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Fender / Dimension Bass【Kroi 関将典のベース偏愛録:見た目で選んで何が悪い!】第4回
- Text & Photo (Bass) : Masanori Seki (Kroi)
- Photo (Main Image) : Kohei Watanabe
- Logo Design : Hirotaka Sudo (HOPSTEP)
「見た目で選んで何が悪い!」を合言葉に、Kroiの関将典が自身のベース・コレクションから“人と被らない”個性派ベース偏愛を語る連載の第4回。今回は、フェンダーが2013年に“新たな世界標準”を目指して製造したと言われる“Dimension Bass”の魅力をたっぷり語ってもらいました(編集部)。
第4回:Fender / Dimension Bass
第4回はこちらのベースを紹介します!
ベース・マガジン読者の皆さまにとっては、まだ記憶に新しいモデルかもしれません。
エレキ・ギターやエレキ・ベースの王道・スタンダード・基礎などの類を作り上げたと言っても過言ではないフェンダー。

特にエレキ・ベースにおいては、プレシジョン・ベースとジャズ・ベースという長い楽器史において揺るぎない形を作り上げ、半世紀以上経った今もなおその形が継承され、愛され続けています。
その後もありとあらゆる楽器メーカーがオリジナルモデルを出しているにも関わらず、この2種類のベースを基本としたスタイルや存在が揺るがないことは改めて驚異的なことだと思います。
そして、今回紹介するのが、そんなフェンダーが2013年に新たな世界標準を目指して製造したと言われるDimension Bass(ディメンション・ベース)です。
発売当時、大学生だった関はまだベースを始めたばかりだったので、“フェンダーが新しいモデルを出したんだなー”くらいにしか思ってませんでした。ところが数年後に改めて振り返ったとき、これはなかなかに刺激的な出来事だったなと思いました。
もちろん、フェンダーも常にニューモデルのリリースをしていますが、自分がベースを始めてから今に至るまでは、ボディシェイプはトラディショナルな既発モデルを軸として、ピックアップやウッドマテリアル、カラーリング、機能的な面などのアップデートをしたモデルがほとんどだったと思います(最近だとMeteora Bassなどはありますね)。
もちろんどれも革新的でありつつ、時代にあった進化を遂げていて素晴らしいと思います。
そんななか、あのフェンダーが“真新しい”ボディシェイプのベースを出すということに立ち会えたことはとても嬉しいことだなと思います。
ストラトやテレキャス、プレベやジャズベなどのスタンダードを作ってきたメーカーが、ムスタングやジャズマスなどの新しいシェイプを発表するのを目の当たりにした、かつてのプレイヤーや楽器愛好家達もこんな感覚だったのかなと少し妄想しました。
出会ったのは新卒1年目、外回りをしてる際に御茶ノ水を通ったときに……
さて、前置きが大変長くなってしまいましたが、Dimension Bassについてお話ししていきたいと思います。
Dimension Bassは前述の通り2013年に発表されました。
上位機種から順に、
アメリカ製のAmerican Deluxe、
メキシコ製のDeluxe、
中国製のModern Player、
製造場所不定のSquier Deluxe Dimension。
そして、翌年2014年にはアメリカ製のAmerican Standardが発売されました。
そのなかでも私、関が所有しているのはAmerican StandardのDimension Bassになります。
入手までの経緯からお話します。
新卒1年目、サラリーマンをしていた関は外回りをしてる際に御茶ノ水を通ったので昼休憩中に楽器屋に行き、このベースのオーシャン・ブルー・メタリックの個体を試奏させていただきました。
とても好印象で、若干イキり気味にその場で購入を即決したのですが、ローンの審査が通らず断念……(けっこう恥ずかしかった)。
そこから、“いつかは欲しいな”という気持ちと恥ずかしさを抱えたまま数年経ち、Dimension Bassは製造が終了してしまいました。
ところが、Kroiでメジャーデビューをしたあとに、機材整理をしようといつもお世話になっている高田馬場アストロノーツギターズさんにエフェクターを売りに行ったら、かなり美品のDimension Bassが置いてあり、気づいたら購入してました。
機材整理をしようとしたら機材が増えてることってたまにありますよね。あのとき買えなかったベースを買えた喜びはひとしおでした。
見た目、弾き心地など、本当に大好きで、一時期はメイン・ベースとしてライヴでも使用していました
Dimension Bassの仕様についてです。全モデルについて話してしまうとかなりな文量になってしまうので、関のAmerican Standard以外のモデルについてはリリース当時の記事や資料などをご参照いただければと思います。
American StandardのDimension Bassは、前年に出たアメデラ(American Deluxe)に次ぐ上位機種かと思われます。アメデラのモデルはアクティヴ・モデルだったのに対し、アメスタはパッシヴ・モデルになります。
アメスタのざっくりしたスペックは、メイプル・ネック/ローズウッド指板で、4弦側が厚みがあり1弦側が薄めになったアシンメトリーなシェイプをしています。

サラサラとしたサテンフィニッシュです。トラスロッドはホイールタイプでネックエンドからアクセス可能です。

アメデラのDimension Bassにはカーボンロッドが入っている(?)と思うのですが、アメスタには入っていないので、パッシヴとの相性的にも、よりヴィンテージライクな、いなたいサウンドも出せるように狙っていたのではないかと推察しています。
ボディは確かアルダー。これもアメデラでは確かアッシュを採用していたので、パッシヴに合わせた仕様なのかなと思ってます。
そして、ふたつのオリジナル・ハムバッカー。

コントロールは、2ヴォリューム1トーンです。

ブリッジはバダスブリッジのような重量があり、面積もあるタイプのオリジナル・ブリッジです。

ざっくりとしたスペックはこんな感じです。
自分は見た目、弾き心地など、本当に大好きで、一時期はメイン・ベースとしてライヴでも使用していましたし、今もいつかはメイン・ベースに戻したいなと考えている一本です。
PB・JBに次ぐニュースタンダードになる世界線もあったかもしれないということにゾクゾクします
そんなDimension Bassですが、2013年からおよそ5年ほどで製造が終了してしまっているんです。
当時はかなりいろいろなベーシストのデモムービーなどを見てワクワクしていたのですが、人気が芳しくなかったのかもしれません……。
ニック・ウェストがアーティストビジュアルなどで一時期、使用していたのが印象に残っています。
特に賛否が分かれたのはサウンド面やプレイアビリティ的な面かなと思います。
自分はDimensionの見た目はかなり好きです。
バランスも自分の身体にはかなりフィットしていて演奏しやすくてお気に入りです。
が、新しいボディシェイプはすぐに受け入れられることのほうが少ないと思うので、そういった意見があったとしたら、その点はそんなに痛くはなかったのかなと思ってます。
個人的には、オリジナルのハムバッカーのサウンドが、プレベっぽい音もジャズベっぽい音も出せるのですが、どちらも、”ぽい”サウンドでありながら、かと言って“唯一無二の個性がある”というほどでもないなという印象でした。
それを良しと捉えるかは人それぞれだと思いますが、新しい革新的なスタイルに期待が高まっていた方々にとっては物足りなかったのではないでしょうか。
実際にはハムバッカーということもあり、普通のJBスタイルのシングルコイル・ピックアップよりも太さのあるサウンドですし、個性はあると思います。
ただミュージックマンなどのハムを想像するとイメージとは違ったサウンドかなと思います。
自分の持っている個体は、ライヴで使用しているなかで、エフェクターの効きが独特な印象がありました。
もちろんピックアップなどの構造が違うので当然ではありますが、オーソドックスなPB・JBスタイルと同じスタンスでセッティングをすると想定とは異なるかかり方をする感覚でした。
その点はまだまだ研究しきれていないので、もっと突き詰めたいと思っております。
また、当時のレビューなどでよく見かけたのが、小ぶりなボディからか“24フレットだったら良かった……”という意見です。
スチュワート・ハムのシグネイチャー・モデル“Urge”とも少し近いボディシェイプですよね。
ここに関しては自分も“確かになー”と思って見てました。その反面、そこもフェンダーの考えあってのことだと思うので、ユーザーのないものねだり感もあるなと思います。
フェンダーだけではありませんし、Dimensionに限らず新しい試みがニーズに合致せず、終売してしまったパターンはいくつもあると思います。それらの積み重ねでより良い物が作られてきたのも事実です。
自分はそこにロマンやリスペクトを感じます。
確固たる地位があるにも関わらず、飽くなき探究心や挑戦する姿勢を持ち合わせてるかっこよさをこのDimensionから感じたのです。
“世界標準を目指す”という目標もあったのであれば、PB・JBに次ぐニュースタンダードになる世界線もあったかもしれないということにゾクゾクします。
実際には、そうなれなかったかもしれませんが、それを目指そうとすること自体にすごく熱いものを感じます。
現状は、人とあまり被ることがない、けれどフェンダーのベースで、比較的トラディショナルな雰囲気を持ち合わせたベースという印象があり、取り回しやすいサイズ感や洗練されているとは違うかもしれませんが無駄のないシルエットでかっこいいなと思ってます。
これからもこのベースをいろいろな場面で使っていきたいと思ってますし、今となっては逆に気になっているベーシストの方も少なくはないのではないでしょうか。いつかアップデートされて再販されたり、誰かしらのシグネイチャー・モデルなどでフックアップされて日の目を見たらアツいなと思ってます。
余談ですが、自分はずっとアメデラの5弦モデルも密かに狙っているのですが、今のところ購入に至れる個体に出会えてません。耳寄り情報お待ちしております。
さて、今回はフェンダーのDimension Bassについてお話ししてきました。

メインで現役バリバリでお使いになられてる方ももちろんいらっしゃると思いますし、“当時気になってたけど買いそびれた”という方もいらっしゃるかと思います。
今回のこの記事で少しでも多くの方がDimension Bassを再認知していただいたり、改めてその魅力を一緒に探っていけたら嬉しいなと思っております。
また、購入の決定打に欠けている方などの参考になれば幸いです。
めちゃくちゃ長文になってしまい失礼いたしました。
回を増すごとに文量が増え続けている気がしますが、今回もここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
また次回も楽しみにしておいていただけると嬉しいです!
それでは!
Profile

◎Profile
せき・まさのり●1994年9月20日生まれ、茨城県出身。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンドKroiのベーシスト。バンドは2018年2月に結成され、同年10月にシングル「Suck a Lemmon」でデビュー、2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャー・デビューを果たした。2024年1月20日には初の日本武道館ワンマン・ライヴを成功させる。2024年6月に3rdアルバム『Unspoiled』をリリース。Kroi公式FC「ふぁんく らぶ」では、自身のベースを動画で語る“せきまさのりのベースってそんなに必要ですか?”を更新中。
◎Information
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関将典 Instagram