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【第111回】オクターヴにニュアンスをつける運指で表現の幅を広げよう! 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
ベースのオクターヴの押さえ方で一番基本的なのは、低い音の2本隣の弦の2フレット上ですよね。例えば3弦3フレットのCの1オクターヴ上は1弦5フレットです。
このオクターヴの2音の位置関係は、ベースを始めたてのころに覚えますよね。ベース・ラインではオクターヴが連続して出てくることがよくありますが、大半のフレーズはこの押さえ方で弾けばいいと思います。でも、なかには別の運指のほうが合う場合もあります。
たとえば、ロックな曲調で次のようなオクターヴ・フレーズがあるとします。低いCの音はバスドラムと同じパターン、オクターヴ上の音はスネアと同じパターン、という感じです。
この場合、【譜例1-1】のような普通の押さえ方で弾くよりも、【譜例1-2】のように隣り合った弦(3弦3フレットと2弦10フレット)で大きくシフトして(そしてグリスも交えて)弾いたほうが、よりロックっぽいニュアンスが出ます。
ということで、必要なときはこの運指でもオクターヴを弾けるようになっておくと表現の幅が広がります。今回はこの“隣り合った弦でのオクターヴの関係”に慣れる基礎練を紹介します。これは、ネックの真ん中あたりとかハイ・ポジションあたりの音の位置を覚えられる、という意味でも役立つ基礎練です。
たとえば、Fの音を使って、隣り合った弦でオクターヴを弾いてみましょう。隣の弦のオクターヴは7フレット離れています。
4弦1フレットのFの音の1オクターヴ上は3弦8フレットです。
STEP 1
まずは【ex.1a】を、正確に弾けるようになるまでひたすら繰り返します。この段階ではグリスは使いません。16分音符4つ目の音までしっかり弾いてから次の拍のオクターブ上(あるいは下)の音まで、できるだけ素早く正確にシフトすることを心がけます。素早く正確にシフトするためには“前もって移動先の着地点を見ておく”のがポイントです。ジャンプして何かを飛び越えるときと同じで、シフトする瞬間やシフトし始めたあとに着地点を見ても遅すぎます。つまり、低いほうを弾いているときに高いほうを見て、高いほうを弾き始めたら低いほうを見ます。ゆっくりから始めて、慣れたらテンポを上げていきます。
STEP 2
【ex.1a】と【ex.1b】を交互に弾きます。【ex.1b】では、4分音符の長さが【ex.1a】の16分音符4つ分と同じになるように気をつけます。この段階では、オクターヴが入れ替わるときには【ex.1a】と同様グリスを入れず、素早く正確にシフトします。
STEP 3
STEP 2に慣れてきたら、最終的にはグリスを入れて、オクターヴの移動をなめらかにつなぐようにしていきます。【ex.1a】では16分音符4つ目まで弾いてからグリスし始めます。【ex.1b】でグリスをし始めるタイミングは、4分音符の最後のほうです。それぞれの音符の音程をしっかり鳴らしてからグリスで移動するイメージです。
もちろん、Fの音以外にもたくさん音があるので取り組むべきことはいっぱいありますが、まずはひとつの音でイメージをつかんだほうが早いと思うので、当面の間はFの音で“隣り合った弦でのオクターヴの位置関係”を身体に叩き込んでいくといいと思います。石村順でした!
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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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