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藤本ひかりが語る、赤い公園の解散から歩んだ4年と“サポート”という新たな道【BMG連載:プロフェッショナルの裏側】<後篇>
- Interview : Hikaru Hanaki
- Photo : Kanade Hamamoto(Portrait) , Takashi Yashima(Gear)
本記事では藤本ひかりのインタビュー後篇をお送りする。
インタビューの前篇はこちらから。
自分の身体に馴染んでいて、ほぼ自分の本体みたいなベースですね。
——ここからは機材について伺います。まずメインのフリーダムカスタムギターリサーチ製のJBタイプについて教えてください。
入手したのは20歳ぐらいの頃で、その頃バンドの面倒を見てくれていた真部(脩一)さんから買い取らせてもらったベースです。それまではヤマハのBBを使っていました。

——ずっと使い続けている理由は、どんなところにありますか?
弾きやすいのと、ローがしっかり出るところですね。自分の身体に馴染んでいて、ほぼ自分の本体みたいなベースですね。死んだときには一緒に燃やしてほしいぐらいです。最近はまた音がいい感じに重たくなってきている気がします。
——どんなジャンルでも最初に手に取るのはこのベースですか?
そうですね。レコーディングの現場では曲に合わせて変えたりしていますが、ライヴ現場ではおもにこのベースを使用しています。レギュラー・チューニングよりも下の音階が出てくるときは4弦をドロップして使っています。
——もう一本持ってきてもらったのは、フェンダーのプレシジョン・ベースです。
これはヴィンテージの1966年製のプレベで、去年ぐらいにYOUSAYSOUNDSの宇佐美(裕聖)さんからレコーディングでお借りしたのがきっかけでした。こちらはおもにレコーディングで使っています。

——ライヴで弾くのはためらうぐらい、状態が良いですね。
音作りもまだしっくり来ていなくて、ライヴではあんまり弾けていないですね。やっぱり重たい音のほうが好きなので。でもかなり良いです。現場に持っていくとみんなが笑顔になってくれる率が高いベースですね。
——このベースが合うなって思うのはどんな音楽でしょうか?
黒猫CHELSEAはオリジナル・メンバーの宮田(岳)さんがプレベだったので、このベースを手に取ることが多いです。あとは“3ピースで3人だけの音を楽しむ”みたいなとき。粗品くんのバンドは3ピースで同期もない編成なので、レコーディングでは登場率が高いです。あとはサム・ウィルクスに憧れていることもプレベを手に取るようになった理由のひとつですね。
——僕のイメージだとプレベのほうが音像が大きくて、ジャズベのほうがソリッドな音のイメージなので、興味深いです。
私の認識は逆かもしれないです。でも確かに、私のフリーダムのベースは“ジャズベっぽくないね”って人から言われることが多いですね。自分はずっとこれを弾いているから、これがジャズベの音だと思っていましたけど。太くて重たいサウンドなんですよ。でも、このプレベがこれからそうなっていく可能性を秘めているって思うと、30代はこのプレベを育てていきたいですね。
——エフェクター・ボードについても聞いていきます。ますは、ジャンクション・ボックスを兼ねたチューナー(Providence/STV-1JB)ですね。
プロビデンスの音が好きで、このチューナーにはバッファーも入っているんです。パワーサプライもプロビデンス製を使っています。以前、ローディーさんとパワーサプライの聴き比べ大会をやって、そのときに一番好きな音が出たんです。

——次にOKKO製の歪みが続きます。
BASSTARDは長年愛用しています。大のお気に入りで、“自分の音がする”と演奏していて思います。ベースの歪み系エフェクターってローがなくなっちゃってブレンダーで原音と混ぜないといけないものも多いんですけど、この歪みはロー感を保った状態で歪ませられるところが気に入っています。どんなジャンルにもフィットする歪みですね。それに対して、DOMINATORは派手な音がするので一発で振り向いてほしいときに使うことが多いですね。切れ味の良さが気に入っています。
——そのあとには、tc electronic製VORTEX FLANGER(フランジャー)が入っています。
フランジャーは音を揺らしたいときやエフェクティブな音が欲しいときに使っています。演奏しながら足でディレイタイムをいじったりもします。
——そういった役割でコーラスを入れている人も多いですが、フランジャーを選ぶ理由は?
ふわふわと浮遊する音が好きで、赤い公園のときは年代違いでボスのフランジャーをふたつ入れていたりもしました。足下に似ているエフェクターが並んでいるのを眺めてはニヤニヤしていました。
——このあとにボードのセンド/リターンがついています。
最初はここにヴォリューム・ペダルを入れたくて、この形にしてもらったんです。今はここにオクターバーや、エレクトロ・ハーモニックスのBass MONO Synth(ベース・シンセ)を入れることが多いです。そのあとのディレイはあまり使うことはないですね。

センド/リターン部分
——基本的には何かしらの歪みがかかっている状態が多いですか?
アンプ直のクリーンの音が出ている瞬間はあまりないかもしれないですね。ちょっとだけブーストしている状態が基本です。
——機材や音色もサポートする現場によって変えているんですか?
はい。同期と一緒に演奏する機会が増えたので、そのなかでのベースの立ち位置だったり、ほかの演奏者の方とのバランスだったりは常に考えるようにしたいと思っています。楽曲やアーティストに合わせて音作りを変えたり、ボードの中身も入れ替えるっていうのもバンド時代にはあまりなかったことですが、着る服を選ぶみたいな気持ちで楽しいです。“良い音してるね”と褒めていただけるとその日は安心して眠りにつけます。
Pickup Songs
藤本ひかりのベース・プレイを本人のコメントともにチェック!
藤本ひかり「スローモーションブルー」(2024年)
とても良い作品なので、新たに出会ってもらいたい気持ちで選曲しました。アコースティック・ベースを弾いていて、2Aの入りのベース・ラインはここ数年の自分のなかでの“フレーズ大賞”です。録音の前夜に浮かんだときの喜びは今でも忘れられません。
赤い公園「ソナチネ」(2020年)
バンド時代に初めて自分で作詞作曲をした曲です。君島大空トリオでレコーディングしました。しばらく眠らせていたこの曲をどうするか悩んでいたときに君島くんが私が歌うことを後押ししてくれました。ずっと大事にしたい景色を形にできて幸せです。
君島大空「c r a z y」(2023年)
君島トリオで初めて録音した曲です。広い景色のなかで風が吹くような気持ちでレコーディングに挑みました。トリオのライヴでの空気感が詰まっているかと思います。レコーディングをした翌日の夜に、なぜかみんなでお茶しに集まったのも良き思い出です。
Information
藤本ひかり(ふじもとひかり)
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◎機材紹介記事は近日公開!
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