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    INTERVIEW – フクダヒロム[Suspended 4th]

    • Interview:Kengo Nakamura
    • Photo:Shoma Yasukawa(Live)

    若手技巧派筆頭のポテンシャル

    名古屋市・栄のストリートから颯爽と登場し、音楽ファンはもちろんのこと、その圧倒的な演奏力で楽器フリークたちからも熱い視線を集めてきたロック・バンド、Suspended 4th。コロナ禍にあって、思うような活動ができなかったという彼らが、ついに待望の1stアルバム『Travel The Galaxy』を世に放つ。楽器演奏のおもしろさが満ち満ちたそのサウンドからは、“聴き飛ばしなんてさせない”という熱量の高さが感じられ、若手技巧派ベーシストの筆頭と評されるフクダヒロムも、期待を裏切らないプレイの数々を披露。次世代ベース・ヒーローのポテンシャルの高さを存分に証明している。

    発売中のベース・マガジン2022年8月号にもフクダのインタビューを掲載! Bass Magazine webとは違った内容でお届けします!

    ちょっと大変そうに思えるフレーズも、
    スラップなら追いつける。

    ━━『Travel The Galaxy』は14曲入りという大ヴォリュームになりましたね。

     コロナ禍じゃなければ、本来はもっと早くアルバムを出せていたはずだし、『GIANTSTAMP』(2019年)以降、新曲をたくさんは出していなかったので、俺としてはライヴのセットリストに飽きてきてたっていうのもあって。早く新曲をやりたいなっていう気持ちはありました。デジタル・シングルのときからアルバムを出すのは視野に入れて作っていましたね。

    ━━1stアルバムということで、初期ベスト盤的な意味合いもあるのかなと思います。既発曲も最新バージョンで録り直していますし。

     そうですね。「BIGHEAD(Rev.2)」「INVERSION(Rev.2)」とかは、ピザ・オブ・デスに入る前の自主制作盤に収録されている楽曲なんですけど、ライヴで今でも頻繁に演奏している曲だというのもあって、せっかくピザからアルバムを出すなら、この2曲は入れなきゃいけないだろうっていう感じでしたね。

    ━━アレンジ的には、以前のバージョンからガラッと変えるのではなく、ある程度踏襲していますよね?

     当時と今だと機材も違うし、知識や経験も違うので、Suspended4th(以下、サスフォー)が“今”できるもので録り直したかったんです。レコーディング方法も、新曲たちはドラムを録ってベースを録って……って別々にやっていったんですけど、既存曲はもう慣れているというのもあるので、1発録りで一気に録りました。それもあって、けっこう生々しい感じになっていますね。今回、ワシヤマ(カズキ/vo,g)の意図として、生々しさやライヴ感を出したいというのがあって。それで、わざとエディットをバチバチにしないで、リズムのヨレとかもあまり直さずに生感を出したと言っていました。

    左から、フクダ、ワシヤマカズキ(vo,g)、サワダセイヤ(g)、デニス・ルワブ(d)。
    『Travel The Galaxy』
    ピザ・オブ・デス

    PZCA-97〜8(インスト盤付き2CD)
    PZCA-99(1CD)

    ━━本作は、“インスト盤”との2枚組のパッケージも用意されていますが、これはインスト用にアレンジしているわけではなく、歌のパートを抜いているってことですよね?

     そう、簡単に言えばカラオケ音源ですね。ただ、サスフォーの場合は楽器隊がむちゃくちゃやってるんで、単純なカラオケ音源には聴こえないというか。歌が入っていることによってあまり聴こえていなかった部分も、インスト盤だとよく聴こえてくるし、一般的なバンドのカラオケ音源とはちょっと違う感じになっているんじゃないかな。インスト盤を作ろうっていうのはピザ側からの提案だったんですけど、“なるほど、その手があったか!”と。

    ━━おもしろいのが、歌ありだと歌が引き立って聴こえるし、インストだとちゃんと楽器隊のおもしろさが感じられる。これはどっちを先に作ったんだろうという、おもしろいバランスのアレンジだと思います。

     ありがとうございます。そこがサスフォーの良いところですよね。現代においては、こういうバンドはあまりいないというか。

    『Travel The Galaxy』Trailer

    ━━楽曲制作については、最初にワシヤマさんがわりと完全なデモを作ってくるところから始まるんですよね?

     そうですね。基本的には、ベース・ラインも含まれて、軽くミックスやマスタリングまでされているデモ音源が送られてきて、そのデモに入っているベース・ラインとかを一旦コピーして、そこから自分のエゴをぶち込んでいく感じになりますね。ワシヤマの意図を汲み取って、こうやってほしいんだろうな、みたいな感じでアレンジしていきます。

    ━━そのデモには歌も入っている状態なんですよね?

     そこは、入っているものもあるし、入っていないものもありますね。さっきの、“歌が先か楽器が先か”でいうと、多分ワシヤマは一旦歌なしで作り込んじゃうと思うんですよ。アイツはヴォーカリストだけどギタリストなので、ギターから広げていくような感じで、楽器だけを先に作っちゃって、それにギターを弾いてメロをつけていく感じだと思うんです。それこそ『GIANTSTAMP』の「97.9hz」とかは、最初はメロが乗っていないデモが送られてきて、“これにどんなメロを乗せるんだろうか?”っていう感じでしたし。

    ━━特にインスト盤を聴いていて思うのは、サスフォーの楽曲は細かいキメが多いなということなんです。リズムの絡み方とかが、ちょっとフュージョンっぽいというか。

     キメは多いですね。どの楽曲にしても、意識して聴かないとわからないキメみたいなのが実はすごく多いです。

    ━━また、リズム的にもフレーズ的にも、ギターやドラムのオブリとのユニゾンも多くて。ユニゾンするときには、ベースってギターやドラムと比べると速さの限界が厳しいと思うんですけど、そこはどの程度ユニゾンさせることを意識して弾いていますか?

     時と場合によりますけど、基本的にはリズムもフレーズも合わせにいこうとしています。どれだけ速かろうがついていこうとする。それこそ「INVERSION(Rev.2)」のMR.BIGみたいなフレーズのところも、ベースはやらなくてもいいんですけど、ついていこうとする(笑)。「オーバーフロウ(Rev.2)」のサビ前の上昇フレーズのスラップもそうです。

    ━━サムの連打がかなり速いですよね?

     手順としては“プル→サム→サム、プル→サム→サム”で、確かにかなり速いですね。

    ━━「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」2Aはスラップのオクターヴから高速下降フレーズでドラムのフィルに合わせています。スラップと左手のレガートですか?

     そうです。ドラムのデニス(ルワブ)とは入れたくなるポイントがときどきリンクする瞬間があって、そこはたまたま奇跡の合致で生まれてるみたいなところですかね。

    「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」(OFFICIAL VIDEO)

    ━━「ANYONE」のAメロはギターとの太いユニゾン・バッキングが中心ですが、合間に入る16分の速いオブリのユニゾンはスラップですか?

     サムのダウン/アップです。あのスピードは指だと追いつけないんですよね。かといってサスフォーでは“ピックは甘え”って言われてるんで(笑)。

    ━━厳しい(笑)。

     じゃあどうしようかなって。別にあそこも、ユニゾンしないっていう選択肢もあるんですけど、俺の性分としてやっぱりやりたくなっちゃうので、サムのダウン/アップでやりました。

    ━━フクダさんの場合、スラップを使うと速く弾けるっていうのがあるんですかね?

     あります。高校生の頃、マキシマム ザ ホルモンの「上原〜FUTOSHI〜」のベース・ソロをどれだけ速く弾くかっていうことしか考えてなかった時代があるので(笑)。それくらいスラップのスピードを身につけたんですよね。だから指弾きよりも圧倒的にスラップのほうが速いし、速くて追いつけなさそうなポイントはスラップでいきがちですね。

    ━━加えてスラップだと音程が広いフレーズも対応できそうですよね。複数弦を移動するのも楽そうというか。特にフクダさんの場合は、そこにロータリーやダブル・プル、トリプル・プルなども絡ませられるでしょうし。

     全然楽勝ですね。ちょっと大変そうに思えるフレーズも、スラップなら追いつけるみたいなところがあるので。それはもう意識せずにやっちゃっている感じですね。

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