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【第72回】リズム解釈でグルーヴが変わる!メカニカルな基礎練をポリリズムでグルーヴさせるアイディア 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
前回、両手のウォーミング・アップ/筋トレ的なエクササイズを紹介しました。紹介しておいてこんなことを言うのもアレなんですが、個人的にはメカニカルなエクササイズはあまり好きではありません。基礎練習をするとしたら、何かの曲のコード進行とかフレーズを元にしたもののような音楽的練習のほうが、普段の演奏に直結するしモチベも維持しやすいんですよね。でも準備運動とか筋トレという意味では、メカニカルな練習ももちろん役に立つので、なんとかしてできるだけ音楽的に取り組みたいところです。
ということで、前回やった上行パターンをポリリズム的に解釈して、リズム練として取り組んでみよう!というのが今回の企画です。
まず前回のフレーズを軽く復習すると、“1-2-1-2-3-2-1-2-3-4-3-2-1-2-3-4”という運指です(1=人差指 2=中指 3=薬指 4=小指)。
では、このフレーズにリズム練として取り組むやり方を紹介します。
■メトロノームをバック・ビートで鳴らす
まずはメトロノームをバック・ビート(2・4拍目)に鳴らします(ex.1)。
これだけでも良いリズム練になります。ただ、これをどう感じながらやるか、というのも大事です。普通に拍を“1・2・3・4”と感じるのが、一般的なリズムの感じ方だと思います。
これはこれでいいんですが、今回はそれとは違うポリリズム的な感じ方を、2種類紹介します。
■ポリリズム的な解釈1
まずひとつ目の感じ方は、フレーズのド頭から8分音符3つを1ユニットとして感じる解釈です (ex.2)。
8分音符が16個ありますが、3音1ユニットとして進んでいくと3×5=15で1音残ってしまうので、最後のユニットは4音にします。つまり、3音ユニットが4個、4音ユニットが1個ってことですね。1〜2番目のユニットは最初の音から半音上がってまた元に戻る音形、3番目は上昇、4番目は下降、5番目は上昇、という音形なので、その音形も意識しましょう。
また、各ユニットの1音目にアクセントをつけると、ユニットの塊を感じやすくなります。数をカウントしたほうがやりやすい人はそうするといいし、カウントするのが難しい人は無理にやらなくてもかまいません。3つずつ動いているのを感じられるのであれば、それでいいでしょう。
■ポリリズム的な解釈2
ふたつ目の感じ方は、フレーズの2音目から8分音符3つを1ユニットとして感じる解釈です(ex.3)。
ex.2と同じようにユニットごとの音形も意識しましょう。1番目は最初の音から半音下がってまた元に戻る音形、2番目は下降、3番目は上昇、4番目は下降、5番目は上昇、という音形です。さっきと同じく、ユニットの1音目にはアクセントをつけます。
■解釈でグルーヴが変わる
ex.2とex.3を比べると、フレーズそのものはまったく同じなのに、リズムの捉え方/感じ方を変えることでフィールがガラッと変わります。これはグルーヴを生み出す能力を養っていくうえでめちゃくちゃ重要なポイントです。実際の曲のフレーズを練習するときも、いろんな捉え方/感じ方を試して研究しましょう。そのフレーズに合ったグルーヴを見つけることが大事です。こういうウォーミング・アップ用のメカニカルなフレーズでも、こういう風に取り組むことで、ひとつのエクササイズで筋トレとリズム練を兼ねられるので一石二鳥ですね。石村順でした!
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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