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プロのベース練習、覗いてみた。– 第4回:T$UYO$HI(The BONEZ / Pay money To my Pain)
- 取材:伊藤大輔
- 撮影:小原啓樹
- デザイン(ロゴ):猪野麻梨奈
- Presented by Positive Grid
プロのミュージシャンは、どんな練習を積み重ねてきたのか?──本連載では毎回、異なるベーシストに登場いただき、自身の練習遍歴や現在のルーティンについて語ってもらう。
ベースを弾くことだけが“練習”じゃない。そう言い切るのは、The BONEZのT$UYO$HI。ギターからベースへ転向し、仲間とともに音を磨き上げてきた彼にとって、“練習”とは決して個人作業ではなく、バンドとともにあるものだった。今回はそんな彼に、“練習”というテーマをあえてぶつけ、その真意を探った。
さらに、ライヴ前に欠かさず使っているという多機能型スマート・ヘッドフォン=Positive Grid “Spark NEO”の使用感についても語ってもらった。
目次
・T$UYO$HIが語る、プロ・ベーシストの“自宅練習”
・Positive Grid “Spark NEO” × T$UYO$HI
T$UYO$HIが語るプロ・ベーシストの“練習”

いわゆるみんながやるようなコピーとか、そういう練習はしていないんですよ。
ーーベースをはじめた頃はどんな練習をしていましたか?
俺、20歳くらいまでギタリストだったんですよ。それからベースに転向したから、ベースを始めた頃からオリジナルの曲を作っていました。だから、いわゆるみんながやるようなコピーとか、そういう練習はしていないんですよ。
ーーそうなんですね。ギターとベースだと楽器の大きさや弦の太さなど、弾いたときの感覚もかなり違いますよね?
そうそう。最初はギターを弾くような感覚でピックでベースを弾こうとしていたから、右手の付け根が痛くてしょうがなかったですね。でも、音楽的な練習……例えばスケールがどうとか、そういうことはギターを弾いていたから分かっていて。だから自分がベースを弾くときは曲を作るときとか、あとはバンドで演奏をしながら感覚的にベースという楽器に慣れていった感じですね。
ーーギターからベースへ転向したときに、ほかにも何か大きな違いを感じたりはしましたか?
音作りかな。ベースを始めた頃の自分はローの成分にしか興味がなくてトレブルも上げていなくて、今思えばたぶんモコモコした音だったと思いますね。ハイの成分がないとローも聴こえてこないとか、そういうことは分からなかったし、単体とアンサンブルのなかでは聴こえ方も大きく変わったりもする。そういう部分は練習というか、勉強をしましたね。
一番最初にスタジオでベースのレコーディングをしたとき、自分がイメージした音にまったくならなくて、すごく時間がかかってしまって。そのときに隣のスタジオで亀田(誠治)さんがいたんですよね。亀田さんの音って歪んでいるのに抜けてくる音だったから、どうやって音作りをしているのかって、聞いてみたんですよ。そうしたら“君のバンドなら僕のベースは同じようには聴こえないだろうね。(音楽は)コップみたいなもので、入れられる容量は決まっている。何かが聴こえてくるってことは何かが小さいんだ”って教えてくれてましたね。
ーーそれは貴重ですね。確かにベースは録音でもライヴでも、アンプとラインという2種類の音があることが多いので、自分の音を決めにくい部分はあると思います。
そこがベースは難しくて、自分が思い描く音を出すためには、どこまで機材にこだわったらいいのかという葛藤がずっとありました。やっぱりベースで迫力のある音を出したいし、自分たちの演奏を観てくれる人にもそう感じてもらいたい。俺はフレーズよりも音なんですよ。“良い音がしていた”って言われるのが一番嬉しいです。
ーーその自分らしい音を出すためにはどんな工夫をしていますか?
ライヴでも録音でも、自分の音をちゃんと出せるようにするために、ペダルボードのなかで音作りを完結させています。いろんなペダルがあるけど、メインになるのはEQとプリアンプ、それに改造した初期型のサンズアンプBass Driver DI。この3つで自分の音を作っています。
ーーサンズアンプはどう改造しているのですか?
アウトのレベルを上げた設定にしていて、デカい音の状態でラインを送っていますね。
カッコいい仲間を見つけたり、そういうことに人生の多くを費やしてきたんです。だからベースを弾くことだけが練習じゃないよ、とは思いますね。

ーー話は戻りますが、演奏面に関しても聞かせてください。ギターと違ってベースは基本的に単音で弾く楽器なので、メロディックになったりもしますよね。
ベースに転向した頃はわりとメロディックに弾いてました。自分にとってそれはギターっぽいベースっていう感覚でしたね。今はそういった演奏を自分ですることはないです。だから、サポートなどでベースがハイフレットに行って目立ったりするときに限って、よく間違えちゃったりします(笑)。たぶん、自分がそういう演奏にあまり興味がないからなんだと思います。最近思うんですけど、俺ってドラマーなんですよね。
ーーそれはベースを弾くとき、ドラムに近い感覚ということですか?
そう、自分で曲を作るときもドラムからはじめるし、バンドのライヴでもずっとドラムを観てたりします。自分が好きなドラマーと合わせるために、ベースを弾いてるっていう感じ。バンドで演奏することが好きだから、練習とかひとりでベースを弾くのはつまらないなって思う。
ーーそういう感覚になったのは何がきっかけでしたか?
やっぱり曲を作るようになってからですね。楽曲として表現したいものがあるから、必要以上のことをベースでやろうって発想にならないんです。だから、誰かの曲に“ベースを入れて”って言われたときのほうが、ベースを主体に考えますね。
ーーなるほど。音楽性によってもベースを弾く意識は変わるということですね。
そうですね。The BONEZの場合は俺が曲も作っているから、The BONEZがカッコいいって感じる音に水準を合わせるイメージがあり、ベースも自然とそうなるって感じです。単純にベースを弾くという視点なら、Dragon Ashの楽曲はリフものも多いし基本指弾きなんで表現はしやすいかな。俺は身体でベースを弾く感じが好きだから、それにはDragon Ashみたいに音に隙間があるほうがやりやすいんですよ。
ーーでは、T$UYO$HIさんにとって練習とはドラムと合わせたり、バンドで一緒に演奏をすることなんですね。
そうなのかな。今いろいろと話しながら、たぶんそういうことなのかなとは思ってるけど、練習という意識があんまりないだけかもしれない。あと、俺はちょうどアナログとデジタルの合間くらいの世代の人間だから、何をするにも足を使うしかなかったんです。
最近、演奏がすごく上手なベーシストってたくさんいるじゃないですか。これは例えだけど、今は自分の刀を家で磨きまくってSNSなどにアップすると、いろんな人が見つけてくれるじゃないですか。でも、俺が若い頃はそういうことができる時代じゃなかったから、家で自分の刀を磨くよりも、それを持って外に出かけて、バンドをやることに時間をかけてきたんです。あとはカッコいい仲間を見つけたり、そういうことに人生の多くを費やしてきたんです。だからベースを弾くことだけが練習じゃないよ、とは思いますね。
Positive Grid “Spark NEO” 
× T$UYO$HI
スマート・アンプでおなじみのPositive Gridが手がけたSpark NEOは、ヘッドフォン・スタイルで自宅練習の自由度を大きく広げてくれる注目アイテムだ。ライヴ前の楽屋でSpark NEOを欠かさず使っているというT$UYO$HIに、その使用感を語ってもらった。

遮音性も高いからライヴ前の楽屋のようなざわついた空間でも集中できそうです。
最初はスピーカー・タイプのSpark GOを使っていて、その後ヘッドフォン・タイプのSpark NEOが出て、シールドをつなぐ煩わしさがなくて良いなと思っていました。今はこっちがメインですね。おもにライヴ前の楽屋で、楽曲のおさらいをするときに使っています。iPhoneで曲を再生しながら一緒に弾けるから、曲の構成などの確認がしやすくてに入っています。
アンプ・タイプを楽屋で鳴らしていると、それが邪魔になることもあって、それがSpark NEOならひとりでできちゃうところが良いです。あと遮音性がすごく良いから、騒々しい楽屋でもすぐにひとりの世界に入れて、めちゃくちゃ集中できます。特に俺はヘッドホンを着けるとスイッチが入るタイプだから、これはピッタリですね。

あと、ベースって生音が小さいからアンプにつながないと音程が聴き取りづらい。特に5弦ベースのロー・ポジションなんかは、弾いていても“これで音程合ってのるかな?”って思うこともしばしばあったりもします。それもSpark NEOがあればしっかり音が聴き取れるから、左手のポジションなどの確認もしやすいですね。特にずっと外で大きい音が鳴っているフェスの楽屋なんかだと、Spark NEOはすごく重宝します。
俺はアプリでエフェクトを使ったり、EQとか細かい音の調整はしないけど、800RBってベース・アンプのモデリングを使えば、それだけでベースらしい良い音がします。ワイヤレスだけど弾いたときのレイテンシーも気にならずレスポンスが良いから、相当気に入っています。まあ、強いて改善点を言うなら、俺は少し頭が大きいからヘッドホンを着けたときの側圧がきついなってくらいですね(爆笑)








▼ Positive Grid “Spark NEO”の紹介記事はこちら ▼
Positive Grid / Spark NEOの公式ページはこちらから。
◎Profile
T$UYO$HI(つよし)●2000年にdrug store cowboyのベーシストとしてメジャー・デビュー。その後、安室奈美恵やMicro(Def Tech)といったアーティストのツアー・サポートなどを経て、2006年にPay money To my Painを結成。国内ラウド・シーンに多大なる影響を与える。現在はRIZEのJESSE(vo,g)、盟友ZAX(d)らとともにThe BONEZで活動するほか、2019年からはDragon Ashのサポート・ベーシストとしても活動している。バンド活動以外にも、スクウェア・エニックスのゲーム音楽への楽曲提供やリミックス、映画の劇伴制作なども行なう。
◎Information
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