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    フレットレス・ベース入門 Part2【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第37回

    • Text:Makoto Kawabe

    この連載では、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。今回も前回に引き続き、「フレットレス・ベース」についてレクチャーしていきます。

    連載一覧はこちらから。

    ▼前回記事▼

    フレットレスを正確な音程で弾くには?

    ◎楽器のコンディションを整えよう

    まず、楽器のチューニングをしっかり合わせること。オクターヴ・チューニングも入念に合わせましょう。ベースらしい音色が得られる丁寧なピッキング、余弦のミュート(第16回『ミュートの極意』を参照)といった基本テクニックも重要です。

    楽器のコンディションやセッティングも入念に整えましょう。好みはあるかと思いますが、ネックの反り具合はフラットからやや順反りの範囲、弦高はビビらない範囲で低めにセッティングしたほうが弾きやすいと思います。要は“しっかりとメンテナンスされた楽器を弾きましょう”ということです(笑)。

    ◎慣れないうちはチューナーで音程を確認しよう

    フレットレスに慣れないうちは、演奏中も常時チューナーを接続して、各音の音程を確認しながら弾くのがオススメです。そこで、ケーブルで接続する据え置き型またはペダル型で反応の早いチューナーを用意しましょう。

    オンにするとミュートされてしまうタイプのチューナーはアンプのセンド端子など系統を分岐させて演奏中もチューナーが見れるようにしてください。筆者の経験上、クリップ・チューナーはあまり役に立ちません。

    ◎フレット・ラインに対する音程の傾向を把握しよう

    まずは“よく使う音”、例えば3弦3フレットのC音を弾いてチューナーの反応を見ながら押える位置を微調整して正確な音程の位置を確認してください。フレット・ラインのあるタイプでは、押さえる位置がほぼフレット・ラインの真上付近になるかと思います。

    フレット・ラインに対して正確な音程が得られる位置はロー・ポジションとハイ・ポジションで異なる傾向になる(目線と角度の関係で異なるように見える)こともあるかと思いますので、さまざまなポジションで音程を確認して傾向を把握しておきましょう。とはいえ、ちょっとした指の向きや圧力でもピッチが変化しますよね。“フレット・ラインはあくまで目安にしかならない”ということが実感できるかと思います。

    フレットレス・ベース指板
    フレット・ライン

    ◎フォームのオススメは?

    当然のことながらフレットレスの音程は押弦した位置で決まるので、フレットレスを正確な音程で弾くにはフレット間隔をキープしやすい4指4フレット、4指3フレットのフィンガリング・フォームが有利であり、フレット・ラインに対して斜めに押さえるようなフィンガリング・フォームや握り込みフォームは不利です。

    4指4フレット、4指3フレットのフィンガリング・フォームの場合、各指の間隔が音程を決定づけるので、各ポジションで各指を適切に開いて適切な位置で押さえる練習をする必要があります。

    4指3フレットのフォーム 写真
    4指3フレットのフォーム。この場合は、人差指が1フレット、中指が2フレット、小指が3フレットに対応している。

    フレッテッドでは適当に押さえてもある程度正確な音程が出せますが (厳密には常にフレットの脇など均一な位置を押さえないと音色が揃わないのでNGですが)、フレットレスではそうはいきません。

    ◎コントラバスのメソッドを参考にしよう

    筆者的にはフレットレスを正確な音程で弾くには、先輩格であるコントラバスのメソッドを踏襲するのがオススメです。

    コントラバスの教則本には大抵、最初にハーフ・ポジションのフィンガリング・フォームが書かれているのですが、これはコントラバスを弾く際にあらゆる面で基礎になるからです。

    ハーフ・ポジションとはエレキ・ベースでいうところの1フレットから3フレットを押さえるフィンガリングのポジションで、1フレットは人差指、2フレットは中指、3フレットは小指(薬指は小指のサポート)で押さえる4指3フレットが基本フォームです。

    フレットレスでもまずはハーフ・ポジションでのフィンガリングを練習してみてください

    ハーフ・ポジションを身体に叩きこむには開放弦を交えたFメジャー・スケールやAマイナー・スケールなどを練習すると良いでしょう。開放弦を交えることで正確な音程を確認できるからです。

    <Ex.1>

    譜例1
    Ex.1
    譜例1の実演
    Ex.1:ハーフ・ポジション(1〜3フレット)でのFメジャー・スケール。

    ハーフ・ポジションを正確に押えられるようにすることでロー・ポジションの音程感が身につくかと思います。ポジション移動をする際は、例えばハーフ・ポジションで押さえた小指の位置に人差指を移動して3~5フレット(セカンド・ポジション)とするなど、尺取虫的に位置を積み重ねるのが無難です。

    <Ex.2>

    譜例2
    Ex.2
    譜例2の実演
    Ex.2:開放弦を交えたCメジャー・スケール。1弦のA(2フレット/中指)→B(4フレット/中指)を弾くタイミングで、ハーフ・ポジション(1〜3フレットの4指3フレット)→セカンド・ポジション(3〜5フレットの4指3フレット)に移動している。ハーフ・ポジション時の小指の位置(1弦3フレット)に、セカンド・ポジション時の人差指が置かれていることが確認できる。

    こうやって少しずつ正確な音程で弾けるポジションを増やしていきましょう。ハイ・ポジションは12フレット、19フレットがハーモニクス音と実音が同じ音程なので、これを利用して音程を確認、微調整することができます。

    <Ex.3>

    譜例3
    Ex.3
    譜例3の実演
    Ex.3:1弦のみで弾くGメジャー・スケール

    ◎正確な音程で弾くために、最も重要なことは……?

    極論ですが、フレットレスを正確な音程で弾くのに最も重要なのはピッチにシビアになることです。アンサンブルのなかで自分が弾いている音程を常に確認し必要に応じて修正する……フレッテッドを弾くときは必要のない作業かもしれませんが、フレットレスを弾く際は不可欠な作業なのです。

    最初はなかなか音程が合わないかもしれませんが、鍛錬を積み重ねることで相対音感に敏感になるはずです。耳を鍛えてフレットレスが弾けるようになってくると、相乗効果でフレッテッドを弾く際のフィンガリング・フォームも改善されて音程や音色が良くなり、アンサンブル全体を聴きながら演奏できるようにもなるでしょう。

    さらに、フレットレスに慣れてくるとアンサンブルは正確な音程で弾くことがすべてではないことにも気が付くと思います。グリスやスライド、ヴィブラートなどを駆使したピッチ変化によってフレットレスならではのニュアンスをアンサンブルに活用しましょう。

    フレットレス・ベースの名演を聴こう

    “フレットレスってどんな音?”、“どんなプレイができるの?”って、やっぱり聴いてみないことにはわからないですよね。ということで、フレットレスを弾きこなす名プレイヤーをダイジェストで紹介します。

    やっぱり最初はこの人、ジャコ・パストリアス。自ら改造してフレットレスに仕上げたフェンダー・ジャズ・ベースの唯一無二の音色とフレーズ、その創造性あふれる音楽性に多くのベーシストが魅了されました。本人名義の処女作やウェザー・リポート、ジョニ・ミッチェルの作品などで名演を残しています。

    ジャコ・パストリアス「Continuum」
    ジャコ・パストリアス「Continuum」

    R&Bやレジェンド系ロック・バンドで引く手数多のピノ・パラディーノもフレットレスの名手。ポール・ヤングの「Everytime You Go Away」は必聴ですね。

    ポール・ヤング「Everytime You Go Away」
    (b: ピノ・パラディーノ)

    スラップの名手として名高いマーカス・ミラーもフレットレスで独特の世界観を表現した楽曲を多く発表しています。

    マーカス・ミラー「The Sun Don’t Lie」

    ロック畑では、ザ・ファームやブルー・マーダーなどに在籍したトニー・フランクリン、ジャパンのミック・カーン、ケイト・ブッシュなどの作品で名演の多いジョン・ギブリンなどの演奏を聴いてもらうとフレットレスの魅力を理解いただけるかと思います。

    ザ・ファーム「Radioactive」
    (b: トニー・フランクリン)
    ジャパン「Talking Drum」
    (b: ミック・カーン)
    ケイト・ブッシュ「Breathing」
    (b: ジョン・ギブリン)

    最後に

    フレットレスについて興味は湧きましたか? そろそろ2本目のベースが欲しいなと考えていた方、フレットレスを持ってない方は、この機会にぜひ検討してみてください。

    フレットレスは音色のバリエーションにもなるし、あなたの音楽観の新たな扉を開くことになるでしょう。本文中にも書きましたが、フレットレスを弾くことでピッチ感が磨かれ、フレッテッドの演奏クオリティがさらに高まることもあるはずです。ぜひチャレンジしてみてください。

    ◎講師:河辺真 
    かわべ・まこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。
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