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“ロングホーン”ジャズ・ベースを知っているか?【Kroi 関将典のベース偏愛録:見た目で選んで何が悪い!】第5回
- Text & Photo (Bass) : Masanori Seki (Kroi)
- Photo (Main Image) : Kohei Watanabe
- Logo Design : Hirotaka Sudo (HOPSTEP)
「見た目で選んで何が悪い!」を合言葉に、Kroiの関将典が自身のベース・コレクションから“人と被らない”個性派ベース偏愛を語る連載の第5回。今回取り上げるのは少し変わったフェンダー・ジャズ・ベース。王道のジャズべとはひと味違った愛器について、オークションサイトでの苦いエピソードとともに、その魅力を綴ってもらいました(編集部)。
第5回:Fender / Jazz Bass (Long Horn)
第5回はこちらのベースを紹介します。

フェンダーのジャズ・ベースです。
おいおい、ジャズ・ベースって……“もうネタ切れか?”と思ったそこのあなた、ご安心ください。
ヘンなジャズ・ベースです。1989(?)年製のLong Horn Jazz Bassになります。

80~90年代のフェンダーには、
・Precision Bass Special
・Elite series
- Elite Ⅰ
- Elite Ⅱ
・Ballet Bass(第2回で紹介)
などなど……
アクティヴ・サーキットを搭載したり、ピックアップ配列が独特だったり、ハードウェアにブラス製のものを用いたり、ボディカラーとパーツカラーのマッチングが個性的なものなど、70年代までに作り上げた確固たるスタンダードに対する変化を加えた新たなモデルが登場しました。
そのひとつに、今回紹介するLong Horn Jazz Bassが存在します。カタログなどでみると、American Standard Jazz Bassと表記されているので、“Long Horn”というのは恐らく通称なのですが、その名のとおりホーンの部分が通常のジャズベよりも伸びており、1弦側ハイ・ポジションのカットも若干深くなっています。
正直に言いますと、関も詳細はあまりわかりません。
当時のカタログなどを見ると(カタログアーカイブといえばこのサイト↓)、
楽器カタログの世界〜70年代から90年代 ギター、キーボード、エフェクター、アンプのカタログたち
「P・ベース、J・ベースともにその誕生以来はじめてフォルムを変更し厳選したアルダーを用いたボディ」(上記リンクの91年のフェンダーカタログ参照)
という記載があったので、ノーマルのプレベ、ジャズベとは別ラインというよりも、同軸で開発されたものなのかもしれません。
同時期にはJazz Bass PlusというモデルとPrecision Bass Plusというモデルもありました。
こちらもボディ・シェイプはロングホーンになっており、汎用的に使っていく考えもあったのかもしれないなと推察しています。
ロングホーンにしている意図は推測ですが、アイバニーズやサドウスキーなどでも見かけるシングルカットモデルのように低音弦側にウェイトを置くことで、サステインやロー感などの補填を期待したり、ハイ・ポジションへのアクセスを良くしたり、ボディの重量バランスを取るために行なった変更なのかなと思っております。
有識者求む。
自分はDavid Caraccioが使ってるのを見てロングホーンの存在を知りました。
オークションでの苦い思い出を払拭したくて、レリックを施しました……
5、6年ほど前にオークションサイトで手に入れた個体です。
それでは詳しく見ていきましょう。
まずはヘッドです。
ペグはシャーラー製で、フェンダーのFの刻印入り。
ビスではなく表面からブッシュとナットで固定するタイプです。
ヘッドの木部にふたつの凹みがあり、そこに2本の突起が噛み合ってるので動かないんですね。


余談ですが、
ヘッド裏にヒビが入っていまして、ここには少し胸糞悪いエピソードがあります。

“落札前に質問してない内容での返品は受け付けない”と言われていたので、“クラックが入っているのは、塗装のクラックか木部にも達しているものか?”を聞いたところ、“塗装面だけだ”と言われたので落札したのですが、届いてみると、しっかり木部まで割れてました。
オークションサイトやフリマアプリ初心者だった関は、まんまと掴まされてしまいました。
事前質問もしていたので、返品が可能かなど問い合わせたのですが、何度問い合わせてもすごい長文コピペで”返品は受け付けない”の一点張りで戻されました。
そのうえ受け取り評価で悪質な落札者だとボロクソに言われてしまい、煮え湯を飲まされる思いをしました。
しょうがないのでタイトボンドを流し込んで接着しました。
思い出しながら文字を打つだけでもイラッとしますね!! こんな経験も経て、オークションサイトやフリマアプリを使う場合はある程度の覚悟を持つことを学びました。
皆様もお気をつけください。
気持ちを切り替えていきましょう!!泣
ネックはメイプル、指板はローズウッド。


ボディはアルダー。
元はクリームかホワイトだったものが焼けて黄色になってます。
オークションでの苦い思い出を払拭したくて、レリックを施しました……。

ジョイントは4点止めですが、70’sより導入されたマイクロティルトが採用されています。

ピックガードもロングホーンのボディ・シェイプに沿ったものになっています。
ピックアップ・カバーとコントロール・ノブはアイボリーに変更しています。

次はコントロールです。

改造もしていますが、その点はのちほど触れるとして、まずはオリジナルの仕様について。
このモデルの特徴的な点は、TBXコントロールというトーン・ポットです。
ギターワークスさんでも販売されてました。
フェンダー TBXコントロール ポット 通販|ギターワークス
センタークリックがあり、そこが通常のフルテン状態。
センタークリックを基準にハイカット、ローカットができるようになっています。
クラプトン・モデルのブラッキーなどにも採用されてるようです。
これが“画期的なようで、少しクセが強いな”と個人的には思っております。
ゆえに、ナチュラルなトーンを絞ったサウンドが出ないのがなんともしっくりこなくて、改造しました。
コントロール・プレートを開けた画像がこちらです。
中にひとつポットが増設されてます。

フロント・ヴォリュームをプッシュプル・ポットに交換してあり、プル状態のときはオリジナルのTBXのトーン・コントロールをとおります。
プッシュ状態だと、内蔵されているポットでナチュラルなトーンのサウンドにできる(?)というイメージです。
しかしながらキャビティに内蔵してしまっているので実質プリセット・トーンのような感じになっています。
若干絞った状態で内蔵しています。
こちらの改造は以前にもIbanez / ATK400の記事で登場した高田馬場アストロノーツギターズさんに施工していただきました。
サウンドのキャラクターとしてはハリがあり太い印象があります。
ただ、ほかにもジャズベタイプは複数持っており、サウンドにおいてはどうしてもこのベースを使いたいというほどの個性があるわけではないので、あまり出番はありません。
けど希少であることと、見た目の良さからお気に入りの一本です。
実際にレコーディングでも数回使用しました。
何に使ったかは定かではないですが、恐らく「Correction」という楽曲で使った気がします……
初のフジロック出演の際にもこのベースを使いました。

MVにも出演しました。
https://www.instagram.com/p/Cat4nAeJJQH/?igsh=eHdnd3F0dGg1cDFr
今回紹介させていただいたLong Horn Jazz Bassですが、なかなか市場に出回らないベースです。
少しクセはありますが、人とはひと味違ったベースを使いたい人にはもってこいなベースだなと思います。
オークションサイトやフリマアプリを見ているとたまーーーーーに出品されていますので、気になる方は見つけた際にはぜひゲットしてみてください。※決断はくれぐれも慎重に、、、泣
以上、第5回Long Horn Jazz Bassのご紹介でした!
Profile

◎Profile
せき・まさのり●1994年9月20日生まれ、茨城県出身。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンドKroiのベーシスト。バンドは2018年2月に結成され、同年10月にシングル「Suck a Lemmon」でデビュー、2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャー・デビューを果たした。2024年1月20日には初の日本武道館ワンマン・ライヴを成功させる。2024年6月に3rdアルバム『Unspoiled』をリリース。Kroi公式FC「ふぁんく らぶ」では、自身のベースを動画で語る“せきまさのりのベースってそんなに必要ですか?”を更新中。
◎Information
Kroi HP X Instagram
公式FC ふぁんく らぶ
関将典 Instagram