NOTES
UP
BM DISC REVIEW – BASSMAN’S LIBRARY – 2022 SEPTEMBER
『踊る様に』ポルカドットスティングレイ
タイトに深化したサウンドで生きる随所のこだわり
曲調の振れ幅がより広がった4thフル・アルバム。それでもポルカらしさに揺るぎがないのは、楽器隊のプレイの軸が定まっているからだろう。打ち込みを取り入れた曲もあるなか、ウエムラユウキはドライブしたベース・サウンドや音の細かいフレーズによりアンサンブルを有機的に仕立てている。①⑤⑫などで顕著なように、セクションごとに音色やフレーズに変化をつけているため聴きどころが満載。⑨⑬といったシンプルな演奏でも、音価を工夫し曲にメリハリをつけている。ただし、こうした随所のこだわりは基本の音作りが明瞭だからこそ生きるもの。本作では低音がよりタイトになり、存在感を示しつつほかのパートと絶妙なバランスを成している。(神保未来)
◎作品情報
『踊る様に』
ポルカドットスティングレイ
ユニバーサル/UMCK-1720(通常盤)
発売中 ¥3,080 全14曲
◎参加ミュージシャン
【ウエムラユウキ(b)】雫(vo,g)、エジマハルシ(g)、ミツヤマカズマ(d)
『エンパイア・セントラル』スナーキーパピー
イケメンで、天才で、性格も良くて、個性的
夢のような要素がマイケル・リーグのベース・プレイには詰まっている。決してトップ・ラインを邪魔することはなく、それでいて埋もれない、すべてのセクションをつなぎ合わせる音作りとグルーヴ。この規模のアンサンブルのなかで、これほど存在感のあるベーシストがどれほどいるだろう。ディスク1-③のトリッキーながらキャッチーにアンサンブルに絡むリズム・アプローチ、ディスク2-④の深く漂うように少しずつ景色を変えていくベース・ライン。ベース・ソロがなくとも、ベーシストにとってこれほど聴きごたえのある作品はほかにはない。スタジオの緊張感や興奮も倍増して感じられるライヴ映像のリリースも待ちきれない。(奥野翔太/WEAVER)
◎Profile
おくの・しょうた●1988年8月18日生まれ、兵庫県出身。2004年に高校の同級生とWEAVERを結成。2007年に現在の編成となり、3ピース・ピアノ・バンドとして神戸を拠点に活動を展開する。2009年にダウンロード・シングル「白朝夢」でメジャー・デビュー。精力的な活動を続けるなかで2014年1月末からは半年間のロンドンへ留学も経験する。河邉徹(d)が書き下ろした小説をもとにした『流星コーリング』など、これまでに7枚のアルバムなどをリリースしているが、2023年2月に解散すること発表しており、10月21日発売の『WEAVER』がラスト・アルバムとなる。奥野はバンドとしての活動だけではなく、山本彩をはじめとしたさまざまなアーティストのサポートも務める。◎https://www.weavermusic.jp/
◎作品情報
『エンパイア・セントラル』
スナーキー・パピー
コアポート/PROZ-10078〜79
発売中 ¥3,300 全17曲(2枚組)
◎参加ミュージシャン
【マイケル・リーグ(b)】マーク・レッティエリ (g)、ボブ・レイノルズ(sax)、マイク“マズ”マーハー(tp)、ラーネル・ルイス(d)、他
『ザ・シック、ザ・ダイイング…アンド・ザ・デッド!』メガデス
インテレクチュアル・スラッシュを支える低音の存在感
デイヴ・ムステイン(vo,g)の喉頭癌、デイヴィッド・エレフソン(b)の解雇などの困難があったが、完成した6年ぶりの作品は初期の“インテレクチュアル・スラッシュ・メタル”に回帰したような緊迫感とスリリングな展開にあふれた快作だ。ベーシストは、テスタメントなどで活躍するスティーヴ・ディジョルジオが録音にのみ参加。速くてテクニカル、エッジがあり、切れ味鋭いギター・リフにぴったりと張りつくユニゾンの太さはもちろん、⑧や⑫でのグリス気味に音階を上がるときの圧の高さ、⑩の太くウネるリフから高めのポジションでの浮遊感のあるフレーズへの高低差の付け方、③の重低音と強烈なアタック感が同居した音色など、存在感が半端ない。(中村健吾)
◎作品情報
『ザ・シック、ザ・ダイイング…アンド・ザ・デッド!』
メガデス
ユニバーサル/UICY-16085
発売中 ¥2,750 全13曲
◎参加ミュージシャン
【スティーヴ・ディジョルジオ(b)】デイヴ・ムステイン(vo,g)、キコ・ルーレイロ (g)、ダーク・ヴェルビューレン(d)
『ネイキッド!』フラワーカンパニーズ
飾らない“らしさ”をストレートにぶつけた一枚
前作『36.2℃』より約1年9ヵ月ぶりにリリースされた19作目は、コロナ禍以降、久々に再開されたツアーの合間を縫って各地でレコーディングを行ない完成した1枚だ。各楽曲がシンプルかつコンパクトな構成で聴きやすさがありがらも、その中にフラカンの熱さと骨太さを湛えている。ベースは、休符を使った4分の軽快なノリとサビの伸びやかなプレイの対比が楽しい③、レゲエ・テイストなAメロで鳴らす太く温かい音とリフで引き込まれる⑦、疾走感のあるビートのなか、8分の刻みでアップ・ダウン激しく動きまわる⑨など、さまざまなアプローチで、リスナーを飽きさせない多彩な表情を見せてくれている。(座間友哉)
◎作品情報
『ネイキッド!』
フラワーカンパニーズ
チキン・スキン・レコード/XQNG-1005
発売中 ¥3,300 全11曲
◎参加ミュージシャン
【グレートマエカワ(b)】鈴木圭介(vo)、竹安堅一(g)、ミスター小西(d)
『ROMANTICA』浪漫革命
饒舌ベースが鳴らすポップス革命
2017年結成の京都発5人組バンドによる、楽曲「あんなつぁ」がSNSで話題となった前作から約2年ぶりとなる3rdフル・アルバムは、それぞれが個性を放ちながら巧みに絡む2本のギター、繊細さと爆発力を兼ね備えたドラム、そして全篇にわたり歌心あるラインで楽曲を彩るベースと、演奏陣のポテンシャルが高いレベルで結実した充実作。ソウルフルなプレイでモータウン愛が溢れる①⑧、速いパッセージで聴かせる②③、打ち込みビートとのコンビネーションが絶妙な⑦など、ベース的聴きどころは多数。ファンク/ソウル系を弾く20代のベーシストでは、藤本卓馬は頭ひとつ抜き出た存在だと感じさせられた作品。(辻本秀太郎)
◎作品情報
『ROMANTICA』
浪漫革命
新島出版/RORE-0003
発売中 ¥2,500 全9曲
◎参加ミュージシャン
【藤本卓馬(b)】藤澤信次郎 (vo,g)、大池奏太(g)、後藤潤一(g)、TOY(d)