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第24回「水のように」(One Control / Dimension Blue Monger)【高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い】

  • Text : Hirofumi Takamatsu

生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史(The Novembers/Petit Brabancon)による連載【その箱の中は地獄より深い】。マニアも唸るディープな分析から、ビギナー向けの実践的な解説まで、エフェクターの奥深い世界を独自の視点で掘り下げます。

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第24回:水のように

ベース・マガジンWEBを御覧のみなさま、ごきげんいかがでしょうか。高松浩史です。

すっかり夏ですね。

今年は梅雨でも雨が少なく、暑い日が続いております。熱中症などお気をつけください。

さて、今回は最近めっきり暑いので涼しげなエフェクターを紹介したいと思います。

せめて気分だけでも、音だけでも。

それがこちら、One Control “Dimension Blue Monger”です。

One Control “DIMENSION BLUE MONGER”

僕はコーラス・エフェクトが好きですし、ベースにコーラス・エフェクトを使用しているミュージシャンもたくさんいらっしゃいます。ですが“ベースにコーラス・エフェクト”は使いやすそうに思えて、実際には「きちんとベースとしての役割を果たす」のと「しっかり効果的に」という両立が難しかったりします。

理由は、普通のコーラスだと揺れてしまうからです。

まぁそもそもコーラスというのはそういうものなのでしょうがないのですが、音が揺れる=音程感が不安定になるということなので、ベースで常用・多用するとなると加減が難しいのです。(ベース・ソロや、「ここはそういう場所!」と明確な意図があって使用する場合は別です。好きなだけかけましょう!)

その場合、MIXを下げたり、DEPTHを下げたりと、エフェクトを薄くする方向に持っていくわけですが、そうするとエフェクトの”存在感”も薄くなってしまう=バンド・アンサンブルに混ざると効果がわかりにくくなるということが起こります。バランスが良いと思える機種は少ないです。

それではOne Control “Dimension Blue Monger”はどうでしょうか。

この機種、揺れません。いや、揺れてはいるのですが、奥のほうでさりげなく揺れている感じ。実際のエフェクトの仕組みはわからないのですが、印象としては「ショート・ディレイでダブリングさせて、さらにエフェクト音だけにモジュレーションがかかっている」。まさに僕が求めているものの詰め合わせといった感じ。

明確にピッチがウニョウニョする感じはまったくありません。

これがすごく絶妙で、例えばピッチが揺れないでほしい場合、選択肢としてはショート・ディレイをかけるとまったく揺れずにダブリングっぽくできるのですが、そうすると色気・味気がないんですよね。

なのでこの機種の「ピッチには干渉しないけれど、多少の揺れがあって味や存在感が増す」というバランス感、とても素晴らしいと個人的に思っています。

先述した通り、揺れないのであればエフェクトを強くかけることができます。この機種であれば、MIXが最大であっても問題なく使用できます。むしろ一番強くかけたときの感じもとても良いです。しっかりエフェクティブ。なので設定も難しくありません。

コントロールがすべてほんのり効くタイプなので。音作りの際はMIXとCOLOURが最大、COMPLEXITYのコントロールは12時方向からスタートすると良いと思います。

以上、今回は涼しげなエフェクターの紹介でした。

この機種、本当におすすめです。使いやすい・サイズも小さい、と良いこと尽くし!

少し特殊なエフェクターなので、ぜひ他のコーラスペダルと弾き比べてみてほしいですね。

それでは今回はこの辺で。

ご覧いただきありがとうございました。

◎Profile
たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からThe Novembersとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。Petit Brabanconは8月7日に2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』を発表している。

◎Information
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