらから怒らせていただくこともあります(笑)。
——ということは「お勉強しといてよ」のトリプル・プルのフィルのように、二家本さんからの提案もけっこうあるということ?
二家本 そうですね。ずとまよはみんなで作っていこうって感じなので、アイディアがあればどんどん提案しています。「お勉強しといてよ」の2サビ前のフィルもその時期にたまたまトリプル・プルを練習していて、あのフレーズを考えていって披露したら採用されました。
ACAね あれは確かにニカさんにしかできない演奏ですね。そうやって自分で難しくしてハードルを上げて、ライヴで苦戦していたり焦ったりしているのも、戦っている感があって良いです。
二家本 トリプル・プルなんて普段の仕事で使うことはほぼないので、しばらくやってないと下手になっちゃうんです(笑)。あと、俺が勝手にやっていることが定番化することもあるよね。
ACAね そうそう、最近はライヴの演出を提案してくれることもあって、それがすごく良いことが多くて、私も嬉しいんですよ。演奏に関してだと“YAKI YAKI YANKEE TOUR”で、ロカビリーなアレンジを曲中に混ぜていて、そのとき私は演奏に合わせてロカビリー・ダンスをしていました。でも、ニカさんが弾いているロカビリーのフレーズに合わせて“ユニゾンで弾いてみたら?”と言われて、一緒に弾いてみたりもしましたね。
——二家本さんのずとまよでのステージ・パフォーマンスに関してですが、本誌のインタビューでも“若い頃、フリーに影響されたことを生かせている”と言っていましたね。その話のなかでも登場した、フリーに影響された前転のパフォーマンスは、ずとまよのステージでもやったりはしているのですか?
二家本 いや、前転はしてないですね。
ACAね 私も見たことはないです。
二家本 前転は高校生の頃、実家の仏間で箒をベースに見立てて練習していました。それを母親とばぁちゃんに見てもらって意見をもらっていました(笑)。
ACAね 仏間ってところがいいね。何か、グッときました。でも、寝転がって弾いたりはしていますよね?
二家本 うん、ステージで寝ころがって弾いたりもするけど、あれは本当にその場のテンションでやっています。
ACAね そういうのは伝わっていて、ニカさんのパッションは私にもメンバーのみんなにも影響していて、お互いに移し合っている感じもあります。それがライヴならではのおもしろさだし、生の演奏の良さでもあって。ニカさんが明るいとまわりも明るくなる。でも、たまに暗いときもあって、その差が激しい。
二家本 人生いろいろあるからね(笑)。
ACAね だから、人間味がちゃんとある感じもします。
——なるほど。
ACAね 二カさんはたとえ、ライヴで寝転んで音が出なくなっても“でも別にミスってないっすよ”って顔をしていたりもしてますね。
二家本 確かに(笑)。音が出なくなるとかはまったく恐れていないかも。
ACAね それが狡いと思って、もっとみんなに緊張感を出してほしいから、あえて即興で無茶振りをしたり、アレンジを急に変えたりしています。だって、ずとまよのライヴにとって緊張感は大事だから。

ずとまよの“チーム感”が僕にとっては心地よい
━━ 二家本
ACAね ニカさんがベース以外でやってみたい楽器ってありますか? ニカさんのリズム感でパーカッションとかやったらどうなるんだろう、聴いてみたいって思ったりして。
二家本 そうだなぁ、最初にはじめた楽器はエレクトーンで、そのあとは少しギターを弾いて、それからはずっとベースを弾いているね。確かにパーカションはおもしろいかも。ずとまよのライヴでもパーカッションの神谷(洵平)さんとドラムのよっち(河村吉宏)が楽器を入れ替えて演奏したりもしてて、あれもすごく良いよね。確かに違う楽器をやってみるのもいいかもしれない。
——では、二家本さんからACAねさんに聞いてみたいことはありますか?
二家本 ずとまよでライヴをはじめた頃のACAねちゃんって、今よりももっとナーバスっていうか、緊張していて。たまに歌詞が飛んだりすることもあったじゃない?
ACAね そう、飛んでました。なんかライヴ中に幻覚が見えていたんですよ。本当にライヴが怖くて吐きそうだった。今よりもずっと孤独だったと思います。その頃と比べたら今は少しだけ明るくなったというか。
二家本 そうそう、今はそんなこともまったくないし、あの頃と今だと全然違うというか。むしろ、覚醒したような感じもしていて。何かあったのかなって? 精神的なものなのか、それとも単純にライヴに慣れたのか。そういう悩みを持ちながらステージに上がる人っていると思うから、みんなが知りたいことなのかなって。だから、すごく気になってた。
ACAね 気にしなくなったからかな。昔は歌詞を絶対に間違えちゃいけないとか、絶対にこうじゃなきゃだめっていうのがいっぱいあった。でも、ライヴだから間違えたり……っていうか、その時々の気分で歌いたい歌詞で歌うようになって、それはそれで正解だなって思えたら、間違いじゃないってことがわかったんです。“エラーもコレクション”ってライヴでもよく言っているんですけど。何だろう、そのときに感じたことがこれなんだっていう。例えば歌っていて何かのアクシデントがあって、歌えなくなったりしたら、そのときは演奏を聴いてもらえばいいし。
二家本 アクシデントと言えば、ちょっと前のライヴで「あいつら全員同窓会」の演奏中に、ACAねちゃんのマイクが何かにひっかかって飛んでって、歌えなくなったことがあったよね? でも、そのときに落ち着いてマイクを拾ってACAねちゃん、何か……うまいこと言ったんだよね。
ACAね えっと、歌詞が“どうでもいいから置いてった”だから、“マイクが飛んでった”って言ったことかな?
二家本 そうそう! それが凄いなって思って。あんなことが起こったら、めっちゃ慌ててしまいそうなのに、いたって冷静だったし。そのあとで普通ならあんなこと言えなくない? すごいよ!
ACAね やった、褒められた。ありがとうございます!
二家本 あと「あいつら全員同窓会」のラスト・パートでラップの部分があるんだけど、ACAねちゃんとドラムのよっちが一緒に歌っているのを見て、あのかけ合いの感じが“いいなぁ”と思ってて。それでよっちがいないライヴもあって、そうするとACAねちゃんだけになっちゃうときがあってさ……。
ACAね そう、ちょっと足りないなぁって思ってた。
二家本 俺、歌は苦手なんだけど、ラップならいけると思ったから、一緒にやろうって思った。そうしたらけっこう覚えるのが大変で、かなり曲を聴き込んで覚えたんだよね。
ACAね 覚えてくれてありがとう。しかも私、ライヴで少しつづ歌詞のニュアンスを変えたりしているのに、それも気付いていて、ちゃんと合わせてくれていたりして。
二家本 そうそう。“最近ACAねちゃん、あそこの歌詞、今はこうだよね?”って。
ACAね そうなの。ニカさんのほうが私よりも詳しかったりもして。あの感じ、いいですよね。ニカさんが一緒に歌ってくれると、熱量が出るから、けっこう相性いいなって思っています。そうやって、二カさんってちゃんと仕込んでくれるんですよ。ライヴのときも即興に見えても、実は練習をしてきたうえで臨んでくれるから安心感がある。ちゃんと作り込んできてくれるタイプだなって思います。
二家本 今回のツアー(名巧は愚なるが如し)で、ACAねちゃんがMCで言っていた“少しでも背中に触れていたら”っていう表現が本当に絶妙で、“押す”じゃなく“触れる”っていうのがすごく良い表現だなって思ったよ。
ACAね ちゃんと聞いていてくれたんだ(笑)。でも、確かにニカさんはMCのときに頷いてくれてますよね。MCってみんなの気持ちを代弁している気持ちだけど、ひとりで話している感じもあるから、そうやって反応してくれることがすごく嬉しいです。
二家本 そういう、ずとまよの“チーム感”が俺にとっては心地よいんだよね。敵でもあるけど仲間であって。だから、ACAねちゃんがMCをしているときは“俺もいるぜ”っていう。みんな一緒に長くやっているから、そういう関係性も強固になってきていると思います。
現在発売中のベース・マガジン8月号でも「二家本亮介×ACAね」の対談を掲載中!
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