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「ポポロクロイス物語」睡眠の味の違いを表現するには?【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第15回
- バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
- 挿絵:長谷川カオナシ
2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。今回は、まるで絵本のような世界観に心温まる、不朽の名作RPGの音楽を紹介していきます。
旅先でのあなたの朝にはどんなSEが鳴るでしょうか?
お世話になっております。
旅って良いですよね!
例えそれがヴァーチャルな世界の中の話だとしても。
特にRPGというジャンルのゲームは、
私達をいろんな土地に連れて行ってくれました。
今日は個人的にも思い入れの強いこちらのゲームを喫音していこうと思います。
『ポポロクロイス物語』(1996/ソニー)(※1)
主人公は若干10歳のピエトロ王子。
彼は母を救うため、世界中を冒険します。
プレイヤーもポポロクロイスを旅していく中で、
次第にこの絵本のような世界に惹き込まれていかれることでしょう。
冒険を盛り上げるのはやっぱりBGM!
『ポポロ』では、街ごとに専用のBGMが用意されています。
さらに戦闘BGMも、その地方ごとに違ったものが流れます。
そして特筆すべきは勝利SE。
戦闘に勝利した際に流れる4秒程度の効果音です。
どんなステージでもメロディ自体は同じなのですが、
南国ステージでは水の音が鳴ったり、
アジア風のステージではドラのような音が鳴ったりします。
こういった、ちょっとした気遣いが嬉しいですよね!
私が好きなのは、宿屋での宿泊時に流れるSE。
こちらもどの街でも共通のメロディが流れます。
そして勝利SE同様、街によって構成楽器が微妙に変わっています。
例えば現実世界で、旅行に出て宿泊をした際。
朝、知らない宿の天井を見て、あれ、自宅ではないという違和感を覚えますよね。
そして外に出て空気を吸ったときに、睡眠の味の違いをじわじわと感じます。
『ポポロ』の宿泊SEの細やかな違いは、
旅先でのこの「睡眠の味の違い」を表現してくれているように思います。
素敵なBGMもたくさんあります。
中でも「フライヤーヨットの飛翔」(※2)は、挿入されるアニメーションムービーも美しく、
展開するシーンに対応して曲がメドレー化する演出に
「これこそ劇伴だよなぁ」と子供心に感動しました。
原曲にエレキベースは入っていませんが、今回はこちらを演奏してみました。
ご視聴頂けたら幸いです。
さて、今回はポポロクロイス物語を喫音しました。
少しずつ、旅行にも出やすい世の中になって参りましたね。
旅先でのあなたの朝にはどんなSEが鳴るでしょうか? それではまた来月までご機嫌よう。
(※1)
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作曲は佐橋佳幸先生、石川鉄男先生。
佐橋先生は小田和正さんの『ラブ・ストーリーは突然に』や藤井フミヤさんの『TRUE LOVE』はじめ
多くの曲にギタリストとして参加されています。
石川先生は川本真琴さんや岡村靖幸さんはじめ
多くのアーティストのプロデュース・編曲を担当されています。
(※2)
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槇原敬之さんの楽曲、「夏のスピード」の
イントロのフレーズが引用されています。
「フライヤーヨットの飛翔」作曲者の佐橋先生は
「夏のスピード」のレコーディングにもギタリストとして参加されています。
◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。
◎Information
長谷川カオナシ
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クリープハイプ
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