NOTES
“めし”をテーマに、プロ・ベーシストに音楽活動の活力になるようなお店やお気に入りのメニュー、そのほか“食”にまつわる思い出深いエピソードを語ってもらう連載「低音めし」。第8回目に登場するのは、7弦ベースを操り多数のアーティストのレコーディングやライヴで活躍するIKKE。今日も彼は、東京のパワースポット、深大寺にて、上等な蕎麦をたぐり、コンディションを整えるのであった。(編集部)
都心でも美味しい蕎麦は食べたいのよ
日本全国どこで食べても、ほぼ合格点を超えてくる蕎麦。なかでも長野や北海道で食べた蕎麦は格別だった。もちろん綺麗な水で作った蕎麦は美味しいに決まってるのだが、都心で暮らしてたって美味しい蕎麦は食べたいのよ。
僕は学生時代、蕎麦屋で4年間バイトをしていた。
それだけ長くなると鰹節を削ったり蕎麦粉をふるいにかけたりなど、そこそこ蕎麦作りのノウハウを教えこまれる。しかも地元でそこそこの名店だったのも相まって、僕自身蕎麦に関しては通だと思い込んでるこじらせた奴になってしまった。
深大寺そばとの出会いはとある先輩ミュージシャンと吉祥寺で昼飲みをしていて、“シメに美味い蕎麦食べるか?”と連れてってもらったことがきっかけ。
吉祥寺からバスで約20分。東京の真ん中に突如と現われた異世界空間。そこには江戸の宿場町のような街並みがあり蕎麦屋が20店舗ほど並んでいる。“深大寺そば”は白みがある。そばの実のなかでも栄養が高い上質な部分を使用すると蕎麦は白くなる。

昔、深大寺に上納される蕎麦の名残で上質なものを使用してるんだとか。そして深大寺と言えば湧き水、都心では珍しく深大寺周辺は湧き水の宝庫と呼ばれるほどなのでだ。この湧き水で作った深大寺そばは、当然まずいわけがない。
今回行ったのは“深大寺そば ごちそう門前”。20店舗ほどある蕎麦屋のなかでも、僕はここの山菜そばが好きでよく足を運んでいる。
ぶっかけスタイルの山菜そばを二郎ラーメンさながら天地返しを決め込めば、蕎麦のコシ、シャキシャキした山菜、サクサクの天ぷらを同時に堪能できる。個人的にごちゃ混ぜスタイルは苦手だけど麺類と韓国料理は別。混ぜた先にある化学反応に辿り着くかで自分の至福度が大きく変わってくる。
感想をあえてベーシストっぽく言うと蕎麦の立ち上がりが速く、芯があり抜け感もある。それでいてあたたかみのある倍音の効いたつゆもすばらしい。
そしてここに来たらもうひとつ外せないのが深大寺ビールだ。蕎麦とビールは喉で味わえ!と言わんばかりの相性の良さ。ブラウマイスターの技が冴えわたる黒ビールは、蕎麦を引き立てるいわばクリーン・ブースターのような存在だ。今回はプラスで野菜天ぷら、味噌田楽を注文。僕の完璧なエフェクター・ボードが完成した。

食事もさながらこの深大寺というパワースポットかつ異世界空間での時間は、日常を忘れることができ遠征などで疲弊した身体に安らぎを与えてくれる。僕にとって蕎麦とはベース・プレイのコンディションを整えてくれる相棒のような存在だ。
今回のめし屋:そばごちそう門前
東京都調布市深大寺元町5-13-5
多くの蕎麦屋が軒を連ねる深大寺でも、老舗と言える同店。国産そば粉を使った香り高い蕎麦を楽しむことができる。かつては松本清張が通っていたことも。
HP
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【今回のベーシスト】
IKKE(いっけ)●1984年8月13日生まれ、神奈川県出身。FEELFLIPの7弦ベーシストとして2016年メジャー・デビュー。バンド活動休止後は、SCAFULL KING、SHAKALABBITSのベーシストとして抜擢されるほか、和田アキ子、田村ゆかり、広瀬香美など国内外のさまざまなアーティストに参加。SCAFULL KINGは9月23日、Spotify O-EASTにて14年ぶりとなる新曲のレコ発ワンマン、現在ワンマン・ツアー中のSHAKALABBITSは11月3日、EX THEATER ROPPONGIにてツアー・ファイナルを行なう。
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