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    INTERVIEW – ウエムラユウキ[ポルカドットスティングレイ]

    • Interview:Zine Hagihara

    挑戦のなかで描く低音の色彩

    ポルカドットスティングレイの楽曲には、聴くものの耳を惹く不思議な“ひねり”がある。キャッチーな歌の旋律は、矢継ぎ早に展開する音数の多さが良い意味での違和感となっており、ロック・サウンドの枠を拡張する色彩豊かなバンド・アンサンブルがその世界観を何倍にも増幅させている。そのなかでウエムラは、昨日の自分を超えるため、挑戦心を抱いて12月にドロップしたアルバム『何者』の制作に臨んだ。テクニカルでド派手なフレーズとシンプルかつ機能的なアプローチが同居する今作においてのベース・プレイは、ウエムラの懐の広さを物語っていると同時に、バンドの規模が拡大していることに慢心せず、精進をし続ける彼の姿勢が表われている。楽曲に“ひねり”を加えるアグレッシブなプレイは、どのように生み出されていったのかを聞いた。

    “普通にやっちゃいけない感”みたいなものは
    あったかもしれないですね。

    ━━2020年12月にリリースされたアルバム『何者』は1年10ヵ月ぶりの作品になりますが、この期間はバンドにとってどのようなものでしたか?

     2019年の7月に日本武道館公演があって、そこからは何をすべきかっていうことを模索しつつ次のステップに移ったのでチャレンジが多かった気がしますね。例えば、ツアーでマニピュレーターを入れて演奏するようになったりとか、バンドにとっての変化が大きくなったと思います。より大きい規模のライヴに対応できるような工夫を自分たちでしていった感じですね。

    ━━幕張メッセでの単独公演が延期になり、そののちに配信ライヴを行なうなどコロナ禍となったことがバンド活動に影響を与えましたが、配信ライヴを行なう際にはベース・サウンドについての考え方が変わったりはしましたか?

     僕らはもともと、アンサンブルを分離よく聴かせたいっていうことを考えていて。ライヴでは自分たちはキャビネットからの音を浴びているんですけど、それとは別もののサウンドということですね。僕らは各パートが一度にいろんなアプローチをすることも多いので、それぞれをちゃんと聴かせられるように、あまり音がカブらないように意識しているんです。配信をするようになってラインの音がさらに重要になるので、そこをブラッシュアップしていきたいなと思っていますね。その影響もあって、配信ライヴをしてからコンプレッサーを買ったりもしたんですよ。

    ━━そうなんですね。

     今までシステムに入れてなかったんですけど、ORIGIN EFFECTSのCali76ってやつで、1176っていう定番のコンプレッサーがあるんですけど、それを足下にペダルとして置けるっていうエフェクターですね。エンジニアさんに薦められて買いました。そうやってライン音へのこだわりが強くなっているところがあるかもしれません。

    ━━『何者』の出来については、ご自身ではどのように感じていますか?

     僕は挑戦したっていう手ごたえがありますね。タイトル・トラックに関しても、前作の『有頂天』のときはめちゃくちゃポップで、MVも作って押し出していったりして。でも、今回の「何者」はMVを出すようなキャッチーさはないかもしれないけど、なかなかおもしろい曲になっています。最近、いわゆる“ステイホーム”的な影響で打ち込みの要素が増えることもあると思うんですけど、僕はベースではそういうのはやりたくないなって思って。逆に5弦ベースを導入して新しいベース・プレイの実験を模索したりしてました。

    ━━「何者」はAメロ、Bメロで刻むようにメロディを弾いていますが、今のポルカドットスティングレイとはまた違ったテイストを持った曲、プレイになっていますね。

     この曲は自分たちの昔の曲をセルフ・サンプリングするっていうモチーフでやっているんですよ。昔の曲で「ミドリ」っていうのがあって、その曲でのフレーズをキーを変えてやっている感じなんです。ずっと聴いてくれている方たちが楽しんでくれるような仕掛けをいろんなところで混ぜているイメージですね。でも、デビュー前の曲なので、確かにアプローチ自体はポップっぽくはないのかなって、今、思いました。少なくとも、今の自分がやるアプローチとはけっこう違っていますね。

    左からウエムラ、雫(vo,g)、ミツヤスカズマ(d)、エジマハルシ(g)
    『何者』
    ユニバーサル/UMCK-1675(通常盤)

    ━━「SQUEEZE」はベース・サウンドがシンセ的にも聴こえるのですが、エレキ・ベースでシンセ的なサウンドを狙ったところもあるんですか?

     「SQUEEZE」はシンベとエレベがところどころで入れ替わっているんですよ、けっこう挑戦的でしたね。しかも、借りものなんですけどエレベはフレットレスで弾いていて、やっぱりフレッテッドとは違ってピッチをしっかり保つのが大変でした。それ以外の曲では、基本的にはメインで使っているレイクランドのSL44-60でレコーディングしています。

    ━━リズムは打ち込みのビートになっていますが、バンド・アンサンブルでの演奏に対してプレイする際の意識は変わるものですか?

     “普通にやっちゃいけない感”みたいなものはあったかもしれないです。それはフレーズの部分ではないんですけどね。それこそ“フレットレスでやってみるか!”っていうアイディアだったり、そもそもの考え方として普通のバンド・サウンドとは変わってくる感じです。逆にフレーズで今までと違うことをしようとはあまりならなかったですね。質感とかサウンドのことかもしれない。

    「SQUEEZE」MV
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